食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

SMC NZ

  • 合成薬物政策−専門家の反応

Synthetic drug policy – Expert Reaction
02 August 2018
https://www.sciencemediacentre.co.nz/2018/08/02/synthetic-drug-policy-expert-reaction/
金曜日に検視官が発表した暫定的数字によると6月以降合成薬物で40-45人が死亡した。
この問題について政府に対応を求める要請があり、SMCは専門家に尋ねた。
ウェリントン地域病院救急医療専門家Paul Quigley博士
需要側の問題
合成カンナビノイドの使用を減らす鍵は何が需要を増やしているのかを知ることである。ユーザーに尋ねると彼らは合成大麻を吸うのが楽しいわけではないと言う。また害があることも知っている。それなのに使い続けている。理由のひとつは確実に依存性である。非常に強いために簡単に依存する。合成大麻の使用者は代用品が手に入らないという。天然の大麻のほうが高価で入手が困難だという(合成大麻に比べて)。ただし調査は不十分である
供給側
合成大麻は儲けが非常に大きく危険性が低い(罰則が軽い)ことが供給が多い理由である。合成カンナビノイドは依存性があり社会に有害で直接的に死亡など健康被害に関連するためクラスA1薬物の基準を満たすが、クラスAに分類すると使用者が起訴されることになる。このため薬物誤用防止法の改定が必要である。使用者を犯罪者にしないことと製造や販売者への罰則を強化する必要がある。こうした薬物の多くが闇サイトやメールで輸入/入手されている。政府のインターネット監視と検疫強化が必要である。
AUT大学健康環境科学部前副総長で学部長、心理学と公衆衛生教授Max Abbott教授
短期間に信じられない数の人が死んでいる。私の見解は向精神薬物法導入時と同じで、大麻所持と使用を合法化すべきというものである。大麻で死んだ人を知らない。もちろん大麻には害がないわけではない、ただそれはタバコやアルコールや合成大麻にくらべると僅かである。大麻や薬物への教育を伴う必要がある。
薬物禁止は単純に効果がなかった。だから薬物に囚われた人を刑務所に入れるのではなく助けよう
Massey大学保健学部SHORE & Whariki研究センターChris Wilkins准教授
新しい強力な合成カンナビノイドに対応して政治的関心が高まったことは歓迎できる。合成カンナビノイドの膨大な数と現れるスピード、多様性、健康リスクに関する研究の不足を考えると相当な課題である
(むしろ何故日本は厳罰で抑制できているのか、を調べたくならない?肥満と同じような理由がある気がする)

  • NZの鶏の福祉基準−専門家のQ&A

Chicken welfare standards in NZ – Expert Q&A
Published: 01 August 2018
https://www.sciencemediacentre.co.nz/2018/08/01/chicken-welfare-standards-in-nz/
今週初めにどぎつい動画が出回ったことからニュージーランドの食用鶏の飼育基準に疑問が提示されている。この動画を公開した動物愛護団体はこの農場での鶏の扱いについて企業を起訴すべきだと主張している。一次産業省の職員がHelensville農場を金曜日に訪れ、また動画のレビューを行っている。
SMCは専門家に尋ねた
Massey大学獣医学部動物の福祉科学と生命倫理センター共同センター長Ngaio Beausoleil准教授
NZでは肉用鶏の動物の福祉基準はどのようにつくられた?
現状肉用鶏の飼育密度やその他の畜産上の状況について「規制」は存在しない(つまり動物福祉法のもとで直接の刑罰につながるような執行可能な規制はない)。2012年に概要が提示された福祉基準(肉用鶏)に最低基準のみがある。科学的知見と優良規範を反映した最低基準と推奨優良規範が福祉基準で概要を示されている。それらは地域の来たいと科学的知見と技術の進歩により修正できるようになっている。
最小基準に違反するとどうなる?
最小基準は直接の強制力はない。動物福祉法違反で誰かが起訴されたときに関連基準の最小基準に従っていないという根拠は起訴を支持するために使われるかもしれない
SPCA Blue Tick of Farming Welfareガイドラインとはどう違う?
SPCA Blue Tick of Farming Welfare基準は戸外に出る鳥にのみ当てはめられる(例えば放し飼い)ので完全室内飼い肉用鶏にはあてはまらない。
戸外に出る鳥にはさらに他の多数の基準がある。飼育密度についてはSPCA Blue Tick基準では2012年福祉基準より少ない密度を要求している−34kg/m2 vs. max 38kg 生体重量/m2。他に毎日つつきによる怪我を監視しそれを修正する対応をとるなどの必要性がある
Tegel’s鶏農場のひとつでDirect Animal Actionが撮影した動画の状態は基準についてどうか?
病気や怪我、激しく衰弱した鶏は毎日監視してみつけたらすぐ治療するか人道的に屠殺し死んだあるいは殺した動物は毎日取り除かなければならない。これを行うためには病気や怪我を見分ける十分な知識と経験が必要である。

