食品安全情報blog過去記事

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ネオニコチノイド関連

  • SMC UK

EUの三つのネオニコチノイド殺虫剤の戸外使用禁止についての専門家の反応
expert reaction to EU ban on outdoor use of three neonicotinoid pesticides
April 27, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-eu-ban-on-outdoor-use-of-three-neonicotinoid-pesticides/
農業園芸開発理事会(AHDB)研究部長Bill Parker博士
この決定は予想されていなかったわけではないが、それでも重要な害虫を管理するための手段のさらなる制限となり農業にとって深刻な問題である。
代用品があるとは言え、この決定の結果葉面スプレー殺虫剤の使用が増えるだろう、特に小麦や甜菜で(禁止されたネオニコは種子処理のみでスプレーはなかった)。葉面散布は、薬剤の活性スペクトルにもよるが、種子処理より広範な昆虫に影響する。ネオニコを含む殺虫剤は、英国の2016年の総農薬使用面積のうち7%で、ネオニコは殺虫剤処理面積の2%であることを指摘しておく。AHDBは農薬依存を減らすために統合的害虫管理計画開発に積極的に関与している。
カナダGuelph大学授粉媒介者保存Rebanks Family部長Nigel Raine教授
この最も広く使用されているネオニコチノイドの使用を禁止することで殺虫剤暴露を減らすことはEUにおける授粉媒介者の健康改善のための大きな前進である。これは授粉媒介者を守るための物語の一部であり、さらに十分な花と巣を作る場所を確保する必要がある。
我々は食糧のために農家と授粉媒介者の両方を必要とする。農薬規制は非標的動物への意図せぬ帰結と農家に害虫管理のために必要なツールを与えることとのバランスである。ネオニコチノドの影響を巡る意見の違いは異なる経路による暴露の適切な理解の必要性を強調する。
James Hutton研究所でIPM研究を行っている細胞分子科学上級科学者Ian Toth教授
作物生産にとって殺虫剤の使用は何十年も重要な一部でありそのような化合物の使用禁止や削減は作物の収量に影響し、最終的には食品の消費者価格に影響するだろう。耐性の高い作物や生物によるコントロールなどの代替法を見つけることがますます重要になった。
Sussex大学生物(進化、行動、環境)教授Dave Goulson教授
壊滅的昆虫の減少という現在進行形の根拠を考えると、この決定は歓迎すべきだろう。ネオニコチノイドがミツバチに有害だという根拠はたくさんある。EUの決定はEFSAのレビューに基づく論理的なものである。
しかしネオニコチノイドが単純に他の類似化合物、例えばスルホキサフロル、シアントラニリプロール、フルピラジフロンに置き換わるのならまた同じことの繰り返しである。必要なのは農薬使用を最小限にし害虫の天敵を利用し生物多様性と健康的な土壌を支持する真に持続可能な農業に向けた動きである。そしてネオニコチノイドはミツバチやその他の昆虫が直面している問題のたったひとつに過ぎないことを知るべきである。また外来の寄生虫や病原体、花や居住環境の欠如、他の化合物への暴露などにも対策する必要がある。ネオニコチノイド禁止は正しい方向性であるが昆虫減少を止めるにはまだ長い道のりがある。
Dundee大学神経生物学准教授Christopher Connolly博士
これは素晴らしいニュースだ。これはEFSAが我々の環境を守るのに重要であること、独立した科学的吟味、Friends of the EarthとBuglife と Greenpeaceの努力の証拠である。
ネオニコチノイドは禁止されるまでEUで25年も使われてきたことを覚えておくことが重要である。環境に放出される前に前もって対応する時である。ネオニコチノイドとは呼ばれないが同じ受容体に作用する新しい化合物がある。当然それらも十分な根拠が得られるまで制限されるべきである。この重要な勝利にも関わらず、我々の工業化された農業の風景は、ヒト健康と環境安定性を脅かすかもしれない有毒化合物のカクテルが存在する化学物質のジャングルのままである。
(環境活動家がEFSAに影響を与えたことを白状している格好)

