食品安全情報blog過去記事

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論文

  • 特集 がんは多細胞性の崩壊?

Is cancer a breakdown of multicellularity?
Elizabeth Pennisi
Science 29 Jun 2018:Vol. 360, Issue 6396, pp. 1391
新しいデータは腫瘍細胞の増殖が単細胞だった先祖の遺伝子により活発化していることを示唆
10年前、がんについての過激な理論が出てきた:それは多細胞生物の災いで、細胞が進化の時計を逆転させて単細胞生物のようにふるまうようになったものだという。最近メルボルンのPeter MacCallumがんセンターの計算がん生物学者David Goodeらがこの考えを支持する根拠を発見した。7つの固形腫瘍の遺伝子発現を調べ、活性化している遺伝子の祖先を追跡したのだ。昨年PNASに発表している。

多数の力
The power of many
Elizabeth Pennisi
Science 29 Jun 2018:Vol. 360, Issue 6396, pp. 1388-1391

  • 書評:GMOについて正しく理解する

Getting it right on GMOs
Science 29 Jun 2018: Vol. 360, Issue 6396, pp. 1407
Mark Lynas 著「科学の種:何故我々はGMOについてこんなに間違ってしまったのかSeeds of Science: Why We Got It So Wrong on GMOs」のJosé R. Dinnenyによる書評
評者は植物生物学者で私の発見が食糧生産のための環境負荷を減らすのに役立ったら嬉しいと思う。けれどGM技術は議論が続いている。この本の著者のMark Lynasは反GM運動のパイオニアの一人で、彼のたどった道筋のように反GMから始まってひとつひとつ科学的根拠を調べていき、7章の終わりには科学が議論に勝つ。しかし消費者はそうではない。では何が間違っていたのか?Lynasは除草剤耐性作物を最初に応用したのが間違いだったと主張する。農家が使う農薬を減らすことができる害虫耐性農作物が最初だったら物語は違っていただろうという。
農業でGM技術を使えるのは規制にかかる膨大な費用をまかなえる少数の多国籍企業だけである。Lynasはそれがグリーンピースのおかげであると指摘する。活動家たちがやっていることは小規模や一般人を動員して実際には大規模少数企業しか生き残れないようにすることである。Lynasは「我々は既に20年も、貧困対策と農業の持続可能性に貢献できるだろうただの交配技術と戦うことに時間を無駄にしてきた。さらに20年を無駄にしないように」と書く
(いろいろ略)

  • 農業の発展が革新を阻害する反対を招く

Agricultural advances draw opposition that blunts innovation
Anne Q. Hoy
Science 29 Jun 2018:Vol. 360, Issue 6396, pp. 1413-1414
農業科学者Alison Van Eenennaamは、AAASの聴衆に対して、科学者は食糧生産を増やし環境影響を緩和するために技術を使っているが、その進化が、科学的根拠のない主張によって疑問だとされ一般の人々の不信と懸念の原因になっている、という。
Van Eenennaamは農業の革新への反対活動の誕生を追跡している。例えばGM作物の採用を巡る議論とそれに対する誤解を招く「パラレルサイエンス」の勃興。「これはこの分野の一例に過ぎない。農業に関することでは、誰かの世界観や本能的直感に基づいて、根拠を無視した間違った決定がなされる。そして真に重要なトレードオフが議論されることはない」。多くの科学者はGM作物の安全性のようなトピックに飛び込むことを避け、「沈黙のスパイラル」ができ、科学的知見と一般人の認知のギャップが拡大する。我々は客観的事実を擁護する必要がある
(論点を多く含む。農業は命を育むだの宇宙の神秘だのやけに感情的にこうあるべき、みたいな主張する人の多い分野であることはどこでも同じなんだな)

  • 大気汚染は世界の糖尿病に有意に寄与

Air pollution contributes significantly to diabetes globally
29-Jun-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-06/wuis-apc062718.php
たとえ低レベルの汚染でも健康リスクとなりうる
The Lancet Planetary Healthに発表された、退役軍人の医療データとEPAの大気汚染監視システムやNASAの観察データを用いた研究

  • 飲酒は若年成人の代謝物プロファイルを変える

Drinking changes young adults' metabolite profile
29-Jun-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-06/uoef-dcy062918.php
Alcoholに発表された東フィンランド大学とKuopio大学病院の新しい研究によると、若者の飲酒は代謝物プロファイルの変化に関連する。例えば大量飲酒する若者は1-メチルヒスタミンの濃度増加を示すが、それは脳の灰白質容量の減少と関連する。

  • 世界的にNCDを減らす:環境リスク要因の過小認識

Reducing NCDs globally: the under-recognised role of environmental risk factors
The LANCET
Published: 28 June 2018
環境ハザードと非伝染性疾患についての英国CAPABLE計画研究評議会を代表して
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)31473-9/fulltext
今月WHOのNCDに関する独立ハイレベル委員会が2030年までにNCDを減らす持続可能な開発目標3.4の進行を加速するための一連の助言を発表した。残念ながらこの世界的に重要な報告書で無視されている大きなことがある:普通の行動要因(喫煙、飲酒、運動不足、不健康な食事)以外の環境リスク要因の役割である。
最初に、ヒ素や銅、鉛、カドミウム、水銀のような環境中有害元素に言及がない。
二つ目は家庭内および屋外の空気の汚染について、この報告では屋外汚染について簡単に仄めかすに留まっている。
三つ目にこれまでWHOが報告してきた鉛や大気中微粒子がNCDの重要なリスク要因であるという報告と一貫していないようだ。

  • やりかた:NCDについての国連ハイレベル会合からのメッセージ

The how: a message for the UN high-level meeting on NCDs
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)31475-2/fulltext
1.政治の最高レベルに説明責任をおく
2.財政的政策を優先(タバコ酒砂糖に課税)
3.追加の財源確保
4.汚染や都市化の影響にも対処(運動を促す都市デザイン等)
5.意味のある市民参加を支援
6.公正、人絹、ジェンダー平等の基本原則
最後に、独立した説明責任