食品安全情報blog過去記事

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米に含まれるヒ素への消費者の暴露を低減することに向けたFDAの活動について

Statement by Dr. Susan Mayne on FDA efforts to reduce consumer exposure to arsenic in rice
April 17, 2018
https://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm604807.htm
(食品安全・応用栄養センター(CFSAN)のセンター長であるSusan Mayne博士の声明)
米国食品医薬品局(FDA)は、国産および輸入食品の安全管理任務に真剣に取り組んでおり、食品中の汚染物質の監視、生じ得る暴露やリスクの評価、および消費者の汚染物質への暴露低減策の実施のなどにより、この任務を遂行している。
FDAの専門家たちは、食品中のヒ素濃度の検査を実施することにより、暴露量に関する情報を得て、健康リスクが生じる可能性について検討を行っている。長年、我々は他の政府機関や外部組織と提携し、米や米製品に含まれるヒ素への消費者の暴露を低減する取り組みを行ってきた。
米穀は、乳幼児が最初に食べる一般的な食品で、体重に対する割合でみると、乳幼児は成人よりも多く米を摂取している。FDAの研究者たちは、ヒ素のより毒性の高い形態である無機ヒ素への暴露が、子供たちにおける神経認知障害と関係があることを明らかにした。
2016年FDAは、乳幼児向け米穀に由来する無機ヒ素への暴露を低減する対策*1に乗り出した。
FDAの科学者たちは、米に含まれる有機ヒ素と無機ヒ素を区別する方法を開発・検証した。我々は、ピアレビューを受けた文献を広範に再レビューし、米や米製品のヒ素に暴露されることで健康に及ぶ可能性のある影響に関し、リスク評価書*2を公表した。また、1000検体を超える米や米製品の試料を検査した。
こうしたデータのすべてを検討した結果、我々は、業界向けにガイダンス案を発表するに至った。その中で、乳幼児向け米穀中に含まれる無機ヒ素の「対策レベル」を、100 ppbに定めている。我々は、食品製造業者に対し、安全側に考慮したこの対策を実施するよう要請し、大部分においてそれは達成可能であると認識した。我々は、妊婦や乳幼児が様々な穀物を摂取することを推奨し続けており、米以外の乳幼児用穀物の選択肢も、バランスの取れた食事に組み込むことが可能であること発信し続けている。
米に含まれるヒ素への消費者の暴露を低減するFDAの取り組みは、食品中のヒ素や他の毒性金属によって生じるリスクを低減するために実施されている広範な計画の一部である。この計画の一環として、我々は最近毒性元素に関するワーキンググループ(Toxic Elements Working Group*3)を創設した。その任務は、毒性元素への暴露を可能な限り低減するという公衆衛生上の目標を達成するためにFDAが取るべき活動について、それを明確にすること、対象を設定すること、および優先順位付けすることである。さらに、食品、化粧品およびダイエタリーサプリメントに含まれる毒性元素への暴露を低減することも目的としている。このワーキンググループは、FDAの食品安全・応用栄養センター(CFSAN)に所属するシニアリーダーやリスク管理者で構成され、彼らは、毒性学、化学、医学、疫学、政策や法律の作成の経験者である。
米国政府説明責任局(GAO)は、米に含まれるヒ素の問題に関する報告を行っており*4、我々のこの分野での取り組みを承認し、それらをさらに進めることを支持している。実施が急がれる2つの勧告がFDAに与えられた。一つは、2016年のリスク評価の更新を行うこと、もう一つは乳幼児向け米穀に含まれる無機ヒ素に関する対策レベルガイダンス案を最終的なものに仕上げることである。それ以外にも、より良い組織間協同機構を構築することを求める2つの勧告が与えられた。
全体として我々はこれらの勧告に同意しているが、2016年に公表された米や米製品に含まれるヒ素に関するリスク評価書*5の更新は、その結論に影響を与えるような新規の革新的な科学的知見が出てくるかどうかによることを指摘した。我々は、継続的に科学文献を調査し、米国環境保護庁(EPA)のような提携機関と協働しており、EPAの統合リスク情報システム(IRIS)計画は、我々の最新科学情報源の一例である。我々が行った既存のリスク評価の結論に影響を与える新しい科学的知見が入手された場合には、我々は必ずその評価の更新に着手する。
乳幼児向け米穀に関する対策レベルガイダンス案に関しては、最終的なものにまとめ、乳幼児向け米穀中に含まれる無機ヒ素についての正式な対策レベルを設定できるよう尽力する。今年の末までにガイダンスを完成させる予定である。
組織間協働に関しては、米国農務省や他の機関の対応組織といつどのように連動すべきかを考慮して、我々の機構をさらに改善・強化する方法を検討する。それには、リスク評価および食品中の汚染物質検出法確立における役割や責任の持ち方などが関わってくる。
厳格な科学的調査を通じて米や米製品に含まれるヒ素への消費者の暴露を評価し低減することは、FDAによる国民の健康を保護する取り組みの一つに過ぎない。我々はこれからも、重要な公衆衛生任務を遂行するに当たり、関連科学の進歩を先導し、またそれに追従し、連携者との協働を行い、そして、良く説明を受けた状態で栄養に関する決定が行われるように消費者と情報交換を行っていく。
米に含まれるヒ素に関する情報は、FDAのウェブサイト*6から参照できる。
*1: 乳幼児向け米穀中の無機ヒ素の上限値を提案
https://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm493740.htm
*2: 米および米製品に含まれるヒ素についてのリスク評価
https://www.fda.gov/Food/FoodScienceResearch/RiskSafetyAssessment/ucm485278.htm
*3: 食品中の毒性金属から消費者を保護する取り組み
https://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm604173.htm
*4: 米に含まれるヒ素リスク管理に対する政府の取り組み
概略(別項に和訳有り): https://www.gao.gov/products/GAO-18-199
主要部(別項に和訳有り): https://www.gao.gov/assets/700/690700.pdf
全文: https://www.gao.gov/assets/700/690701.pdf
情報・データ源を含む全文: https://www.gao.gov/assets/700/690829.pdf
*5: 米や米製品に含まれるヒ素に関するリスク評価書
https://www.fda.gov/downloads/Food/FoodScienceResearch/RiskSafetyAssessment/UCM486543.pdf
*6: 米や米製品に含まれるヒ素
https://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm319870.htm