ニュージーランド家禽業界獣医学者Kerry Mulqueen
獣医師としてDirect Animal Actionが撮影した動画を見てどう思う?
3万羽以上を飼育している鶏小屋には死亡する鳥もいるだろう。養鶏家は毎日あるいは一日二回鳥を監視しみつけたらすぐ取り除く。この動画は死んだ、あるいは排除すべき鳥だけを強調している。養鶏家の監視のタイミングによってはこうした鳥が存在するだろう。
夜間は見回りをしないのでこの時間に死亡や問題が起こると、朝に排除される。この動画は二つの異なる小屋での年齢の異なる鶏をミックスしている。同じ小屋には年齢の異なる鶏はいない。
こうした飼育状況は標準的なものか?
鶏小屋には死ぬ動物も屠殺する必要のある動物もいる。養鶏家はそれらを毎日監視して排除することを求められている。この動画では死んだ鶏も屠殺する必要のある鶏も写っているが私はこの農家の監視頻度を知らない。
ニュージーランドの企業の食用鶏福祉に関する世界的水準でのレベルはどのくらい?
NZは高いランクにある。小屋の死亡率は3%以内である。
Helensville農場でのバイオセキュリティ違反の影響は?
バイオセキュリティの要求は鶏の健康と福祉のためだけではなく食品安全問題でもある。履き物を代えて手を洗うことなく小屋に人を入れることはカンピロバクターを導入する可能性があり食品安全上の問題になる

(問題の発表はこれかな
https://www.directanimalaction.org.nz/index.php/2018/07/29/tegel-exposed-in-shocking-animal-welfare-breaches-as-mega-farm-stalls/
ブロイラーが早く育つのが動物の権利違反だと主張する団体と養鶏業界が理性的に話あえる気がしない)

