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ジクロルボスの評価に関するPPRパネルの意見

Opinion of the Scientific Panel PPR related to the evaluation of dichlorvos in the context of Council Directive 91/414/EEC.
20 April 2006
http://www.efsa.eu.int/science/ppr/ppr_opinions/1452_en.html
ジクロルボスアセチルコリンエステラーゼを阻害して神経の信号伝達を抑制し多くの昆虫で急速な呼吸困難を誘発する有機リン系殺虫剤である。同じメカニズムでほ乳類の急性毒性がおこる。ジクロルボスの適用は保存中の球根害虫用のみである。
PPRパネルはi) ラットとマウスにおける各種臓器でのジクロルボスによる腫瘍発生の増加は作用メカニズムが同定できるか、もしできたとしてその作用には閾値があるか ii)ジクロルボスの発ガンメカニズムはヒトに外挿できるか について諮問された。
ジクロルボスの発がん性についてはマウスで5つの、ラットで6つの長期試験がある。
投与経路は混餌・飲水・強制経口・吸入で、ほとんどの試験では発がん性は認められていないがF344/Nラットを使った試験とB6C3F1マウスの試験の二つの強制経口投与試験で新生物の増加があったとされている。これらの試験では雄ラットの単核球白血病、雌ラットの乳腺線維腺腫と腺腫の合計、雄ラットの膵腺傍腺腫、雌雄マウスの前胃腫瘍の増加が報告されている。入手できる全てのデータを考慮した結果、PPRパネルはマウスの前胃腫瘍以外については、腫瘍発生頻度の増加が投与物質によるという説得力のある根拠はないと結論した。マウスの前胃腫瘍は全身暴露によるものではなく局所暴露による結果である(強制経口で胃内投与しているので)。
入手できるデータからはジクロルボスはin vitro変異原性物質であり、接触部位ではin vivo変異原性も示唆されるがこの作用のメカニズムは不明である。In vivoでのDNAアルキル化の根拠は極めて薄弱である。
ジクロルボスによるマウスの前胃腫瘍誘発メカニズムを同定するには根拠が不十分であるが、作用メカニズムに関わりなくこの反応は局所での高濃度が持続したためのものでこの部位に限定されると結論した。さらにこの反応には閾値が存在すると考える。根拠の重み付けを行った結果、この物質の申請された使用状況ではこのような事態はおこらない。さらに発がん性をもたらすほどの濃度が前胃以外に到達するまえに重大な全身毒性が見られるであろう。前胃は腺胃や食道より長期に物質を留める独特の構造をしているからである。
(注:前胃はヒトにはない)


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