食品安全情報blog過去記事

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NIHは論文のパブリックアクセスを提案

NIH Proposes Public Access to Papers
7 September 2004
http://sciencenow.sciencemag.org/cgi/content/full/2004/907/2?etoc
NIHはNIHが出資した研究の結果のパブリックアクセスを向上させるための案を提出した。
この提案では論文が受理されたらNIHの無料PubMedセントラルにコピーを保存し、論文出版6ヶ月後にPubMedに公開するというものである。
納税者にNIHの出資した研究成果を直ちに、簡単に見る権利があるという主張に対し、出版社や学会は破産するとして反対活動を行ってきた。
結局6ヶ月間隔をおくことが妥当であろうという案になったが、出版社は強く反発し、学会は多様な反応を見せている。



昨日の記載内容でEurekAlertから許可をもらったと書きました。
実は科学のニュースを紹介する時、公的機関のプレスリリースのような発表ならその内容を広く伝えたいということなので特に問題はないのですが、学術雑誌に発表された論文だと著作権との関係で問題が生じることがあります。
普通研究者は論文を発表する時、学術雑誌に著作権の委譲を行っているので、発表された雑誌の出版社が著作権を持っています。そして学術雑誌の出版社というのは普通営利を目的とした企業ですから、それを売って利益を得るにはあちこちに中身が流出してしまっては困る、ということです。雑誌の購読料は年間100万円を越えることも珍しくないし、普通の雑誌と違うのは原稿料を払うどころか論文の掲載料を取るということです。
ところでその論文を出すための研究に使った研究費は、日本だと特に、税金の場合がほとんどです。税金を使って出したデータを、高額なお金を払わなければ見せてもらえないというのは問題だというのがNIHなどの言い分です。それに対して一部の出版社と学会が反発しているわけです。
出版社が反対するのはともかく、反対している学会というのは多分内輪だけに情報を制限する事でしか会員が集められない古い体質の学会なのでしょう。
著作権というものを学術論文に当てはめて「保護」すべきだという考え方は、研究者にとってはあまり有益ではないと私は思います。引用されない論文など価値がないという証拠でしかないのに、論文を書いた本人はできるだけたくさんの人に見て欲しいと思っているのに、研究論文の内容を紹介するのは著作権違反だと主張しているのが某出版社です。
もちろん制限なしにWEBで論文を公開している学会誌もたくさんあります。そういうところが増えていけばいいと思います。
日本についてはさらに日本語での情報がほとんどないという問題もあります。
日本政府は科学技術関係にたくさんの予算を使っていますし、大学や研究機関のほとんどは税金で運営されている(私立大学でも私学助成金は税金でしょう)わけですから、日本の納税者は研究成果について日本語で知る権利があると思います。
せっかくこれだけネット基盤が整備されてきているのですから、英語論文を書いたら日本語でもネット上に公開していけばいいと思うのですが。