  • EU裁判所が遺伝子編集植物にGMO法が適用されると判断−専門家の反応

EU court rules GMO laws apply to gene-edited plants – Expert Reaction
Published: 26 July 2018
https://www.sciencemediacentre.co.nz/2018/07/26/eu-court-rules-gmo-laws-apply-to-gene-edited-plants-expert-reaction/
欧州の最高裁判所が遺伝子編集作物はGMO同様に厳しく規制すべきと判断した
SMCは専門家の意見を集めた
Genomics Aotearoa部長とオタゴ大学教授Peter Dearden
EUの判断はEUで遺伝子編集技術を用いて新しい作物を開発している人たちにとっては大きな打撃だろう。ここニュージーランドでは既にそのような決定がなされているようでEUの判断はここにはほとんど影響しないだろう。
問題は、我々とEUは、成果物ではなく技術を規制しようとしている、ということである。遺伝子編集は標準的突然変異誘発方法より遥かに正確な方法である。より効果的で害が少ない、より特異的な方法が、最も厳しく規制されているのは不幸なことである。最終的に、調べなければならないのは放出される生物のリスクとベネフィットである。どうやって作られたかよりそのほうがずっと重要である。
私やEUの同僚が心配しているのは、こうした決定がNZやEUの遺伝子編集技術の革新を止めるだろうことである。うまく使い、注意深く評価し適切に規制すればNZの健康と農業と保全に大いに役立つだろう技術を使う能力を我々は無くすだろう。
Te Apārangi王立学会遺伝子編集委員会共同議長でMassey大学教授Barry Scott
非常にがっかりした。遺伝子編集と古い技術の相当な違いが考慮されていないようだ。新しい技術に古い規制をあてはめるのは科学的知見の進歩を考慮していない。依然として「技術ベースの」規制のままである。しっかりしたリスク管理の基本になるのは「結果に基づく」規制である。
このような規制は革新と開発を抑制し農業部門が急速に変化する環境に適応することを非常に困難にし気候変動や新しい病気などの現実的食糧安全保障リスクを大きくする
植物と食品研究所新規栽培品種革新科学総監督Kieran Elborough博士
この裁判所の判断はある技術が既存の規制にあてはめられるかどうかについての決定で、こうした技術の安全性や有効性を詳細に調べた科学論文ではないことを明確にすることが重要である。押収裁判所の決定は押収でこの技術がどう規制されるかをあつかっている。これは増加する人口と気候変動に直面して食糧安全保障や持続可能性のような重要な問題への新しい解決方法になる可能性のあるものに規制機関が直面する課題の例である。
こうした新しい技術を制限するあるいは可能にする規制が世界中でどうつくられていくのかを見るのは興味深いだろう。

UK SMCから
カナダ世界食糧安全保障研究所CEO Maurice Moloneykyoujyu
この問題について数ヶ月前に出されたChief Advocate Bobekの意見を考えるとこの判定は驚きである。Advocate Bobekは科学的根拠を用いて論理的結論を出した。今回の裁判所の判断は論理的に馬鹿げていてabsurd、より正確な現代的技術のほうが無作為突然変異よりリスクが高いと想定している。さらに製品の安全性について製品そのものよりも作った方法のほうが重要だという既に否定された考えを繰り返している。
これはEUにとって、革新にとって、そしてより広い意味での世界の食糧安全保障にとって現実的後退である。世界的取引にもさらなる障害となるだろう。EU全体の生物学研究にもきっと大きな打撃になるだろう。
John Innes センターグループ長Cathie Martin教授
この判定のより広範な影響を指摘することが重要である。この判定は開発された品種の安全性評価を無視して技術だけを判断している。つまり突然変異誘発により作られた高収量の作物は、古典的方法だろうと新規だろうと導入できないだろう。これは欧州の植物交配に膨大な負の影響を与えている。
John Innes センター作物遺伝学部作物形質転換グループWendy Harwood教授
我々の地球上にある全ての植物は進化の過程で突然変異がおこったからここにある。今のような人間の社会は、食用作物の改良のための突然変異の意図的選択に依存している。
突然変異でつくられた生物は全てGMOで従ってGMO指令に従うべきであるという欧州司法裁判所の意見は、作物の改良のための価値ある新しい技術を使うことを後退させる残念なものである。長く安全に使われてきた古い突然変異誘発技術が例外となる。同じ結果は新しい早いより正確な技術でできるのに。違う方法で作られた同じ植物に異なる規制を当てはめるのは科学的根拠に基づいた論理的アプローチではない。この決定は大きな負の影響を与える可能性がある
ケンブリッジ大学Sainsbury研究室部長Ottoline Leyser教授
この判断は、除草剤耐性種子品種が、作られた方法にかかわらず同じ環境リスクがあるという主張で裁判になったためになされた。私はこの主張には合意する。我々はリスクに基づいた規制枠組みを必要とする。それは全ての交配技術を含むべきだ。天然に生じるものは自動的に安全だという考えは擁護できない。GMOGMOでないかの区別は問題ではない。
Heinrich-Heine-Universität Düsseldorf分子生理学研究所Sarah Schmidt博士
この判断は欧州の植物バイオテクノロジーに致命的打撃である。
Aberystwyth大学植物交配トランスレーショナルゲノミクス教授Huw Jones教授
私はこの判断にショックを受けた。その帰結は?
EUは多くの国に遅れをとるだろう。産地では普通の食品や飼料がEUに到着したとたん、違法なGMOになるだろう。
(除草剤も殺虫剤もダメな上に新品種の開発もダメだそうなので、欧州は農業できないんじゃないか?多分観光農園や趣味の家庭菜園で生活できると思ってるんだろう。)

