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FDAはカリフォルニア州のがん警告法(cancer warning law)からコーヒーを除外することを支持する

Statement from FDA Commissioner Scott Gottlieb, M.D., on FDA’s support for exempting coffee from California’s cancer warning law
August 29, 2018
https://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm618883.htm
FDAは、州法によって、正しくなく人を誤らせるような記載を食品に表記することが求められるような場合、介入に踏み切る場合がある。
最近、裁判所において、カリフォルニア州法が、コーヒーにアクリルアミドと呼ばれる化学物質が存在することを理由として、カリフォルニア州で販売されるコーヒーにがんの警告表記を求めること(州法修正案65)を認める判決を下した。しかしこの場合、コーヒーにアクリルアミドが存在するという情報を消費者に提示する以上に、消費者に誤解を招く可能性が高い。
アクリルアミドは、炒める、火を通す、オーブンで焼くといった高温調理の間に多くの食品中で生成される可能性がある。食品中のアクリルアミドは、食品中に天然で存在する糖類やアミノ酸から生成する。包装や環境から入り込む類のものではない。コーヒーでは豆を煎る間にアクリルアミドが生成する。高用量のアクリルアミドは動物における発がんと関連付けられているが、現在の科学では、コーヒーを飲んでも有意ながんのリスクは生じないことが示されている。この知見は、WHOのIARCによる包括的報告書にも反映されている。
良い知らせとして、修正案65を施行するカリフォルニア当局は、コーヒーを修正案65の対象から除外することを提案した。FDAは、この提案を強く支持する。FDAは今日付けで、カリフォルニア州環境保健有害性評価局に対し、コーヒーを除外する提案に対するFDAの支持表明を文書で送付した。
FDAがこうした立場を取るのは、FDAがこれまでにコーヒーとがんに関する最も新しい研究を注意深くレビューしてきており、その結果コーヒーにがん警告を付することは支持されなかったからである。I上述の文書にも書いたが、そのような警告は消費者にコーヒーを飲むことが健康危害をもたらすという誤解を与えてしまう。実際は健康に恩恵をもたらす可能性があるのにである。食品への誤解を招くラベル表記は、連邦食品医薬品化粧品法に違反する。いかなる州法も連邦法に違反する警告を食品に付することを求めることはできない。
強固で一貫性のある証拠により、健康な成人が適量のコーヒーを飲んでも、がんなどの主要な慢性疾患や早期死亡のリスクを上昇させることは無いことが示されており、コーヒーの消費が特定のがんのリスクを低減することを示唆する証拠も存在する。現行の食事ガイドラインでは、適量のコーヒー摂取(1日に3〜5杯もしくはカフェインとして最大400 mg/日)を組み入れている健康的食事パターンの例も提示されている。
実際には、修正案65に対してFDAが懸念を表明したのはこれが初めてではない。FDAカリフォルニア州に対し、食品におけるアクリルアミドの警告は、アクリルアミドを含む食品により生じるリスクについて消費者に誤解を与え、別の健康に有益でない食事に変更することを推進する懸念があると通告した。このとき最も問題視されたのは全粒粉食品であった。これらの食品の中にはアクリルアミドを含む可能性があるものがあることは認識していたが、全粒粉の摂取は、健康に有益であり栄養的にも優れている。全粒粉食品にがん警告ラベルを付することは、米国の消費者をがんのリスクを低減する可能性がある食品を含め、健康に有益な食品から遠ざけてしまう。
FDAは、2002年に食品中にアクリルアミドが見つかって以来、アクリルアミドに関して多くの活動を行ってきた。それらには、毒性学的研究、食品調査、暴露評価が含まれ、また業界向けには、食品生産中に生成するアクリルアミドを低減するためのガイダンスも発行した。アクリルアミドが食品に広範に存在していることを考慮すると、アクリルアミドへの暴露を完全に無くすことは実現的ではない。
食事から1つや2つの食品を取り除いても、アクリルアミドへの全体的な暴露量に有意な影響はもたらされない。それよりも、米国民向け食事ガイドライン(Dietary Guidelines for Americans) (2015〜2020年版)に沿った健康的な食事を摂るべきである。このガイドラインでは、果物、野菜、全粒粉、無脂肪牛乳あるいは低脂肪牛乳、乳製品が強く推奨され、低脂肪肉、家禽肉、魚、豆、卵およびナッツも推奨され、健康的な油の利用、飽和脂肪酸トランス脂肪酸、塩分および添加糖類の制限が推奨されている。
透明性があり科学に基づいた栄養情報を消費者に利用できるようにすることはFDAの任務の重要な要素である。そのために、この3月、多年度にわたる栄養改革戦略(Nutrition Innovation Strategy)を発表した。この改革は、劣悪な栄養状態により生じる慢性疾患、すなわち、肥満、糖尿病、心臓病、および様々ながんによる負荷を低減し、業界の改革の障壁を取り除くのに役立つ。
科学界では、コーヒーががんを引き起こすかどうかの問題に関し、相当な量の研究を行ってきており、それらの研究は一貫してコーヒーががんを引き起こすことを立証する根拠は不十分であることを明確にしており、それどころかいくつかのがんについてはコーヒーがリスクを低減する可能性を示唆している。
FDAは、消費者に科学に基づいた情報を提供することに懸命に取り組み、健康や栄養の向上のために努力している。また、FDAは、製品ラベルが食事の選択に必要な理解しやすい情報を、何よりも事実に基づいて提供していくことに今後も責任を持ってあたっていく。