食品安全情報blog過去記事

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アスパルテームとラットにおける発ガンリスクの上昇

Aspartame linked to increased cancer risk in rats
18 November 2005
http://www.nature.com/news/2005/051114/full/051114-15.html
イタリアの研究者らがアスパルテームの安全性に疑問を呈している。
研究者等は甘味料を投与されたラットが現在ヒトへ推奨されている量より少ない量でガンを誘発すると報告しているが、これはこれまでのアスパルテームが安全だとするほとんどの研究に矛盾している。
専門家らはこの研究は正統ではない方法で行われたもので、どうしてこの甘味料がガンを誘発できるのかを理解するのは困難であるとしている。アスパルテームは血流に入る前に分解されて通常体内に存在する物質になるからである。
FDAとEFSAはこの研究者等の発見を精査することを約束している。いずれも現行の規制を変更することは薦めていない。FDA食品添加物安全性部門のGeorge Pauliは「我々は非常に多くのしっかりしたデータを見ており、それに満足している」と語っている。
FDAアスパルテームを認可したのは1981年で、いくつかの発がん性試験に基づいている。ヨーロッパも2002年に再評価を行い、それまでの評価を変えていない。
イタリアのボローニャにあるCesare Maltoniガン研究センターのMorando Soffrittiらは8週齢のラット1800匹に最大3年の生涯にわたりこの甘味料を与えた。死亡後に組織を観察している。その結果20 mg/kgから雌の白血病が増えたとしている。WHOによればヒトにおけるアスパルテームの安全量は40 mg/kg体重/日で、これを超えるにはダイエットコーラ28缶以上飲まなければならない。
米国環境健康科学研究所の毒性計画議長のJohn Bucherによれば、通常このような試験ではラットは2年でと殺される。ガンは加齢とともに増えるので、発症するガンを全て見たい場合には死ぬまで生かす。しかし死ぬまで生かした場合、年齢の違う動物を比べることになるので通常の統計解析は問題がある。そのほかにもこの研究には奇妙な部分がたくさんある。
他の研究者もアスパルテームアミノ酸メタノールに分解され、いずれも生体内に存在するものでごくありふれたものであるため、何故アスパルテームがガンを誘発するのか不明であると語っている。
Durhamの毒性学コンサルタントMichele Medinskyは、このイタリアのグループが行ってきた発ガン性試験のいくつかは他の研究者によるものとは矛盾した結果になっているものがあることを指摘している。
アスパルテームは米国では毎年8000トン以上が約6000製品に使われている。
その論文
オープンアクセス
First Experimental Demonstration of the Multipotential Carcinogenic Effects of Aspartame Administered in the Feed to Sprague-Dawley Rats http://ehp.niehs.nih.gov/docs/2005/8711/abstract.html
(増えたと言ってるものがゼロが1になったものだったり。この研究所では一つの実験に数千匹規模の大量の動物を使って極わずかの発症で統計学的有意差を出すことを目的にしているらしい。自然発症データはNTPのそれとかなり違う。ホルムアルデヒドトルエンも経口投与している。)

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