食品安全情報blog過去記事

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おまけ

この記事で全粒穀物が話題になっていたのをあわせて思い出したこと
「良い食品、悪い食品」という単純化は勧められない
wedge.ismedia.jp/articles/-/13855

小学生のための副読本、「大麦の話」
http://www.zenbakuren.or.jp/whatsbarley/index.html
という食育副読本があって、その中で大麦の効能を宣伝している。
小学生にコレステロール低下作用があるので食べましょうと宣伝することにも疑問だし子どもを対象にした研究はしていない。
さらにその同じ本の中で精麦について説明している。日本人は加工度の高いものを好むらしく、外国ではほとんど見られない白いきれいな大麦を売っている。その食物繊維を減らした製品をご飯に混ぜて麦ご飯として食べる、のを薦めている。

ところでこの副読本の中で「FDAが大麦について効果を認めた」という記述があるのだがそれには
https://www.gpo.gov/fdsys/pkg/FR-2006-05-22/html/06-4703.htm
「全粒大麦を、1日量で最低3gのベータグルカン可溶性繊維を提供する量で」という前提条件がある。この条件は副読本には書いてない。

精麦と精白米の主な成分 (可食部100g中)
http://www.zenbakuren.or.jp/effect/index.html
によると水溶性繊維3gというと押麦50g相当、そしてこの押麦というのは加工度の少ないもの。多分給食のご飯に白い麦を混ぜた程度では摂れない。
実は全粒穀物にも定義があって
Draft Guidance for Industry and FDA Staff: Whole Grain Label Statements
https://www.fda.gov/Food/GuidanceRegulation/GuidanceDocumentsRegulatoryInformation/ucm059088.htm
whole grainの定義
Cereal grains that consist of the intact, ground, cracked or flaked caryopsis, whose principal anatomical components - the starchy endosperm, germ and bran - are present in the same relative proportions as they exist in the intact caryopsis
つまり加工した時に繊維分を減らしたら全粒ではない。

コレステロールを下げる」という効果を宣伝したいならこういう条件は必須なのだが。
もちろん食物繊維の摂取源とはなりうるし選択肢を拡げるという意味でも麦を食べることを薦めるのは構わないけれど、「コレステロールを下げる」はダメだと思う。

佐々木先生同様、中澤先生も言っている。
細部をないがしろにしてはいけない。もともと栄養研究はRCTではないので、「系統的レビューだから信頼性が高い」とは全く言えない。

書評:津川友介『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』東洋経済新報社
2018年5月18日 
http://minato.sip21c.org/bookreview/evidence-based-diet.html