食品安全情報blog過去記事

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論文

Notes from the Field: Occupational Carbon Monoxide Exposure in an Industrial Kitchen Facility ― Wisconsin, 2017
MMWR / July 20, 2018 / 67(28);786
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/67/wr/mm6728a5.htm?s_cid=mm6728a5_w
9月5日に冷凍アペタイザー製造業者から工場でのCOリークの疑いに関する電話を受け取った。最大CO濃度はガスを使った揚げ物器(フライヤー)のエリアでの313ppmだった。調査の結果バーナーを交換したばかりのフライヤーが発生源で、換気が不適切だった

  • アメリカ人の大麻使用への見解は既存の根拠が支持するよりずっと好意的

Americans' view of marijuana use is more favorable than existing evidence supports
23-Jul-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-07/acop-avo071718.php
Annals of Internal Medicine。不正確な一般の見解は商業活動が原因だろう

  • 研究者らが栄養レビューで人気のある食品の流行を探る

Researchers explore popular food trends in nutritional review
23-Jul-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-07/acoc-rep071918.php
Journal of the American College of Cardiologyに発表された米国心臓学会心血管系疾患予防のための栄養とライフスタイル作業委員会による栄養に関する二番目のペーパー。
現在の心臓に健康的な食生活のための栄養助言は、野菜や果物、全粒穀物が多くナッツをほどほどに、というものだが、乳製品や砂糖、コーヒー、アルコールについては患者が混乱する議論がある。
乳製品については有益か害があるかについて明確なコンセンサスがない。米国では飽和脂肪と塩の主な摂取源であるため制限すべきであろう。
添加された糖は可能な限り排除することを薦める。
豆類は料理に取り入れるように薦める。
コーヒーは高血圧と関連はない。緑茶と紅茶も砂糖とミルクを加えないなら安全。
アルコールについては単純ではなく低から中程度の飲酒と心血管系疾患リスク削減に関連があるものの、転倒、がんや肝疾患リスクがあるため、心臓のために飲酒をすることは薦めない
(乳製品の塩はチーズ。アメリカ人チーズ食べすぎ。大体何でも食べ過ぎだけれど)

Amateur weight-lifter develops heart disease after using powerful combination steroid
23-Jul-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-07/b-awd072018.php
BMJ Case Reportsに報告された60才男性の症例報告。テストステロンの合成誘導体であるアナボリック−アンドロゲニックステロイド(略称AAS)の使用で、肺炎の後重症呼吸困難でICUに入院した。患者はウエイトリフト競技のためにトレーニングをしていて高用量ステロイドと違法幹細胞注射をしていた。彼は非虚血性心筋症と診断された。
(「アマチュア」でも60になってもそこまでやる?)

  • 我々は生き方を変えれば世界を食べさせることができる

We can feed the world if we change our ways
23-Jul-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-07/lu-wc072318.php
Elementa, Science of the Anthropoceneに発表されたLancaster大学の新しい研究によると、現在の作物の収量で2050年の予想世界人口を養うことができる、ただし劇的に食事を変えれば。ほとんどの肉とミルクを諦めて現在動物の飼料にしている飼料用トウモロコシを食べる。

Natureニュース
Antibiotic resistance lurks below the surface of fish-farm ponds
23 July 2018
http://www.nature.com/articles/d41586-018-05787-6
水産養殖製品の摂取が耐性菌の保有と関連
中国でのmcr-1陽性(コリスチン耐性)大腸菌の調査。この遺伝子が養殖の多い地域と水産物を大量に食べるヒトで特に多い。Nature Microbiol. (2018)
(写真は中国でのカニの養殖。養殖甲殻類かぁ・・)

