食品安全情報blog過去記事

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Science 17 August 2018 Vol 361, Issue 6403

  • ニュース一覧

・判事が除草剤ががんの原因という(グリホサートの件)
・裁判所が殺虫剤につういてEPAを拒否
先週連邦控訴裁判所がEPAに、トランプ大統領の決定を覆して殺虫剤を使用禁止にするよう命令した。2015年のオバマ政権下でEPAは、食品中に残留するクロルピリホスと子どもの神経発達障害と関連があるという研究からクロルピリホスを禁止することを決定した。2017年3月にScott Pruitt EPA長官が禁止申請を却下していた。
・日本の医科大学が男性を優遇
YouTubeが科学の動画を明確に
地球温暖化懐疑論やワクチン拒否、アポロは月に行っていないなどの陰謀論対策キャンペーンを強化

Detailed genome maps paths to better wheat
Science 17 Aug 2018:
Vol. 361, Issue 6403, pp. 635
世界で最も広く栽培されている穀物は同時に最も改良が難しいことがわかっている。1960年代の緑の革命で、植物交配者たちは収量を大幅に増やしたが、それ以降、伝統的交配でも遺伝子工学でも改良はおそろしく遅い。そのゲノムが悪魔のように複雑だからである。10年にもわたる努力のおかげで、ついに小麦ゲノムが明らかになり、収量を増やしたりアレルギーになりにくくしたりできる遺伝子の研究が進むだろう
(今週号の表紙が小麦。小麦のゲノムの構造は昔の人がどれだけ品種改良を重ねてきたのかの足跡でもあるけれど、これだけむちゃくちゃにしても大丈夫なんだな、という例でもある。今ならもっとスマートにやれるんだろうけれど、今度は社会が阻止する)

  • 特集

嘘の波
Tide of lies
Kai Kupferschmidt
Science 17 Aug 2018: Vol. 361, Issue 6403, pp. 636-641
科学的偽装の中心にいる研究者は、それを暴いた科学者にとって謎のまま
(イラストは北斎インスパイアだけど不思議の国ニッポンに外国の研究者は困惑しているという感じ)
日本の南の病院の骨の研究者であるYoshihiro Satoが国際雑誌に発表した数十の臨床試験のデータを偽造していたことを発見した英国Aberdeen大学のAlison Avenellは、Yoshihiro Satoが死んだと聞いて嘘だと思った。それから自殺?と思った。3年前に理研Yoshiki Sasaiがスキャンダルで自殺していたから。
Satoの詐欺は科学史に残る最大級のもので影響も大きい。しかしどうしてこんなにも多くの研究を偽装したのかが理解できない。共著者の役割についても困惑する。日本の学会はどうやったら200以上もの論文を、その多くが何人もの研究者が何年もかかるようなものを、出せるのか疑問を抱かなかったのか?
偽装を検出する科学的手段はあるが、個人的文化的要因はわからない。そこで最終的にSatoが最後の13年を過ごした九州の小さな町TagawaのMitate病院に至る探求の旅をした。
I 疑い
II 根拠
III 非難
IV 波紋
V 謎
VI エピローグ
(日本に来て、最も重要な共著者である日本骨粗鬆症学会理事だった慶応大学Jun Iwamotoに会おうとして会えなかったが弁護士に会っている
日本ではギフトオーサーシップやゴーストオーサーが普通だとか
Retraction Watchの取り下げ論文数トップ10のうちの半分が日本人(トップはYoshitaka Fujii, 183論文取り下げ)だとか情けない話が。教授が絶対権力者で誰も反論できないとかほとんど医学部だけだと思うけれど。
病院は取材拒否。死因は自殺らしい)

  • 新しいいじめ事例がMax Planck学会を動揺させる

New case of alleged bullying rocks the Max Planck Society
Science 17 Aug 2018: Vol. 361, Issue 6403, pp. 630-631
天体物理学部長のGuinevere Kauffmannが学生をいじめて人種差別的発言をしていたというニュースに続いて認知と脳科学研究所長で有名な神経科学者Tania Singerが同僚をいじめ威嚇していたことが報道された。彼女は世界で最も有名な「共感」の専門家の一人である。特に妊娠女性をいじめていた