食品安全情報blog過去記事

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査察報告

  • 英国―公的管理の協働

2017-6069 - Synergies of official controls - United Kingdom GB
2018-2-2
http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=3918
2017年10月4〜12日にイギリスで実施された、事実確認調査。この調査の目的は、動物由来食品および非動物由来食品の公的管理を構築する上で、自己検査体制や第三者保証制度で示された結果を管轄機関がどのような方法でどの程度考慮しているかに関し、情報収集することであった。
三者認証制度と公的管理との協働は、長年英国で実施されてきている。実績評価(Earned Recognition)プログラムに基づいて、食品規準庁(FSA)は、公的管理の頻度を減らす目的にかなう特定の制度について、会員制や認証制を認めている。関係団体、すなわちFSAと当該制度の負託団体とに課せられた要件と負託内容は、これら団体が署名した覚書に記載されている。
FSAと当該制度の負託団体は、得られた情報の信頼性を確保する方策を導入済みである。当該制度の運営団体もしくは認証団体が導入した方策の中にいくつか良好な実例が認められ、それらによってそうした団体の能力の質および信頼性、ならびにそうした団体を監査する組織が示す成績の質および信頼性が向上している。
実績評価プログラムでは、保証の対象は、今日まで、第一次生産部門に限定されていたが、FSAは現在、このシステムを拡大し、さらに多くの第三者認証負託団体に対して承認を与えることによって加工部門も対象に入れられる様、実現性を模索している。
実績評価プログラムでは、第一次生産部門において承認された制度で会員と認められることが正式手続きとなるが、公的管理では、食品法実施規則が定める行列数値表に基づいて食品事業者のリスクの等級付けを行うことが正式手続きとなる。この規則は、食品生産施設(加工部門)が未承認制度の会員登録を受けることについて考慮はあるものの、最終リスク分類に影響するほど大きな扱いではない。
主な食品小売りチェーンは、独自のブランド製品の卸売業者に対し、独自の個別企業向け食品安全基準を整備している。これらの個別に設けられた基準は、市場参入のために食品事業者に必須と考えられる制度の基準を超えていて、動物の福祉、環境問題、持続可能性、特定の製品品質基準などの要素が含まれていることが多い。これらの個別に特別に設けられた基準は、しばしば独自のブランド製品の広告目的に使用されるため、大規模な食品小売りチェーン間の競争をあおっており、相手に優る新しい基準や要件を導入しようという競争が常に起こっている。これらの場合、供給元に対する第二者監査団体による頻繁な検証が行われることが多い。
公的管理と第三者認証制度との協働は、公的管理の削減や管轄機関のリソースの倹約につながっているにもかかわらず、必ずしも食品事業者の負担を減らすことにはつながっていない。それは、公的管理が元来、食品小売りチェーンに実施される管理と比べ、食品事業者が年間通して受ける監視のわずかな部分しか担っていないためである。
FSAは現在、公的管理の実施方法を再設計する目的で「私達の未来を規制すること(Regulating our Future)」という事業に取り組んでいる。

  • ロッコ―生きた動物および動物由来製品における残留物質および汚染物質

2017-6190 - Residues and contaminants in live animals and animal products - Morocco MA
2018-1-30
http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=3915
2017年9月11〜21日にモロッコで実施された、EUへの輸出向けの生きた動物と動物製品における残留物質と汚染物質の公的管理の有効性を評価するための査察。この査察は、残留物質監視計画の実施状況を評価し、さらに動物用医薬品の認可、流通および使用についても、残留物質監視に影響があると考えられる分野であることから、対象として含めた。
ロッコ産の動物由来食品中の残留物質を管理する現行のシステムは、輸出製品にEUの上限値を超過する残留物質が含まれていないことを保証する大きな支えとなっている。
しかし、残留物質監視計画の作成と実施においては欠陥が確認され、最も顕著であったのは、妥当性が検証されていない分析法の使用、家禽や水産養殖分野における特定の化学物質の使用が反映されない範囲で行われている検査、ならびにサンプルおよび生じる結果の法律上および分析上の信頼性を弱めるサンプル取扱い実務であった。
それでも、動物用医薬品の処方システムが実現されていること、および動物用医薬品の流通や使用に関して公的管理が効果的に運用されていることにより、EU向け製品が残留物質上限違反となるリスクが軽減されている。

