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ネオニコチノイド類を含む農薬のリスクと恩恵: それらの代替物との比較

Risks and benefits of plant protection products containing neonicotinoids compared with their alternatives
30/05/2018
https://www.anses.fr/en/content/risks-and-benefits-plant-protection-products-containing-neonicotinoids-compared-their
2016年、「生物学的多様性、自然、景観の回復に向けた」決議の実施の一環として、また、農業、健康および生態系保護省(Ministries of Agriculture, Health and Ecology)の要望に応える形で、ANSESは、ネオニコチノイド類を含む農薬のリスクと恩恵とを査定し、他の化学的なあるいは非化学的な代替策と比較する評価を開始した。本日、ANSESは、それについての最終的な意見を発表する。ネオニコチノイド類を含む農薬が使用されるほとんどの用途について、十分な有効性や適用性のあるな化学的ないしは非化学的代替策があることが確認された。しかし、ネオニコチノイド類よりも全般的に好ましくない度合いが低いリスクプロファイルを有する化学物質や化学物質群を特定することはできなかった。ANSESは、ネオニコチノイド類の禁止による農業活動への影響は予測し難いということも強調すべきだと考えており、そして農産物の保護や管理に有効で、ヒトや環境に安全な代替法の提供を迅速に進めるよう進言する。
◇時系列
2016年8月8日、「生物学的多様性、自然、景観の回復に向けた」決議が採択され、その第125条に、ネオニコチノイド類由来の有効成分を含む農薬製品の禁止が盛り込まれた。発効は2018年9月1日から。
ただし、ANSESがネオニコチノイド類製品とその代替製品や代替法との比較を行っていることに鑑み、2020年7月1日まで禁止が延期される可能性が規定されている。
また、EUでは、2018年4月27日に、3種類のネオニコチノイド化合物(チアメトキサム、イミダクロプリド、クロチアニジン)の使用制限(温室内のみ)が採択され、フランスにも適用される。
ANSESは公式にネオニコチノイド類を含む農薬のリスクと恩恵とを査定し、代替策と比較を行う評価の実施を要請された。代替策を特定する方法論を策定(2017年3月に公表)し、有効性、適用性、持続可能性および実用性を基準とした比較を行うこととした。
ネオニコチノイド類に認可された用途に対する代替策の特定
ネオニコチノイド類に認可されている用途130事例について検討が行われ、ほとんどの用途について、十分な有効性や適用性のある化学的ないしは非化学的代替策があることが確認された。6事例では、上述の基準を満たす非化学的代替策が特定された。89%の事例では、ピレスリノイド類を中心とした有効成分で代替できることがわかった。39%の事例における化学的代替策は同類の単一の有効成分によるものであるが、それらは同じ有効成分群に由来するものであった。また78%の事例では、少なくとも一つの非化学的代替法が確認された。
ネオニコチノイド類の使用に関連したヒトの健康や環境におけるリスク指標: 化学的代替法との比較
ヒトについては食事を介した暴露および非食事暴露の2つの指標の値が、環境については鳥、ほ乳類、ミミズ、水生生物、ミツバチおよび地下水におけるリスクの6つの指標の値が算出された。
用途や問題とするリスク指標によって比較結果は変動し、最も好ましくない度合いが低い有効成分に関して全般的な簡潔な結論は導出できなかった。
ネオニコチノイドの使用禁止と代替策の実施が農業活動に及ぼす影響
ネオニコチノイド類の禁止が農業に及ぼす影響を評価するに当たっては、方法論やデータの利用可能性および信頼性など、問題が山積みである。
特に農業活動に及ぼす影響については、ネオニコチノイド類の用途が広く、種子の防虫処理にある意味保険として大規模に使用されていることから、予測困難である。
したがって、代替策の方向性はまだ固まっておらず、経済学的分析方法についても開発が待たれる状況である。
◇ANSESの結論と助言
・単独で有効な方法は無く、複数の方法の組合せを検討すべきである。種子の処理など予防的な使用をやめ、農地の病害虫の定期的な観察(疫学的調査)を行うべきである。あらゆる非化学的管理方法を優先して実施し、最後にどうしても必要な場合に対象生物以外への効力や毒性が低い殺虫剤を使用する。
ネオニコチノイド類の禁止により他の殺虫剤を使用する場合、それらの殺虫剤に対する抵抗性の増高が引き起こされる恐れがある。
ネオニコチノイド類に依存しない生産システムに関する文献の探索は、研究、ガイドラインの共有および技術支援の機運を促す。研究されている非化学的病害虫管理法は、すぐに運用できるまでには達していない。農業生態学の見地から開発が進められている広範な耕作管理法はやはり組み合わせて用いられるべきものであり、農産物生産システムの大幅な見直しを迫るものになる。
・忌避剤などの化学伝達物質(特に植物が産生するもの)は、非常に期待が持たれる。捕食寄生者や捕食者となる有益な昆虫も、試験した用途の20%以上で有効であった。
・ANSESは、農産物の保護や管理に有効で、ヒトや環境に安全な代替法の提供を迅速に進めるよう進言する。

(代替できないけれどとにかく禁止、これから研究、って「予防原則」とやらはどこに?)