食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 伝統医療を批判して3か月拘留された中国の医師が釈放された

Natureニュース
Chinese physician released after 3 months in jail for criticizing a traditional medicine
David Cyranoski  26 April 2018
https://www.nature.com/articles/d41586-018-04886-8
弁護士や医師はこの事例が伝統医療についての化学的議論を抑えることを恐れる
Tan Qindong医師がベストセラーの中国伝統薬を批判して逮捕され1月からLiangchengで拘留されていたが4月17日に釈放された。Tan医師は今後裁判に備える。
この事例は中国における伝統医療(TCMs)を巡るセンシティブな状況を強調する。TCMのほとんどは有効性と安全性をRCTで確認されていないが政府の最も高いレベルで支持されている。
Tan はHongmao liquor鴻茅薬酒という薬について、12月19日に中国のソーシャルメディアアプリMeipianに投稿した。投稿は削除されているが警察によると各種病気に効くと宣伝していたHongmao liquorを“poison毒”と呼び患者に使わないように助言していたという。3日後に製造業者のHongmao製薬が企業への名誉毀損だと警察に訴えた
Hongmao liquorは2016年の売り上げが16.3億元で昨年の中国の2番目のベストセラーTCMである。1992年に医師と認可薬局での販売許可、2003年からは店舗販売が認められ、脾臓、胃、腎臓、腰痛含む異なる何十もの病気に効くとされる。
しかしTanの逮捕がメディアに注目され、20以上の地方当局がHongmao製薬の誇大宣伝を叱責することになった。4月16日には中国の医薬品規制局が会社に過去5年の虚偽の宣伝についての懲罰を説明し、有害事象報告や公衆の懸念にとなっている安全性や有効性についてのさらなる説明をするよう求める声明を出した
Hongmao製薬はnatureの取材に回答しない。
(伝統薬というより伝統薬規制の枠組みの緩さを利用したインチキ健康食品らしい)

  • SMC UK

食事摂取と閉経年齢を調べた研究への専門家の反応
expert reaction to study looking at dietary intake and age at menopause
April 30, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-dietary-intake-and-age-at-menopause/
Journal of Epidemiology & Community Healthに発表された研究である種の食品群や特定の栄養が自然の閉経年齢を予想すると報告している
ロンドンSt George’s大学内分泌名誉教授で内分泌学会会員Saffron Whitehead教授
この研究は閉経開始年齢に与える食事の影響を調べている。残念ながらほとんどの結果は有意ではなく幾分かの傾向が観察されている。閉経の時期は卵の総数を含む多くの要因に影響される。食事は社会経済的要因に影響され食べる量は体脂肪に影響する。体脂肪はエストロゲンに影響する。この研究には多くの欠点があり、著者が言及しているように観察研究である。他に関係する要因が多すぎて食べもので閉経時期を変えられるとはとても言えない。
Imperial College London生殖内分泌相談医で臨床上級講師で内分泌学会会員Channa Jayasena博士
この大規模研究は女性の食事と閉経年齢を調べた。著者らは精製炭水化物、スナックを多く食べる女性と菜食主義者は閉経が早いと示唆している。これで閉経を遅らせるレシピを想像したくなるが、残念ながらこれは観察研究という大きな限界がある。食生活を変える理由はない。

  • ゲノムガイドがん治療は誇大広告?

Is genome-guided cancer treatment hyped?
Jocelyn Kaiser
Science 27 Apr 2018:Vol. 360, Issue 6387, pp. 365
進行がんで選択肢が無くなってしまった患者に対して、多くのがんセンターががんのゲノム配列を調べてその弱点に適した薬を与えるという期待を抱かせている。このブームとなっている分野に、期待が過剰宣伝であると批判する人たちがいて、AACRの年次会合で議論が行われた。
一方はMemorial Sloan Kettering がんセンターのDavid Hymanで、現時点ではゲノミクスはほとんどのがん患者には役にたたないが明確な利益のあるものもたくさんあるので誇大広告ではないと言う。もう一方はOregon 健康科学大学のVinay Prasadで、提唱者の主張するより遥かに少ない人にしかメリットはないと主張する
(議論があること自体は健全。日本のiPSはどうだろう?これまでの成果の客観的評価も困難なのでは?)

