食品安全情報blog過去記事

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原子力事故後の甲状腺検診

Thyroid Health Monitoring after Nuclear Accidents
IARC Technical Publication No. 46
http://publications.iarc.fr/571
学際的国際専門家委員会による今後への助言。原子力災害のあった場所の近傍住人に甲状腺検診を行うべきかどうか、もし行うならどんなふうに、についてのテクニカルレポート
(抜粋)
福島第一原子力発電所の事故の後、人々の健康への恐怖や不安、特に甲状腺がんリスクについて、が高まった。その懸念に対応して子どもや若い人の甲状腺検査が福島健康管理調査の一部として行われた。放射線に暴露されると甲状腺がんになるリスクがあるということが広くしられるようになり、甲状腺がんへの人々の恐怖と、実施中の甲状腺検査への関心の高まりが、将来の事故の際の甲状腺検査をすべきかどうか、どうやって、という疑問につながった。
この文脈で、成人での甲状腺超音波検査を実施しているいくつかの国で観察されている見かけ上の甲状腺がんの増加に注目する必要がある。この現象は甲状腺検診の結果としての過剰診断(つまり、検査をしなければ検出されなかったであろう、あるいは生涯の間症状や死をおこすことはないであろう甲状腺がんを検出すること)と、検診の有無に関わらずほとんどの患者にとって非常に予後がよいことがわかっている甲状腺がんを早期に診断することにメリットはあるのか、という問題についての議論につながった。

科学的根拠を精査し、専門家委員会は以下の二つの助言を行う
助言1:原子力事故後の集団甲状腺検診(スクリーニング)はしない
 集団レベルでは害のほうが利益を上回る
助言2:原子力事故後はハイリスクの個人に対して長期甲状腺監視計画を提供することについて検討する
甲状腺監視(モニタリング)計画」とは健康リテラシー教育、参加者登録と甲状腺検査や臨床管理のデータ集中管理を含む。「ハイリスクの個人」とは、胎児期あるいは子どもや青少年の時期に甲状腺線量で100–500 mGy以上暴露された人。「甲状腺監視計画」は集団検診ではない、個人を対象にしたもので、甲状腺検査をするかどうかは本人や家族、病院などとが一緒に考えた上で決める(しなくてもいい)

(そんなに長くない報告書だし環境省の資金なので日本語でも出せば?大事なことが手短にたくさん書いてある。リスクが極めて小さいことを知っていても甲状腺検診をしろという要請に抗うことが実質的に不可能だったとか。ほんとに?)