食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

論文

  • 間違った選択にしがみつく

Sticking with the wrong choice
13-Jul-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-07/uomm-swt071318.php
ミネソタ大学医学部の研究者らが「サンクコスト誤謬」についての新しい知見を得る
別の選択肢のほうが良いことが明らかになっていても一度選んだものにしがみつく行動を「サンクコスト誤謬」と呼ぶ。これはヒトに特有と思われていたがマウスとラットもヒトと同じ誤謬に陥ることをScienceに発表した
(今までずっと食品添加物を避けるのが正義と信じてやってきたのに意味がないなんてわかっても止められない!という心理。それは動物として自然だけど理性で克服できるはず。)

  • プロバイオティクスとプレバイオティクスの安全性を決めるにはさらなるデータが必要

More data needed to determine safety of probiotics and prebiotics
16-Jul-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-07/acop-mdn071018.php
Annals of Internal Medicineに発表されたレビュー。プロバイオティクスやプレバイオティクスのRCT論文384の有害事象報告を吟味したところ、ほとんどが無い・不十分・不適切であった。

  • 減量手術はがんリスクに影響するかもしれない

Weight loss surgery may affect the risk of cancer
16-Jul-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-07/w-wls071618.php
1997-2012年のイングランドの病院統計データから、減量のための胃の部分切除や結紮などの手術を受けた8794人の肥満患者と手術を受けていない8794人の肥満患者を比べたところ、手術群ではホルモン関連がん(乳がん、内膜がん、前立腺がん)リスクが77%低かった。胃バイパス手術がホルモン関連がんリスクを最も大きく減らしたが(84%)、直腸結腸がんリスクは2倍以上高くなった。BJS (British Journal of Surgery)
(肥満手術症例がたくさんあることのほうに驚く)

  • 子どもの頃の感染は学校成績に永続的に影響するかもしれない

Childhood infections may have lasting effects on school performance
16-Jul-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-07/wkh-cim071618.php
子どもの頃に入院につながるような重感染症になることは、青年期の学業成績の低さに関連する。The Pediatric Infectious Disease Journalに発表された60万人近くのデンマークの子供たちについての全国調査。入院を必要としない軽度の感染症は影響がないようだった。

  • イチゴとトマトのアレルギー誘発性は品種による

Allergy potential of strawberries and tomatoes depends on the variety
13-Jul-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-07/tuom-apo071318.php
PLOS ONEと Nutrientsに発表された二つの論文で各種品種のアレルゲンとなるタンパク質の量を、栽培法や加工法による変化も含めて調べている。加熱はアレルギー誘発性を下げる場合があるが栽培法(慣行か有機か)はあまり影響ない。

  • 新しい試験が土壌の窒素量を測定できる

USDA ARS
New Test Can Determine Nitrogen Levels in Soil
By Sharon Durham July 16, 2018
https://www.ars.usda.gov/news-events/news/research-news/2018/new-test-can-determine-nitrogen-levels-in-soil/
土壌中の「利用可能な」窒素量を栽培前に測定して適切な施肥を促すための研究の紹介

Lancetエディトリアル
Food security in the Middle East and north Africa
The Lancet Vol.392 | Number 10142 | Jul 14, 2018
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)31563-0/fulltext
7月3日にOECDとFAOが発表したAgricultural Outlook 2018–2027報告によるとこの地域の農業は今や人口を支えられない。持続不可能な農業、紛争、政治的不安定、気候変動の中、約半分の食料や飲料が輸入されている。飢餓と栄養不良の多く残る中で一部の豊かな人たちは肥満が健康の主要リスク要因になっている。Agricultural Outlook 2018–2027ではこの地域の耕作可能な土地の約2/3が水を多く使う穀物の栽培に使われていることが食糧不足の一因となっていることなどを指摘し新しい農業技術の採用と作物の多様化を政府に薦めている。

  • ラットフリーPalmyra Atollの自生樹木は5000パーセント増えることを研究が示す

Study shows 5,000 percent increase in native trees on rat-free Palmyra Atoll
17-Jul-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-07/ic-ss5071718.php
PLOS ONEに発表された新しい研究はハワイの南1000マイルの野生生物保護区Palmyra Atollからラットを駆除したところ自生樹木に劇的な良い影響があったことを示す。
駆除する前は侵入ラットが種や芽、海鳥の卵やひよこを食べていた

Early supper associated with lower risk of breast and prostate cancer
17-Jul-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-07/bifg-esa071218.php
早い時間(午後9時より前)に夕食をとるあるいは寝少なくとも2時間前にとることが、10時以降にとるあるいは食べてすぐ寝る人に比べて乳がん前立腺がんのリスクの低さと関連する。International Journal of Cancerに発表されたスペインの研究。

  • オメガ3サプリメントの心臓や血管の健康への利点はほとんどあるいは全くない

Omega 3 supplements have little or no heart or vascular health benefit
17-Jul-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-07/uoea-o3s071718.php
新しいコクランレビューの結論はオメガ3サプリメントが心疾患や脳卒中や死亡リスクを減らすという信念に疑問を提示する
新しいコクラン系統的レビューでは112059人を含む79のRCTの結果を組み合わせ、そのうち25の研究が質が高く信頼性が高いと評価された。参加者は北米、欧州、豪州、アジアの男女で、健康な人と病気のある人を含む。通常の摂取量に加えてオメガ3脂肪を少なくとも1年間多く摂っている。調べたアウトカムのほとんどで長鎖オメガ3摂取量を増やすことは利益がほとんどあるいは全くなかった。体重や肥満度にもおそらく影響しない。
主著者のLee Hooper博士は「我々は一般的な信念に反するこのレビューの知見を確信している」という。
(予備的研究の知見が質の高い研究では否定されるのは良くあること。時代とともにベースラインの人々の健康状態も変わるので必ずしも初期の知見が間違っているというわけでもない。問題はどんなにしっかりした科学的根拠があってもサプリのマーケティングに負けるということ。)