  • 私はかつてホリスティック栄養士だった

I Used To Be a Holistic Nutritionist
Denby Royal on April 27, 2018
https://sciencebasedmedicine.org/i-used-to-be-a-holistic-nutritionist/
1年前まで、私はホリスティック栄養士だった。その世界を抜け出したものとして、正しいことをする倫理的義務がある−そして正しいこととは、欺瞞に満ちた業界での私の過去の信仰を非難することである
(Denby Royalのブログの投稿を膨らませたものをscience based medicine(SBM)に寄稿してもらったもの)
ナチュラルニュートリションの学校で何を教わったか、ウェルネスコミュニティから足を洗おうとしたらどれだけ酷い言葉を投げつけられたか等
コメントもたくさんついている

  • EUにおける予防接種率の低下に対応する

The Lancet エディトリアル
Addressing decreasing vaccine coverage in the EU
Volume 391, No. 10131, p1638, 28 April 2018
近年EUで、予防接種率の低下のため予防接種で予防できる病気の大規模アウトブレイクが何度かおこっている。この問題に対応するため欧州委員会は野心的目標を掲げ強化策を打ち出した。このロードマップに対して欧州科学アカデミー評議会(EASAC)と欧州医学アカデミー連盟(FEAM)が公式に反応している。
EASAC と FEAM欧州委員会に対して全ての国に一律の対策を求めることをしないよう警告している。予防接種カバー率向上のためには加盟国毎にそれぞれ調整が必要で、予防接種計画の一律化提案は役にたたないだろうという。全ての予防接種が公衆衛生にとって同じ意味をもつわけではなく、必要性の高いワクチンの優先順位付けが含まれるべき。予防接種躊躇に対応するにはコミュニケーションと社会科学の知見が必須であろう。欧州予防接種カードと登録システムを確立してワクチン不足監視システムを作ることなどを提案している
Vaccination in Europe
https://easac.eu/fileadmin/PDF_s/reports_statements/Vaccination/EASAC_FEAM_Commentary_on_Vaccines_April_2018_FINAL.pdf
この中でワクチン躊躇を3種類に分類することを提案している
1. ワクチン拒否者Vaccine rejecters (VRj);強固な拒否者でしばしば陰謀論に囚われている
2. ワクチン抵抗者Vaccine resistant (VR);拒否するが陰謀論はそこまで信じていない
3. ワクチン躊躇者Vaccine hesitant (VH);不安なだけ
そしてVRとVH向けにコミュニケーションを行うように。
(簡単に区別がつくかなぁ・・過激な人は無視、って大抵の場合そうしているけれど向こうからおしかけてくるから過激なわけで。農業分野での「生産より環境の方が大事」という主張は人命より環境が大事なディープエコロジーの思想なのでワクチンだけの問題ではない。でも医師等はわりと農薬危険説とかに親和性あったりするので)

今号のLancetにはPURE研究へのコメント多数
Associations of fats and carbohydrates with cardiovascular disease and mortality—PURE and simple?
中国の調査で調理に使う油が選択肢に入っていないのは大きな欠陥とか比較対象にした最も脂肪摂取の少ない群は多分栄養不良なので不適切、摂取カロリーは1日500-5000kcalだが何らかの調整が必要なのでは、とか炭水化物の質が問題、とか。
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20170831#p5

  • Whole30:健康的あるいはいかさま?

Whole30: Healthy or Hokum?
by Jeanine Barone
http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/diet-weight-loss/article/whole30-healthy-or-hokum
読者から人気のあるWhole30プログラムについて、減量に役立つのか、健康上の利点があるのかという質問があった。
Whole30は食習慣をリセットして生活を変えるとする30日のプログラムで、本はアマゾンで100万部以上売れている。しかしこれは従うのが非常に難しく健康的な食生活とはほど遠い
(いろいろ解説略。食事の中身よりソーシャルメディアを活用したシステムが目新しくて人気を博しているようだ)