食品安全情報blog過去記事

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UK SMC

  • 胎児期のPBDE暴露と尿道下裂を調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at exposure to PBDEs in the womb and risk of hypospadias
July 30, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-exposure-to-pbdes-in-the-womb-and-risk-of-hypospadias/
JAMA Pediatricsに発表された研究で、母親の毛髪で測定したポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)への子宮内暴露と尿道下裂リスク増加の関連を調べた
RMIT大学分析化学准教授Oliver Jones博士
これは興味深い論文である。もちろん関連があることは因果関係ではなく、この種の研究の全てが同じような結果でもない。この場合研究は注意深く行われているようだ。しかし限界のひとつは全ての患者がひとつの尿道下裂専門病院の患者であるということである。従って一般人にはあてはまらないかもしれない。また代理指標として母親の毛髪を測定しているが実際の暴露量は不明である。
またPBDEはストックホルム条約に2017年に加えられたため濃度は今後下がるだろう。
Bristol大学小児および周産期疫学名誉教授Jean Golding教授
このプロジェクトは重要で著者らは最近尿道下裂の子どもを出産した女性の毛髪中化学物質濃度と対照群を比較している。しかしこの研究の限界もある。1)対照群の数が症例より相当少ない(64対152)。2)対照が同様の集団でない3)最初の探索のための観察研究なので別の試験で確認する必要がある
QMUL病理学名誉教授Colin Berry卿
注意深く行われた研究のようだが因果推定に驚くべき飛躍がある。対照群も試験群も信頼区間は広く、重なる。より明確に尿道下裂に関連する食事中の大豆への言及がない。
生殖健康MRCセンター名誉小児内分泌相談医Rod Mitchell博士
この比較的小規模の研究は男の子の尿道下裂と母親のPBDE濃度の関連を記述している。出産後3-18か月の母親の毛髪のPBDEが妊娠中のPBDE暴露を反映しているのかどうかは不明である。これまでの妊娠中の血液で測定した研究では関連はなかった。この研究により妊娠中の女性への助言が変わることはない
Cambridge大学小児科名誉教授Ieuan Hughes教授
この研究デザインと結果は説得力がない

  • コーヒーについての科学的情報研究所のコーヒー、カフェイン、死亡率、寿命円卓報告書への専門家の反応

expert reaction to roundtable report from the Institute for Scientific Information on Coffee about coffee, caffeine, mortality and life expectancy
August 1, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-roundtable-report-from-the-institute-for-scientific-information-on-coffee-about-coffee-caffeine-mortality-and-life-expectancy/
Southampton大学公衆衛生とプライマリーケアと集団科学アカデミックユニット登録専門家Robin Poole博士
この報告はコーヒーと死亡リスクの低さの関連についての、多くがこれまで発表された既存研究についての議論の要約である。一部の専門家が未発表データに言及していて批判できないが、この関連(ただし因果関係ではない)は概ね確立されている。ただしこうした関連は多くが観察研究からであり、我々はまだコーヒーを飲むと長生きするとは断言できない。この報告では喫煙を交絡要因として詳細に議論している。喫煙を考慮しないと利益があるという関連の大きさが減るため、コーヒーの利益はもっと大きいだろうと主張されている。しかし交絡要因には別方向にも作用するものがあり、例えば収入や健康など、それが見かけ上の利益として見えている場合もあり得る。
この報告書は2型糖尿病や心血管系疾患リスクのある人にコーヒーが薦められると示唆するが私はまだその段階ではないと思う

  • 長期断酒と大量飲酒の認知症との関連への専門家の反応

expert reaction to long term abstinence and heavy drinking associated with dementia
August 1, 2018
expert-reaction-to-long-term-abstinence-and-heavy-drinking-associated-with-dementia
The BMJに発表された新しい前向きコホート研究で飲酒と認知症リスクについて検討している
Imperial College London理論免疫学研究員David Vickers博士
プレスリリースではこの研究による根拠は決定的だとは言い難いと賢明に述べているが、私はこの関連の強度は主張されているほど堅固だとは思わない。著者が図2で示したデータの信頼区間は非常に広い。これは認知症の帰結の大きな違いを反映する。さらに禁酒群と週に14単位以上飲む群はコホート全体の比較的小さい割合である。従ってこれらの群で見られた認知症が多いという結果は小集団だからである可能性が高い。
アルツハイマー研究UK研究部長Sara Imarisio博士
この研究の強みは中年期に飲酒習慣の変化を追跡できたことである。成人初期のことはわからず、全く飲まない人がかつて飲んでいたかもしれない。また自主申告に基づくため過少申告の可能性がある
Exeter医科大学加齢関連疾患教授Clive Ballard教授
週に14ユニット以上飲む人の認知症リスク増加を示した。公衆衛生対策としての飲酒対策の重要性を再確認した。全く飲まない人のリスク増加は解釈に注意が必要である。他の健康状態や文化の違いが反映されている可能性がある。
Nottingham大学認知症精神保健センター応用心理学准教授Katy Jones博士
この研究は現在の飲酒ガイドラインに従うことを支持する
Cambridge大学リスクの公衆理解のためのWinton教授David Spiegelhalter教授
この研究は全く飲まない人のほうがほどほどに飲む人よりリスクが増えるというもう一つの例である。その理由を理解することが重要である