食品安全情報blog過去記事

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シイタケを食べる利益とリスク

Genuss mit unangenehmen Folgen
19.08.2004
http://www.bfr.bund.de/cms5w/sixcms/detail.php/5318
シイタケを食べると皮膚炎を起こす可能性がある
シイタケは、特に感受性の高い人には、食べた後で重い皮膚炎を起こすことがある。
シイタケ皮膚炎はシイタケを食べた数時間後に体・手足や首にムチで打たれたような発赤が出るもので、シイタケに含まれるレンチナンに対する過敏症と考えられる。これは調理が不十分なシイタケを食べることでできると考えられていたが、新しい報告では調理が十分であってもおこることがわかったため、消費者に対しては注意を呼びかける。
シイタケを食べた後に不快な兆候がある場合にはシイタケを食べないこと、皮膚炎の疑いのある部分は日光に当てないこと。また鞭で打ったような皮膚炎の患者にはシイタケを食べたかどうか尋ねるように医師に対して要請する。
リスク評価の詳細についてはBfRのファイル参照(以下の記事)



シイタケの健康リスクに関する声明
Gesundheitliches Risiko von Shiitake-Pilzen
Stellungnahme des BfR vom 23. Juni 2004
http://www.bfr.bund.de/cm/208/gesundheitliches_risiko_von_shiitake_pilzen.pdf
シイタケは日本・中国由来のキノコでドイツでも食用であるが、味の他に健康にもいいとされる。しかしながら文献ではシイタケを食べたことによる皮膚炎が報告されている。そこでBfRはシイタケ摂取に関する暫定的健康影響評価を行った。
シイタケに含まれる多糖類であるレンチナンがシイタケ皮膚炎と呼ばれる体や四肢、首などのムチで打たれたような発赤を引き起こすと考えられる。この反応は調理が十分であっても起こり、日光で増強される。ドイツではシイタケ皮膚炎の症例はあまり知られていないが、消費者にはシイタケを食べる際のリスクとして周知させるべきである。
(日本の症例報告等の引用多数、もちろんシイタケ皮膚炎が多いのは日本)



シイタケ皮膚炎はwebではこんな写真つきのページがあります
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/shharada/mushroom.html

症状は背中や腹部を中心に手で引っ掻いた痕にあわせて線状に紅い痕が残ります。非常に痒く、副腎皮質ホルモンの外用だけでは効果がない場合もあり、内服が必要な場合があります。(図参照)


医学雑誌
皮膚病診療 26/8 2004年8月号
http://www.meteo-intergate.com/catalog/product_info.php?products_id=16735
では特集が「嗜好品・健康食品による皮膚病変」です。


これに記載されている内容は

pp963-966
「食べるしいたけ」によるシイタケ皮膚炎
田尻明彦(宮崎県 田尻皮膚科医院)
健康食品として販売されている「食べるしいたけ」(干しシイタケにゴマや砂糖で味付けしたもの)を食べてシイタケ皮膚炎になった男女3症例


pp967-970
アガリクスによるscratch dermatitis
山田利恵・中嶋弘 (横浜市アレルギーセンター)
肺小細胞癌のため化学療法を受けつつアガリクスを引用していた73歳男性


pp1055-1059
シイタケ皮膚炎(中村)―30年間の自験例105例の考察
中村雄彦(上越市 中村皮膚科医院)来院患者105例について、平均年齢50.9歳、治癒までの平均日数10.9日


pp1060-1064
1984〜2003年の20年間に当院を受診したシイタケ皮膚炎症例の統計的検討
久保容二郎(長崎市 久保皮膚科医院)
総患者数88,259名中シイタケ皮膚炎69例で平均年齢男性46.3歳、女性53.9歳。発症までの期間は平均2.6日、治癒経過は平均7.0日。


というわけで結構症例は多いようです。
シイタケ皮膚炎だと診断されているのに何回も食べて発症している人もいるようです。
アレルギーの一種と考えていいのかもしれません。
シイタケに含まれるレンチナンはアガリクスの有効成分と考えられているものと同じですから、アガリクスで発症しても「シイタケ皮膚炎」という診断名になるわけです。

なお医薬品としてのレンチナンの添付文書には以下の記載があります。
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4299401D1032_1_03/

禁忌 本剤の成分によるショックの既往歴のある患者
慎重投与 本人又は両親、兄弟に気管支喘息、発疹、蕁麻疹等のアレルギー症状を起こしやすい体質を有する患者
重要な基本的注意 ショックを起こすことがあるので、十分な問診を行うこと。また、投与中及び投与後は患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。なお,症状発現時に救急処置のとれる準備をしておくこと。
副作用 皮膚注2)(0.1〜5%未満) 発疹・発赤等
皮膚注2)(0.1%未満) 蕁麻疹、そう痒

レンチナンはBRM(Biological Response Modifier)、要するに「免疫系活性化」作用により抗がん剤の作用を強めることを期待して投与するわけですが、「免疫活性化」ということはつまりアナフィラキシーなどのショックがおこる可能性もある、ということです。なので救急処置が必要なわけですが・・・健康食品を食べるときは普通救急処置の準備はしないでしょうね。レンチナンは注射液ですので食べるのとは違いますが。

「健康にいい」からといってあなたの体に合うとは限りませんのでご注意ください。