WCRF
世界がん研究基金
Diet, Nutrition, Physical Activity and Cancer: a Global Perspective
The Third Expert Report
May 2018
https://www.wcrf.org/dietandcancer
がん予防助言
Cancer Prevention Recommendations
https://wcrf.org/dietandcancer/cancer-prevention-recommendations
健康体重維持
活動的であれ
全粒穀物・野菜・果物・豆を食べる
ファストフードを制限
赤肉と加工肉を制限
砂糖入り飲料を制限
飲酒制限
サプリメントに頼らない
可能なら母乳を与える
がんと診断されたら
2007年の第二版からの変更点は
・より全体的なアプローチを強調
個別の助言についてはあまり大きな変更点はない。初版から多くの食品(アルコール含む)や食品成分が、特定のがんのリスクを上げたり下げたりすることが同定されてきた。しかし特定の食品や栄養素やその他成分がそれ自体がん予防や発症に重要な単一要因であるということはますますありそうになくなってきた:むしろ食生活のパターンと運動の組み合わせにより作り出される代謝状態が、細胞をがんの特徴として記述されるような表現型や構造的機能的変化につながる遺伝的あるいはエピジェネティックな変化を促しやすくするあるいはしにくくする。
他の全ての生物同様、人は正常な生理的代謝的状態では外部や内部からのストレスに晒されている。栄養は人体がこれらのストレスに耐えて病気になることを避けるための重要な要素で、明確な栄養欠乏の場合を除き、このレジリエンスは特定の栄養素の単一影響には依存しない。外と内からのストレスへのレジリエンスを決める要因について、より全体にフォーカスしたほうが特定の要因をがんの原因だとか予防因子だとか研究し続けるより遥かに実りのあるものであろう。
さらに2007年からのがん予防助言に従うことの影響を評価する研究は、こうした助言に従う人たちが増えれば増えるほど特定のがん、がん全体、および全ての原因による死亡のリスク低下が大きいことを示している。
こうした理由から、専門家委員会は、個々の助言に従うことはがん予防になるだろうけれど、最も利益があるのはそれらを食事と運動とその他の要因に関連する統合した行動パターンとして扱い、生活様式あるいは包括的パッケージとして考えることの重要性を強調する
(図。箇条書きではなく全部が関連するひとまとめであることを強調する)
・根拠の評価方法の微調整
根拠が増え質が上がったためより質の高い研究に集中できるようになった、等
・注目すべき新しい根拠
○質の高いデータが入手できるようになったため、より洗練された解析が可能になり用量反応相関曲線の形がより明確になった。例えば野菜と果物に関しては、最もリスクが高いのは全くあるいはほとんど食べない人たちであることが示唆され、既に1日1-2単位食べている人たちにもっと食べるよう薦めるよりほとんど食べない人たちに食べるよう薦めることのほうがより重要である可能性がある。
○身長のがんリスクへの影響がますます明確になった。しかし身長そのものががんの原因とは考えにくく、人生の初期にがんのなりやすさに影響する成長や代謝に関連する発育要因のマーカーであろう。このメカニズムについての研究が必要である
○全体としてのライフコースの重要性がますます明確になった。成人になってからの身長の高さはいくつかのがんリスクが高いことを予測し、乳がんにとっては生まれたときの体重が重いことが高いリスクに関連するが若年成人期の体脂肪の多さはリスクが低い。しかしこれらのメカニズムの理解にはさらなる研究が必要である
○がんサバイバーの根拠も増えているがまだ初期でありもっと必要である
(これは米国の食事ガイドラインでも同様で、大事なのは個々の食品や成分がどうこう、ではなく食生活およびライフスタイル全体として考えよ、ということ。
そういう意味で津川さんの「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」は残念なものだと思う。結局断片的「エビデンス」をもとに「体に良い食品」「悪い食品」と二分法で判断することを勧めてしまう。佐々木先生の本がもっと売れるといいのに。そして日本人にとってどういうライフスタイルが望ましいのかはもっと真摯に研究すべきで、それは決して現在の和食礼賛のための恣意的研究ではない。)