2017-6011 - Sustainable use of pesticides - Sweden SE
2018-1-25
http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=3909
2017年6月12〜16日にスウェーデンで実施された事実確認調査。農薬の持続可能な使用を実現するための施策の履行状況を調査し、良好な実務例の確認に加え、指令2009/128/ECの要件実現に際して直面した主要な障害や困難を確認することを目的としている。
スウェーデンには1980年代以降、化学的な農薬の使用を削減するための行動計画が策定されている。現在の国家行動計画は、農薬に関連するリスクや農薬への依存の低減に焦点が当てられている。この計画では、明確な目標が、場合によっては具体的な農薬を対象に上げて、定められている。現在の計画に関する最初の正式なレビューが進行中で、2017年末までに結論が出される予定である。そのため、この計画の目標が達成されたかどうかを判断することはまだできない。にもかかわらず、スウェーデンにおいては、農薬によるヒトの健康や環境へのリスクは、過去最低水準に近く、近年の使用場面が増える状況にあっても安定状態を保っている。
管轄機関は、指令2009/128/ECの要件を実現するために様々な手段をとっている。例えば、職業的使用者および販売業者を教育する体制、農薬散布機器を検査する体制などである。空中散布は禁止されていて、特例はこれまで認められていない。水生環境や飲料水を保護する対策が導入されており、公共用水供給監視データから、飲料水の水質基準が高い水準で順守されていることが示されている。
総合的病害虫管理(IPM)に対するスウェーデンのアプローチは、研修と教育を基軸とし、農薬に特化するよりも、持続可能な農業一般に焦点を当てている。独立した公的資金による情報収集・提供体制があり、職業的使用者をIPMに導くのに役立てることができる。管轄機関は、大部分の職業的使用者はIPMの原則を実行していると信じているが、農薬の持続可能な使用に関する指令(SUD)の附属書IIIに記載されているIPMの8つの原則が実現されているかどうかについての体系的な評価は行われていない。
この報告書では、広域害虫監視システムなど、確認された多数の良好な実例を特記している。その一方、管轄機関と関係団体は、スウェーデンの状況下で職業的使用者がIPMを実現し易くなるような応用研究が行われていないなど、農薬の持続可能な使用における潜在的な障害を認めている。また、IPMの実施状況の評価に困難があることも確認している。

  • イタリア―農薬の持続可能な使用

2017-6006 - Sustainable use of pesticides - Italy
2018-1-25
http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=3910
2017年5月3〜11日にイタリアで実施された事実確認調査。指令2009/128/ECに基づいた農薬の持続可能な使用を達成する施策の進捗状況を調査し、この指令の要件の実現に関連した良好な実例を確認することを目的としている。国家行動計画は、施策を確実に達成するために一般的な目的、優先事項および具体的な方策を大まかに示している。だが、指令2009/128/ECで求められる量的目標や具体的な対象とされる物質は示されていない。最初の国家行動計画の採択で14ヵ月の遅れがあり、それが計画の実現の遅れ、職業的使用者の教育や認証の遅れ、および散布者の検定の遅れにつながっている。肯定的な特記事項として、空中散布は制限された地域に限定されており、特定地域における農薬の使用の禁止や制限のために適切な手段が取られており、そして、高い水準で法令を満たす地表水監視が行われていることが挙げられる。いくつかの良好な実例の一つとして、急性中毒事例の調査システムが整備されていることが挙げられる。全国を網羅する病害虫監視ネットワークや、生産者が総合的病害虫管理(IPM)に関連する意思決定をするのに役立つ一連のツールが存在する。しかしながら、指令2009/128/ECの附属書IIIに記載されているIPMの8つの原則に準拠しているかどうかを判断するための管理は、任意の施策に参加して資金援助を受けている生産者に対象が限られている。

2017-6015 - Sustainable use of pesticides - Poland PL
2018-1-25
http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=3913
2017年6月7〜14日にポーランドで実施された、農薬の持続可能な使用を実現するための施策の進捗状況の調査。指令2009/128/ECの要件を実現していく上でよく認められた障害や困難、また良好な実例を確認することを目的としている。
ポーランドは、農薬の使用によるリスクと影響を削減するため、2013年に最初の国家行動計画を採択した。この計画の主な目的は、総合的病害虫管理(IPM)の一般原則の実現と、農薬の使用によるリスクの削減である。IPMツールの開発と利用促進のための活動が実施され、さらに職業的使用者によるIPM原則の実現状況を監督するための活動が取られている。だが、そうした活動の多くは国家行動計画の対象と直接結びついていないため、農薬の使用によるリスクを削減するという計画の目標が達成されているかどうかの判定を難しくしている。
ポーランドは指令2009/128/ECに先立って、すでに使用者の教育体制や散布機器検査体制を設立し、どちらも当該指令と整合するよう修正が加えられている。空中散布は禁止されているが、森林の農薬の使用には特例が与えられている。管轄機関は、低リスクで非化学的な農薬の認可申請数が少ないことが、IPM戦略の困難さの一つであることを認識している。