食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 健康な高齢者のアスピリン使用と出血と障害のない生存と心血管系イベントと死亡を調べた3つの研究への専門家の反応

SMC UK
expert reaction to three studies looking at aspirin use in healthy old people and bleeding, disability-free survival, cardiovascular events and death
September 17, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-three-studies-looking-at-aspirin-use-in-healthy-old-people-and-bleeding-disability-free-survival-cardiovascular-events-and-death/
高齢者のアスピリン常用の影響についての報告がNEJMに発表された
London School of Hygiene and Tropical Medicine薬理疫学教授Stephen Evans教授
これら3報は大規模で質の高い研究の複数の解析である。著者が言うように、死蔵発作の既往症のある人や心疾患のある人でのアスピリンの有用性の根拠はあるが、そうではない健康な人での予防の根拠は明確ではなかった。この研究は真に意味のある比較を可能にしている。この集団は一般的な人よりがんや死亡率が少ない健康な高齢者である。病気のある人は除外されている。予想通りアスピリン群で出血は増加した。心疾患への僅かな利益より全体としての他の病気の増加が上回り、心疾患のない人にとっては低用量アスピリンのメリットはない。この研究での驚くべき知見は、大腸がんを含むがんによる死亡率が少し増えたことである。これまでの研究ではそのようなことは示されておらず、一部の研究で大腸がんの減少が見られていた。著者は正しく、予期せぬ知見については注意深く扱っているが、同時に健康な人へのアスピリンの利益は最良でも限定的で、害のある可能性があり、その害は73才を超えると増える可能性があることを示している。
MHRAの医薬品監視とリスク管理部June Raine博士
全ての医薬品の安全性は非常に重要で常に見直される。我々の優先課題は医薬品の利益がリスクを上回ることを確保することである。どんなものでも意味のある情報は注意深くレビューされ評価される。
脳卒中認知症予防センター長でOxford大学Nuffield臨床神経科学部神経学研究実施部長Peter Rothwell教授
この研究には重要な限界はあるか?
最初にこれは一次予防の研究である。二次予防にはアスピリンは推奨されている。二つ目は既にアスピリンを何年も使用している高齢者が、止めるべきかどうかはわからない。しかし新たにアスピリンを始めようとするこの年齢の人には良い根拠を提供する。三つ目はこの試験は予定より少し早く終了し、フォローアップが継続される
この研究は一次予防目的でのアスピリンの使用にこれまで欠けていた決定的根拠を提供するか?
この結果は70才以降の健康な人がアスピリンを使用し始めることのリスクとベネフィットのバランスについての最も信頼できる根拠を提供する。これまでこの年齢の人について信頼できる結論を出すには人数が少なすぎた。
この試験の重要なメッセージは?
70才以上の健康な人が約5年アスピリンを使用しても死亡率や障害、認知症について全体的利益はない。

(超薬アスピリン―スーパードラッグへの道 (平凡社新書) 新書 – 2001/9/1
という本が時代の雰囲気を伝えているかな)

  • オーストラリア産イチゴから針がみつかった−専門家の反応

SMC NZ
Needles found in Australian strawberries – Expert Reaction
18 September 2018
https://www.sciencemediacentre.co.nz/2018/09/18/needles-found-in-australian-strawberries-expert-reaction/
ニュージーランドの主要スーパーマーケットチェーン2つが、クイーンズランド産イチゴから縫い針がみつかったためオーストラリア産イチゴの販売を停止した
針がみつかったイチゴは6州全てで見つかっており、オーストラリア政府がこの事件について連邦調査を命令した。SMCはサプライチェーンの専門家に尋ねた
Massey大学Turiteaキャンパス品質システム教授Nigel Grigg教授
2013年の欧州とアイルランドでのウマ肉スキャンダルで明らかなように、サプライチェーンがより複雑で国際化すればするほどチェーンのなかで製品に何がおこるのかを効果的に管理するのが難しくなる。時間とともにほとんどのサプライチェーンは複数の中間団体を介するようになり、それぞれがその時点での質の責任者である。しかしながらどんなチェーンでも最も弱いところの強さでしかなく、システム全体の厳密さを確保するのがますます困難になっている。工場では工程管理や検出システムがよく運営されているが、生産者から小売店、顧客まで動く間に意図的に製品に遺物を混入しようとする個人にとってはたくさんのチャンスがある。意図的怠慢や違法行為は防ぐことがほぼ不可能である。航空機での旅行の時のような全ての製品を空港や港でチェックする方法しかないだろうがそれはコストがかかりすぎる。そして全てのあり得る汚染物質を同定する一連の検査方法は想像するのが難しい。
国内及び国際サプライチェーンのフードテロや違法行為は新しいことではなく永遠に無くならない脅威である。消費者が注意することもまた意味のある役割を果たす。

  • 根拠に基づいた医学の団体が共同創設者の除籍で混乱

Scienceニュース
Evidence-based medicine group in turmoil after expulsion of co-founder
By Martin EnserinkSep. 16, 2018
http://www.sciencemag.org/news/2018/09/evidence-based-medicine-group-turmoil-after-expulsion-co-founder
コクランが、25周年の国際会合の前夜、創設者の一人に関する激しい議論で混乱している。先週後半、この団体の運営委員会のぎりぎり過半数が北欧コクランセンター長Peter Gøtzscheのコクラン会員資格の停止を決定した。コクランの信用を失墜させたという理由である。他の4人がそれに抗議して辞めた。Gøtzscheは金曜日に3ページの声明を発表し、コクランが「モラルガバナンスの危機に瀕している」と言う。Scienceの電話インタビューに対してGøtzscheは、コクランに資金提供している財団の一部が彼を排除するよう圧力をかけたのではないかと疑っているという。彼は製薬会社に対して極めて批判的見解を持っているためである。Gøtzscheはコクランが「ますます企業に優しい方向に」なっているという。そしてGøtzscheはコクランのHPVワクチンに好意的な解析に反対する広報活動を行っていて、コクランの解析が副作用を見過ごしていると主張しそれが反ワクチングループから称賛されている。Gøtzscheは2012年にMark Wilsonが来てからコクランが悪くなったという。
Wilsonと理事会の共同座長Martin Burton と Marguerite Kosterは今日のインタビュー要請には反応しなかったがコクランの広報に聞くよう指示した。広報からはまだ返事はもらっていないがコクランは土曜日に短い声明をウェブ掲載した。
Gøtzscheはコクランの内外に製薬業界への厳しい攻撃と役にたたないあるいは害のある医療介入への批判で広く知られている。彼は乳がん検診にマンモグラフィーを過剰に使用しているという本や製薬企業が組織的犯罪を行っているという本を書いている。そしてしばしばコクランにも批判的であった。

  • オーストラリアには気候変動方針がない−再び

Natureニュース
Australia has no climate-change policy — again
17 September 2018
https://www.nature.com/articles/d41586-018-06675-9
オーストラリアの新しい総理大臣は温室効果ガス排出削減方針を破棄した。気候科学者はこの動きは2015年パリ合意からの離脱を意味するという。米国に次いで2番目の、パリ合意離脱先進国になった。ただし次の選挙までの短期間である可能性がある

  • Myers–Briggsを作ったたたき上げの女性たち

Nature書評
The self-made women who created the Myers–Briggs
http://www.nature.com/articles/d41586-018-06614-8
S. Alexander Haslamがどうしてこの疑わしいパーソナリティ診断クイズが世界中に広まったのかについての物語を楽しむ
Merve Emreによる「パーソナリティーのブローカー:Myers–Briggsの奇妙な歴史とパーソナリティー検査の誕生」の書評