  • 食品包装の砂糖表示方法について−専門家の反応

Sugar labelling options for food packaging – Expert Reaction
Published: 25 July 2018
https://www.sciencemediacentre.co.nz/2018/07/25/sugar-labelling-options-for-food-packaging-expert-reaction/
ニュージーランドとオーストラリアで販売される食品や飲料の包装への砂糖の表示規則について、トランスタスマン食品規制政策担当機関がパブリックコメントを募集している。
相互に排他的ではない7つの選択肢が検討されている
1.現状維持
2.砂糖の表示情報の読み方や解釈方法の教育
3.砂糖ベースの成分を明確にするため成分表示の表現を変える
4.栄養成分表示に添加された糖の量を表示する
5.添加された糖の多い食品にはその旨を示す
6.一食あたりの砂糖および/又は添加された糖の量について画像で表示する
7.添加された糖の含量についてのウェブ情報へのリンクを示す
SMCはこれらについての専門家の意見を集めた
国立健康革新研究所(NIHI)、オークランド大学Cliona Ni Mhurchu教授
添加された糖は肥満と虫歯の主要寄与因子でニュージーランド人の約半分の成人はWHOの添加された糖の摂取量ガイドラインを超過している。従ってこの意見募集はタイムリーである。提案された選択肢のうちで私が優先的に支持するのは以下である
・栄養成分表示に添加された糖の量を表示する
・成分表示の表現を改善する、特に添加された糖をまとめる
現在の食品表示では消費者は添加された糖と天然に存在するものを区別できない、あるいはどのくらい添加された糖がはいっているのかわからない。
また砂糖の多い食品への警告表示も支持する、特に砂糖入り飲料。
しかしながらニュージーランド人の食事で心配なのは砂糖だけではなく、健康スター格付けとともに働く選択肢を選ぶ必要がある。また食品表示はより良い食生活のための特効薬でもない。政府は豪州や英国で行われているようなより構造的な食品の組成変更計画に倣うべきだ。
教育省主任健康栄養アドバイザーでAUT公衆衛生教授Grant Schofield
砂糖の表示については私は包装表面への全ての遊離の糖の義務表示を提唱している。それは理想的にはティースプーンの絵と大きな文字でグラム数を書くものだ。それは6番目の選択肢で、それ以外はあまり効果がないだろう。
添加された糖だけを表示すると主張する人もいるが人体は添加されたのかどうかは区別しない。健康スター格付けは既に暗礁に乗り上げている。脂肪と塩と砂糖を組み合わせるアルゴリズムは欠陥がある。食品企業が我々を騙した。例えば非常に砂糖の多い食品でも4+の健康スターがつけられる。任意であることと企業が主導することも問題がある。食品から排除したいのは砂糖で、それに集中して明確にしよう。
AUT食品科学教授Owen Young
現在の表示はしばしば不明確である。私は7つの選択肢のうち2(教育)、6(画像)、7(デジタルリンク)変法を好む。
オークランド大学疫学上級講師でFIZZの広報担当Simon Thornley
消費者が食品の砂糖含量を知る必要は絶対的にある−特にしばしば「ヘルシー」と考えられているフルーツジュースや朝食シリアルのようなものの。私は画像と数字による表示の6番を好む。それに砂糖の摂取量を減らすようにという公衆衛生メッセージを伴う。