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Tipperary地方のSilvermines地区に関する官庁間グループによる調査報告

Report of an Inter-Agency Group on the Silvermines Area of County Tipperary
17 May 2018
https://www.fsai.ie/news_centre_silvermines_17052018.html
Tipperary地方のSilvermines地区は、環境中に重金属が豊富で昔から採鉱が行われてきたが、その地区の乳牛の3群において牛乳中に高濃度の鉛が検出され、それを受けてアイルランド農業食料海洋省(DAFM)は、2017年5月、官庁にまたがるグループ(IAG)を立ち上げた。
このIAGの任務は、Silvermines地区内で以前どのような作業が行われていたかを調査することであり、さらにはフードチェーンの安全確保とヒトや動物の健康と福祉を保護するために取られている現行の管理施策の見直しや更新を行うことである。
このIAGは、DAFM、アイルランド通信気候変動対策環境省(DCCAE)、アイルランド環境保護庁(EPA)、アイルランド食品安全局(FSAI)、保健サービス局(HSE)、Teagasc(農業試験・支援・教育機関)、およびTipperary地方議会(TCC)から構成される。
IAGは、2018年5月16日に報告書を公表し、ウェブサイトで閲覧可能としている(別途要約の和訳有り)。IAGは、Silvermines地区は、成育、生活、仕事、および食品の生産に安全な場所であると結論付けている。しかし、農家、地域社会、および関連機関は、継続的に積極的な管理施策を実施していくことが重要である。
IAGは、リスクの評価、管理およびコミュニケーションに関連して18の助言を行っている。それらは、リスクが大きく変化していないことを反映して、大まかには、2000年に以前のIAGが提示した助言と同様の積極的な管理施策となっている。しかし推奨される施策は更新され強化されて、最新の規制基準や科学的リスク評価情報を反映したものとなっている。
DAFMはすでに食品の安全性を高める施策を実地に移している。すなわち、農村地域や食品業者に情報や助言的支援を提供し、適切な食品安全監視施策の実施を担保することである。

  • Tipperary地方のSilvermines地区に関する官庁間グループによる調査報告

要約(抄訳)
Report of an Inter-Agency Group on the Silvermines Area of County Tipperary
EXECUTIVE SUMMARY
May 2018
https://www.agriculture.gov.ie/media/migration/publications/2018/ReportofanInterAgencyGroupontheSilverminesAreaofCountyTipperary170518.pdf
Tipperary地方のSilvermines地区の乳牛の3群において牛乳中に高濃度の鉛が検出されたことを受け、官庁にまたがるグループ(IAG)が立ち上げられた。その構成員は以下のとおり。
アイルランド農業食料海洋省(DAFM)
アイルランド通信気候変動対策環境省(DCCAE)
アイルランド環境保護庁(EPA)
アイルランド食品安全局(FSAI)
・保健サービス局(HSE)
・Teagasc(農業試験・支援・教育機関)
・Tipperary地方議会(TCC)
IAGの任務は以下のとおり。
・1999〜2004年に活動した以前のIAGおよび専門家グループの知見や助言を、今回の調査で得られた知見に照らして再検討すること。
・1999〜2004年時に推奨された監視施策を、乳牛群に焦点を当て、またどの乳牛群を監視すべきかを決定するための基準に焦点を当てて、改定および更新すること。
・1999〜2004年時に推奨された「積極的な管理」施策を、牧草地管理に焦点を当てて、改定および更新すること。
・農家やそれよりも広い地域社会への情報の普及に関し助言すること。
IAGは、Silvermines地区は、成育、生活、仕事、および食品の生産に安全な場所であると考えているが、今回推奨される施策は、最新の規制基準や科学的リスク評価情報を反映すべく、更新・強化されている。
推奨事項(助言)は以下のとおり。
リスク評価
1. 監視活動区域を、土壌中総重金属レベルについて現在得られる情報に鑑み、1999年時からさらに約1 km広げる。
2. 集落水供給事業は、管轄機関による監視を受け、鉛濃度が基準値を満たしている確証を得るようにする。私設水源から供給を受けている家庭は、助言に従い、飲み水を検査して鉛濃度が基準値を満たしている確証を得るようにする。
3. 対象を定めて、牛乳中の鉛濃度の監視を実施する。
4. 環境的(生物学的および物理学的)および地質工学的な採鉱場跡の監視プログラムを引き続き行っていく。
5. 牛以外の牧草を食べる動物についても対象を絞って屠場で組織中鉛濃度の監視を行う。
6. 鉛中毒が疑われる動物について、屠体や組織を検査に供する。
リスク管理
7. 家庭や地域でヒトが鉛に暴露されるのを最小限にする具体的な方策を取る。
8. 農家レベルで動物が鉛に暴露されるのを最小限にする具体的な方策を取る。
9. 土壌中の鉛などの重金属の分布を示す地図を酪農家に配布し、また土壌や牧草地の管理について個別の助言を行ってリスク管理に役立てる。
10. 個体識別移動管理(AIM)システムによる牛の標識を行い、肝臓や腎臓が屠場で確実に廃棄されるようにする。
11. 馬を使用する家屋は全て登録することとし、個体識別移動管理(AIM)システムによる馬の標識を行い、肝臓や腎臓が屠場で確実に廃棄されるようにする。
12. 採鉱場の跡地の修復を完了させる。
リスクコミュニケーション
13. IAGの年次総会を実施し、以下のことを行う。
・リスクをレビューし、今回および以前の推奨事項の実行状況を検証する。
・地域住民に対する既存の助言に影響を与えるような新しい根拠がないか検証する。
・コミュニケーション手段が適切に実施されていることを確実にする。(ウェブサイトやリーフレットの更新により新しい情報を伝える。)
14. ヒトの健康を保護するための情報や助言を毎年レビューし、更新された情報を地域社会や地域の医療サービス提供者に定期的に提示する。
15. 安全な食料生産を確保し動物の健康や福祉を守るための情報や助言を毎年レビューし、更新された情報を地域の農業社会に定期的に提供する。
16. 安全な食料生産の確保および検証のための情報や助言を毎年レビューし、更新された情報を食品事業者に提供する。
17. 全ての助言的情報は、アイルランド国立成人識字機関(NALA)の校正を受け、対象者に理解しやすいものであることを確保する。
18. 全ての公表報告書、助言が書かれたリーフレット、およびSilvermines地区における積極的な管理に関する他の関連情報は、専用のウェブページで容易に閲覧できるようにする。