食品安全情報blog過去記事

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良くできたお話、科学的には間違い:「消費者活動家」団体のヘルスクレームに対するジャーナリスト向けガイド

Good Stories, Bad Science: A Guide for Journalists to the Health Claims of "Consumer Activist" Groups
Friday, June 10, 2005
http://www.acsh.org/publications/pubID.1130/pub_detail.asp
メディアはしばしば消費者団体が主張する我々の環境や食品中の健康ハザードについて報道する。ACSHはそのような報道を吟味した結果、アメリカの消費者はこうした報告について今よりもっと疑った方が良いという結論に達した。
消費者団体の出す警告やクレームは、おそらく科学的根拠に基づいている。しかし一般的にこれらクレームや推奨に対しては独立したピアレビューが行われていない。その発表は自分たちで発行したり記者発表やお金を払って広告を出したりするというものである。その内容はしばしば小規模試験だったり動物実験だったりで強力な根拠はない。こういうやりかたは科学の主流ではない。
科学者は他の専門家がレビューを行う雑誌に結果を発表するし、信頼できる科学者は例えピアレビューのある雑誌に発表された論文でも、たった一報である理論や仮説が証明されたとは考えない。実験や観察は別の研究者が再現できて初めて意味があると見なされる。しかし消費者団体は、信頼性の乏しい実験結果であっても確認を待たずに警告を発する。あるいは彼らの望む特定の傾向のデータのみを選択する。
そうした団体の警告のもう一つの特徴は、高用量の動物実験の結果を直接ヒトのリスクだとすることである。動物実験は化学物質の有害性を評価するのに重要であるが、高用量での毒性が、直ちに低用量での暴露によるヒトへの有害性を示すものではない。ヒトでのリスクアセスメントには実際の暴露量での毒性などのさらなる情報が必要である。さらに何らかの動物でなんらかの有害影響が出たら有害だとする立場では全ての化学物質が有害になってしまう。
この報告書ではACSHは4つの消費者団体の主張をレビューして評価した。さらにメディアに対して健康に関する主張の科学的質を評価するのに使えるガイドラインを提示している。
考察されている4つの消費者団体とその主張は
Center for Science in the Public Interest (CSPI)
 オレストラ・ベータカロテン・クォーン・アクリルアミド
Environmental Working Group (EWG),
 高圧処理木材・養殖サケとPCB
Natural Resources Defense Council (NRDC),
 アラールAlar・スクールバスのディーゼル排気ガス
Physicians Committee for Responsible Medicine (PCRM)
 ミルク・「中毒性のある」食品・赤身肉と直腸ガン・チキンは健康的な食事ではない? 


ジャーナリストが活動家団体に尋ねるべき質問としては
・その研究は独立した研究グループによるものか?(大学や研究所、その団体の背景は)
・それは特定の研究に関する団体の声明か、意見や立場を表明したプレスリリースか?
・プレスリリースなら、それは特定の研究についてのものか?(その研究は論文として発行されているか・学会発表か)
・タイミングはどうか?(何らかの政治的動きと同期していないか)
・その団体は製品の回収などを要求しているか、それを支持する他の研究はあるか?
・その実験は動物でのものかヒトのデータか?
・その結果は現在、科学的に合意できるものか?
ペーパーバックは5ドルで購入できる。
PDF版(23ページ)は上記サイトから無料でダウンロードできる。



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