食品安全情報blog過去記事

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SMC

SMC UK
expert reaction to study on vitamin D supplementation and bone health in adults
October 5, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-vitamin-d-supplementation-and-bone-health-in-adults/
Lancet Diabetes & Endocrinologyに発表された研究がビタミンDサプリメントは骨折や転倒を予防しないという
Oxford大学疫学と公衆衛生教授Robert Clarke博士
この報告は入手可能な全ての試験を含むが、中には参加者が少なすぎるものや用量、期間が不十分なものもある。そのため信頼性が欠けこの研究を根拠にビタミンDについての助言を変えるのは時期尚早である。現在進行中の5つの試験の結果を待つべきである。
Queen Mary University of London呼吸器感染と免疫学臨床教授Adrian Martineau教授
この研究の最大の限界は、サプリメントで最も利益があるだろうビタミンD濃度の低い人が少ないことである。またメタ解析のために個別データを入手することができなかった。この研究の著者もビタミンD濃度の低い人での補充は結果が異なる可能性があると書いている。PHEの助言は1日10マイクログラムのビタミンDである。この研究の知見はその助言を変えない
Birmingham大学代謝とシステム研究所副所長分子内分泌学教授で内分泌学会会員Martin Hewison教授
ほぼ全ての試験で、ビタミンDサプリメントが有効なのは欠乏の人のみであることが示されている

  • 低カロリー甘味料、腸内細菌、血糖管理についての学会要旨への専門家の反応

expert reaction to conference abstract on low-calorie sweeteners, gut bacteria and blood sugar control
October 5, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-conference-abstract-on-low-calorie-sweeteners-gut-bacteria-and-blood-sugar-control/
欧州糖尿病研究学会年次会合での発表要旨に関して
Weill Cornell Medicine Qatar医学部教授内分泌学会会員Stephen Atkin教授
低カロリー甘味料(LCS)と腸内細菌の変化についてはこれまでにも報告されている。腸内細菌が変わることがどうやって人体の糖の処理に直接影響するかどうかはわかっていない。LCS摂取が腸内細菌を変えて人体の糖の管理に影響することは以前報告されている。GLP1ホルモンの低下は新しい知見である。これが特定のLCSのせいなのかLCS一般の作用なのかはわからない。残念ながら要旨からはGLP1の変化についての正確な情報がわからない。
Exeter大学糖尿病と肥満上級講師Katarina Kos博士
人工甘味料と健康影響は医学研究の関心分野の一つである。この研究とは別に負の影響が懸念されてきた。今回学会で発表された研究の要旨は判断が難しい。脊髄反射はすべきではない。糖尿病が心配な人の最良の飲み物は水で変わりない
Glasgow大学代謝医学教授Naveed Sattar教授
この研究は良くできてはいるが一日に1-2本ダイエット飲料を飲むことと同じではない。二週間毎日ダイエット飲料を5缶飲むのと同じ程度を錠剤で摂っている。また腸内細菌の変化が健康にどういう意味があるのかは我々はまだ知らない。従ってこの研究は習慣を変える根拠にはならない。砂糖入りより甘味料のほうがましだろう。
Imperial College London内分泌と代謝教授で内分泌学会会員Kevin Murphy教授
興味深い研究であるが要旨からは変化の程度がわからない。多くの介入で腸内細菌が変化することは報告されているがそれが健康にどういう意味があるのかを理解するのは容易ではない。
(腸内細菌に影響するから○○かも、は流行だけど好きなように言ってるだけの場合が多い。)

  • オーストラリアがん評議会が「ラウンドアップ」のレビューを要請−専門家の反応

SMC NZ
Australian Cancer Council calls for review of ‘Round-up’ — Expert Reaction
Published: 09 October 2018
https://www.sciencemediacentre.co.nz/2018/10/09/australian-cancer-council-calls-for-review-of-round-up-expert-reaction/
オーストラリアがん評議会がグリホサートの独立レビューを要請していると報道されている。これは月曜日の夜のABCのドキュメンタリー、主にモンサントがグリホサートとがんの関連の根拠を隠蔽した可能性があるという内容の放送後にオーストラリアでメディアが広く取り上げている。オーストラリアSMCが専門家のコメントをもとめた。
西オーストラリアCurtin大学公衆衛生学部疫学教授Lin Fritschi教授
IARCは信頼できる団体でレビューは科学に基づいている
利益相反:グリホサートが発がん性であろうと判断したIARCワーキンググループのメンバー
アデレード大学医科学部医学部上級講師Ian Musgrave博士
グリホサートは豪州で最もよく使われている除草剤のひとつで、植物やある種の細菌しかもっていない酵素を標的にするため動物への毒性は低い。急性毒性は食塩より少しだけ毒性が低い。発がん性については議論が多く、IARCは2015年に「おそらくヒト発がん性」と分類したがIARCはどんな暴露量でも、極めてありそうにない量での発がん性の可能性を考える。その後EFSAやWHOの残留農薬中心グループ、APVMAは全て通常の使用量ではがんリスクにはならないと結論している。
最近の一人の男性の非ホジキンリンパ腫についてのグリホサート製剤が原因の可能性に関する裁判で議論が再燃した。二つ指摘したい。裁判は科学ではない。科学を重視しない判決はある。二つ目はIARCの発表後、大規模農業従事者健康研究の結果が出た。除草剤とがんに関連はないことを示した。
利益相反:Ian MusgraveはThe Conversationにこのドキュメンタリーについての記事を書いている
シドニー大学公衆衛生名誉教授、がん予防専門の独立コンサルタントBruce Armstrong名誉教授
私はがん評議会の呼びかけに賛成。IARCの分類は決定的ではないが政府は重大に受け止めるべきである
UQ臨床研究センターグループリーダーで認証毒性学者Richard Gordon博士
世界中でいくつかの独立した規制機関が包括的にグリホサートの安全性と発がん性についてレビューしてきた。適切な使用はヒト発がんリスクにならない。もし信頼できる新しい根拠が出てきたのならオーストラリアでレビューすることが正当化されるだろう。
メルボルン大学化学部環境化学者Ian Rae博士
オーストラリアでのレビュー以降たくさんのレビューが行われ結果は多様である。もしグリホサートに発がん性があったとしても極めて弱く、他の要因と区別できないだろう。APVMAがレビューするのが賢明だろう。