食品安全情報blog過去記事

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あなたの食べ物の中に「本当に」入っているもの 

What's really in your food - introduction
21 January 2005
NZFSA長官Andrew McKenzieによる新聞記事への反論
(長いが参考のため要約・マスコミのいい加減な報道に相当怒っている様子)

http://www.nzfsa.govt.nz/consumers/whats-really-in-your-food/index.htm

2005年1月、ニュージーランドの新聞が「What's in your food? あなたの食べ物に何が入っている?」と題した連載を掲載した。残念ながらNZFSAと専門家はその記事の内容には多くの間違いがあると考える。この記事を読んで不安になった消費者のために、ここに情報を掲載する。


ニュージーランドは食品の輸出が大きな経済的基盤であり、食品の安全性確保のために政府及び生産業者が多大な努力を行っている。今回の記事に掲載された「情報」の多くが間違いを誘導するようなものや不正確なものであったことは残念である。特に情報の確からしさや信頼性を評価することがなされず、一回限りの、古い、広く受け入れられてはいないようなこととFAOやWHOの報告やピアレビューを経た研究などを等価に扱っていることは、消費者の適切な判断に必要な情報提供とは言い難い。
「良質の」科学と「がらくたjunk」科学とを区別するのは簡単ではない。ジャンクサイエンスの一つの定義は「特定の、しばしば隠された意図のために科学的データや解析を誤用する」ことである。「良質の」科学は科学的方法(観察し、仮説を立て、その妥当性を評価し、仮説をより精度の高いものにし、現象と仮説が一致するまで検証を繰り返す)に従う。健全な科学はピアレビューの過程を経、試験結果が再現性あるものであることを確認し、データや解析や解釈がしっかりしたものである。ジャンクサイエンスはその反対で、研究は不十分で結果に再現性はなく、同分野の研究者に受け入れられるものではなく、その結果はしばしばセンセーショナルである。


一回の実験が事実を証明するのではない。他の研究の結果が全て反対である場合は特にそうである。
人生において100%安全を保証するものはないが、ニュージーランドの食品はひときわ優れたものである。ニュージーランドの食品は世界中の消費者に安全な食品として受け入れられている。個別の問題点について説明する前に、2002年にニュージーランド食品安全庁がニュージーランド及び貿易相手国の消費者を守るためだけに設立されたことを強調したい。

以下個別の項目
・残留化学物質:全ての食品には生産過程で使用された残留化学物質が存在する可能性がある。しかしニュージーランドで検出される量は国際的に推奨される量より十分低い。
・農薬
・ニワトリと抗生物質:ニワトリは「抗生物質まみれ」ではない。ここ数年ニワトリの肉からの抗生物質の検出はない
・ホルモン:ニュージーランドで成長促進ホルモンを使用している農家はわずかであるが、ホルモン剤を使用した食肉から「余分なホルモン」が検出されたことはない。
・水銀:世界中の魚は天然に水銀を含む。ニュージーランドのレベルが高いわけではない。しかしながら発達中の胎児が最も感受性が高いため妊婦には水銀濃度の高い魚の摂取を制限するよう助言している・
・カクテル効果:世界中で精力的に研究されているにもかかわらず「カクテル効果」の存在は証明されていない。特定条件での相加効果(1+1=2)については証拠があるが、相乗効果(1+1=3)についてはまだ証明されていない。Scienceに発表されたエストロゲン作用物質の相乗効果についての論文は後に偽造であったことがわかり。著者は米国からの研究費助成を5年間停止されている。
・ビンクロゾリン:ビンクロゾリンは1998年以降ニュージーランドでの使用登録はない。
アスパルテームアスパルテームの安全性については英国FSAやECの科学委員会、米国FDAでも安全であるとしていて矛盾はない。疑問があるとしているのは間違った情報を流している多数のウェブサイトである。
有機塩素:有機塩素系農薬の使用が減っているのは安全性に問題があるからではなく環境への影響を配慮するからである。
「廃止された」化学物質:ジアジノン・ジメトエート・メタミドホスクロルピリホスは米国などでは禁止されていない。
・着色料:ある国である着色料が認可されていないのは企業が申請していないという理由だったりする。これら化合物に安全上の問題はない。
・パン:パンにはほぼ100%何らかの化学物質が残留しているというのは事実である。 これは原料の小麦の生産や貯蔵過程で致死的ですらあるカビや病害虫を防除しリスクを低減するために農薬が使われるためである。検出されている量でヒト健康への影響はなく、これらの無視できるリスクを避けるために農薬を使わないのならより大きなリスクを招くことになる。
・ADI:ADIに矛盾はなく、「単なる数値」ではない。矛盾があるのはこの概念を理解しない、又は理解しようとしない人にとってのみである。
・殺虫剤:ある食品の検体に残留農薬が検出されたらその食品はいつでも残留農薬があるというのは間違いである。調査報告書をみればはっきりわかるはずである。しかも通常は検出されない場合が多い。
抗生物質耐性:抗生物質の使用量には十分な注意が必要である。家畜への抗生物質使用とヒト病原菌の抗生物質耐性との関係には不確実な面もあるが、ニュージーランドは予防的措置をとっている。
・スパイシーな食品と喉頭ガン:スパイシーな食品で喉頭ガンになるという証拠はない。
狂牛病ニュージーランドにも狂牛病のリスクはある。対策は行っている。
・食品由来疾患:食中毒と環境由来の感染による胃腸炎を区別するのは困難である。ニュージーランドの食中毒発症率は高いが、それは小さな国で報告システムがしっかりしているためである。食中毒の主な原因は食品の扱・保存・衛生状態の不備による。適切な調理が必要である。
カンピロバクター:牛だけが食中毒の原因ではない。
・リステリア:説明に使われた図は古い。
・GEフリーオイル:植物油は遺伝子を含まないため、遺伝子組換えかどうかは問題にする必要はない。
・食品安全庁の施策:食品安全庁が人が死なないと動かないというのは明らかな間違いである。もしそうなら農薬や抗生物質食品添加物に対して何一つ対応する必要がない。むしろNZFSAは「信頼できる」証拠に基づき可及的速やかに対応しているというのが実情である。
・信頼:消費者は「政府や大企業が信頼できることを望む」必要はない。どの政府であれ市民を中毒にしたいなどとは思わない。またどの企業でも顧客を殺したいとは思わないことは明白である。
・その他の情報:まだ心配がある消費者はNZFSAのホームページを読んだり、FAOやWHO、英国FSA、米国FDAのサイトを参照したりするといいだろう。

新聞掲載版の短いものはこちらのURL
http://www.nzfsa.govt.nz/consumers/whats-really-in-your-food/really1.htm



EurekAlertより
コクランライブラリーニュースレター2005年1号
The Cochrane Library Newsletter, 2005, Issue 1
23-JAN-2005
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2005-01/jws-tcl011805.php