  • SMC NZ

欧州委員会ネオニコチノイド制限に投票−専門家の反応
European Commission votes to restrict neonicotinoids – Expert reaction
May 1st, 2018.
https://www.sciencemediacentre.co.nz/2018/05/01/european-commission-votes-to-restrict-neonicotinoids-expert-reaction/
欧州委員会EU加盟国でのネオニコチノイドの禁止を投票した。この決定は2018年末までに発効し、閉鎖された温室のみが例外になるだろう。
ニュージーランド環境保護局は、欧州の決定を見守るが、ニュージーランドでのネオニコチノイドの使用を巡る規則は授粉媒介者を守るのに効果を発揮していると述べた。
SMCは専門家にコメントを求めた。
AgResearchの科学者Mark McNeill
ネオニコチノイドを巡る課題は、ニュージーランドにおいてはそれが放牧や飼い葉用作物にとって相当な影響のあるArgentine stem weevil(ゾウムシの一種)やアブラムシ、トビムシ、芋虫、ナメクジのような苗の害虫をコントロールするのに有効であるということである。牧場や作物を維持するには苗の段階で保護することが必須である。
さらにネオニコチノイド有機リン殺虫剤よりヒトに毒性が低く広域葉面散布農薬に比べて環境にも優しい。種子とともに土に埋めるという極めて高度な標的化手法があるため空中散布のような環境暴露よりリスクが小さい。
雑草の侵入を防ぎ長く留まり収量を上げることに加えて、ネオニコチノイドは土地を耕すことなく種子を直接埋めることを可能にする。これにより栄養が流出することと二酸化炭素の排出を抑制する。
まだ時期は早いが、ネオニコチノイドの撤退は、すぐ使える代用品がないため農家に何らかの影響があるだろう。今後の決定がどうなるかに関わらず、ニュージーランド農家は苗の段階での害虫の管理のための有効で安全な方法を必要とする。
オタゴ大学Aotearoaゲノミクスとバイオプロテクション研究センターPeter Dearden教授
ネオニコチノイドニュージーランドでも海外でも作物を守るために広く使われている殺虫剤のクラスである。多くのネオニコチノイドは植物全体への作用があり、種子に処理しただけでずっと保護作用が得られる。ネオニコチノイドは過去に使われた有機リンやDDTのような問題のある殺虫剤に概ね取って代わっている。
近年ネオニコチノイドの授粉媒介昆虫、特にミツバチへの影響について懸念が提示されてきた。特に欧州で授粉媒介昆虫の長期にわたる減少がおこっていて、さらに飛ぶ昆虫が70%減少したという報告があった。これらがネオニコチノイドのせいだとされた。ネオニコチノイドはミツバチに対して致死的ではない影響があり、ミツバチのコロニーはネオニコチノド暴露で悪影響があることが示されている。これらのことが欧州での禁止につながった。
ニュージーランドでは、ネオニコチノイドは欧州より広く使われている。そしてニュージーランドの管理されているミツバチは元気であり、長期にわたって減少しているという兆候はない。しかしミツバチ以外の昆虫については質の高い長期監視は行われていないので欧州のような減少があるのかどうかわからない。
ネオニコチノイドはかつて使われていた殺虫剤よりはるかに安全であること、ネオニコチノイドの代用品はほとんどないことを指摘しておくのが重要であろう。さらにネオニコチノイドニュージーランドの外来ハチ管理に重要なVespexの主成分で牧場を荒らすゾウムシの管理に重要なツールである。ニュージーランドにとって真に重要なことは、地下水や土壌の残留農薬を監視しつつ農業と自然環境の両方に与える農薬の使用の影響を理解することである。こうしたデータをもとに殺虫剤のコストとベネフィットについて、情報を与えられた上での決定ができるだろう。
殺虫剤の代用品は存在し、その多くはバイオプロテクション研究センターが研究している。しかし殺虫剤の使用を完全に禁止するのは農業生産性に問題となるだろう。
ネオニコチノイドの物語は、有機リンやDDT同様、我々の昆虫対策が一般的に間違っていることを示すのかもしれない。昆虫は我々の生態系の重要な一部で、地球上での我々の存続にとって重要である。多分我々は彼らを大事にし、殺さずに農業へのダメージを避ける方法を探り、不必要に殺さないようにすべきなのだろう
(ゴキブリやヒアリ、毒蜘蛛だったら情け容赦なく殺すと思うよ)

  • Scienceニュース

EUは3つのネオニコチノイド農薬の禁止を拡大
European Union expands ban of three neonicotinoid pesticides
By Erik StokstadApr. 27, 2018
http://www.sciencemag.org/news/2018/04/european-union-expands-ban-three-neonicotinoid-pesticides
EUは授粉媒介者への脅威となることを根拠に、議論の多いネオニコチノイド農薬の禁止を本日拡大した。この決定は環境団体を喜ばせ、農業団体には経済的損害への恐れを抱かせた。
2013年にEUはミツバチやその他授粉媒介昆虫に魅力的な花を咲かせる作物に対して3つのネオニコチノイドの使用を禁止するモラトリアムを導入した。これらの農薬は通常土壌害虫から種を守るために種子コートされて、芽が出ると吸収されて植物全体に行き渡る。最終的には花粉や蜜に到達して授粉媒介者が暴露される。多くの研究が実験室で授粉媒介者に害があることを示し、大規模野外試験では結果はまちまちだった。
欧州委員会は昨年、殺虫剤が家畜のミツバチと野生の授粉媒介者に害を与えるという根拠が増えたことを理由にクロチアニジンとイミダクロプリドとチアメトキサムの禁止を全ての野外作物に拡大することを提案した。EFSAが2月に発表したレビューが活動家の運動に勢いを与えた。
大多数を選るのに数ヶ月苦労した後、加盟国代表は本日植物動物食品飼料に関する常設委員会で禁止を通過させた。英国、フランス、ドイツを含む16ヶ国が賛成した。ルーマニアデンマーク、他三カ国が禁止に反対、13ヶ国が棄権した。ネオニコチノイドは温室ではまだ使える。
甜菜農家はネオニコチノイドに代わる「持続可能な代用品はない」ため市場からの排除は収量低下になるだろうという。さらに種子処理の代わりに、もっと授粉媒介者に害の多い殺虫剤のスプレー散布になるだろうと欧州甜菜農家国際連合の声明では言う。そしてスプレーができない農家は撤退するだろう。
一部の授粉媒介者専門家は、この禁止は全てのネオニコチノイド関連全草殺虫剤を含まないと警告し、寄生虫や花の多様性の減少、営巣地の破壊などのような他の脅威から授粉媒介者を守るにはもっと対応が必要という。

  • Natureニュース

科学者はミツバチに害を与える殺虫剤の欧州の禁止を歓迎
Scientists hail European ban on bee-harming pesticides
Declan Butler 27 April 2018
https://www.nature.com/articles/d41586-018-04987-4
長く待ち望まれていた三つのネオニコチノイド殺虫剤の戸外で栽培される全ての作物への禁止が今日票決された。
多くの科学者はこの決定を称賛しているが慎重な意見もある。もしネオニコチノイドの代わりに使われるのが同じようなものやもっと害の多いものなら、また繰り返しになる
(この件についてはNatureとScienceはニュアンスが違う。ミツバチが減っているところと減っていないところで違う、と言うべきなのかもしれない。「科学者」が客観的ではないことを示すことになるのだが、まあ「多数」で動くならそんなものだろう。)