  • 肉の摂取、健康、そして環境

Meat consumption, health, and the environment
H. Charles J. Godfray et al.,
Science Vol 361, Issue 6399 20 July 2018 eaam5324
http://science.sciencemag.org/content/361/6399/eaam5324
レビュー
肉は栄養源として優れている。高所得国では肉の摂取量の多さとある種の疾患に関連がある、特に根拠が強いのは加工肉を多く食べることと直腸結腸がんリスクの増加である。
肉は植物由来食品より単位エネルギーあたりの排出量が多い。特に反芻動物は非反芻ほ乳類より排出量が多く鳥は通常ほ乳類より排出が少ない。農業は人類の活動のうち最も多く水(淡水)を使いその約1/3が家畜である。肉の生産はメタン、窒素、リンその他環境汚染物質の重要の発生源で生物多様性に影響する。
各国政府は汚染食品から健康を守ることと経済的目的のためには対応をするが、健康、環境、動物の福祉についてはそれほど合意形成はなされていない。
介入に反応する食行動の変化は遅いことが歴史から示唆されている。しかし社会常識は変えられるし変えるべきだ
(最も環境負荷の高い牛をたくさん食べている英国人に説教されたくはないとは思うけれど)

  • きれいな水への道のり

A path to clean water
Klaus Kümmerer et al.,
Science Vol 361, Issue 6399 20 July 2018 pp. 222-224
きれいな水のためには廃水処理能力の向上では限界があり、流入対策(環境中で完全に迅速に分解する化合物の開発)を考える必要がある

  • 化学物質混合物リスクを減らすために規制せよ

Regulate to reduce chemical mixture risk
Andreas Kortenkamp, Michael Faust
Science Vol 361, Issue 6399 20 July 2018 pp. 224-226
ヒトと野生生物は異なる発生源の異なる経路からの複数の化合物に、同時に及び続けて、常に暴露され続けている。そのような混合物の毒性が高いという科学的根拠は多く、規制は遅れている
(環境活動家二名による「展望」。
そだね〜食品が最大の化学物質混合物だけど規制は「遅れている」ものね〜)

  • 気候変動の季節毎の足跡

The seasonal fingerprint of climate change
William J. Randel
Science Vol 361, Issue 6399 20 July 2018 pp. 227-228
人類が原因の気候変動による影響を過去40年の衛星データから明らかにする研究をSanterらが今週号のScienceで報告している

Hackers easily fool artificial intelligences
Matthew Hutson
pp. 215
機械学習アルゴリズムを騙すのは非常に簡単

Selling stem cell ‘treatments’ as research: prospective customer perspectives from crowdfunding campaigns
Jeremy Snyder & Leigh Turner, Regenerative Medicine, Vol. 13, No. 4 |
https://www.futuremedicine.com/doi/10.2217/rme-2018-0007
オープンアクセス
研究だと言って根拠のない幹細胞治療のためのクラウドファンディングを募集している408件を検討した。全体として研究は信用できるもので、研究だから保険が効かない、科学の進歩に貢献するという主張が多かった。こうしたビジネスに対してNIHやFDAは懸念を表明している。合法的な研究と、根拠のない幹細胞治療にお金を出すことの違いについてのより良い情報が必要。
(治験に参加するのにお金を取られることはないし逆に法外な謝金をもらうこともない、というのは周知されるべき)

  • 治療可能ながん患者における補完医療の使用、がん標準療法の拒否と生存率

Complementary Medicine, Refusal of Conventional Cancer Therapy, and Survival Among Patients With Curable Cancers
Skyler B. Johnson, et al.,
JAMA Oncol. Published online July 19, 2018
https://jamanetwork.com/journals/jamaoncology/fullarticle/2687972
オープンアクセス
キーポイント
問い:がんの補完医療の使用に関連する患者の特徴はどんなものか、その補完医療との関連は治療順守や生存にどう関連するか?
知見:この1,901,815人のコホート研究で、補完医療の使用はいくつかの要因により変動し、それはがん標準療法の拒否と関連していた。そして補完医療を使っていない患者に比べて死亡リスクが2倍だった。
意味すること:補完医療を受けている患者はそれ以外のがん標準治療を拒否する可能性が高く、補完医療を全く使っていない患者より死亡リスクが高い;しかしながらこの生存率の差はすべての推奨されるがん標準治療への順守により調停可能であろう。
米国のデータを用いた研究で、「治療可能ながん」とは非転移性の乳がん前立腺がん、肺がん、直腸結腸がん。補完医療は「医師ではない人物の提供する有効性が証明されていないがん治療法」と定義(かなり悪質なもののみ)。全体の中で258人しかいない。