食品安全情報blog過去記事

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2006年3月2日の議事録

20 April 2006
http://www.advisorybodies.doh.gov.uk/pdfs/wpmin020306.pdf
・議題に取り上げられていないが、メディアが制汗剤などのパラベンが発がん性があるという報道をしていることについて、現時点ではパラベン含有腋の下用化粧品に乳ガンリスクがあるという証拠はないとしている。参照:SSCP/0874/05, January 2005, http://europa.eu.int/comm/health/ph_risk/committees/04_sccp/docs/sccp_o_00d.pdf
ただし一般的乳ガンのレビューは行う。
・遺伝毒性発ガン物質の単回暴露の発ガン強度ランキングの可能性について
意味づけや方法論などに問題は多いが試験的に行ってみることでは合意している。
・RCEPによる作物への散布と近傍住人などへの健康についての報告書について
RCEPが2004年6月に発表した報告書についてはCOTが議論して多数のコメントを出している。COCはガンの疫学と前立腺ガンについてさらに意見を求められた。COCはRCEPが疫学の探索研究と検証研究を明確に区別してないなど疫学文献の精査を行っていないことなどを指摘した。今後の研究課題としてはがん疫学における暴露評価が最優先であることには合意する。暴露量評価にはバイオモニタリングが有用であろうが、発ガンと結びつけるのは困難であろう。他にオブザーバーからのコメントが出された。

アスパルテームの発がん性についてのRamazzini研究について
アスパルテームは1982年に最初に承認されてから広く使われている甘味料で、最も最近の評価は2002年に行われているがリスク評価やADIの見直しの必要はないと結論されている。2005年7月にRamazzini研究所がアスパルテームのラットリンパ腫や白血病に関する研究を発表した。この研究は普通でないプロトコールで行われており、COCは7月の会合で多数の疑問点を指摘した。さらに2005年11月により詳細なデータが発表され、最初の報告からさらに広げて腎・神経系と末梢神経腫瘍及び嗅上皮増生を報告した。EFSAは報告書全文を要求して受け取り、評価を行っている。この過程でCOCはFSAから見解を求められた。特にa)研究の質 b)データ解析 c)結果の解釈について、である。COCの見解はEFSAに伝えられる。

一般的コメントとしては、
○この報告書では全組織をエタノールで固定したと記述してある。エタノール固定では組織の評価が困難であり、これは間違いではないのか?
○高濃度アスパルテームを使った群では栄養状態のバランスが崩れているために発ガンに影響がある可能性がある。
○この論文の著者は他の発ガン試験で使用しているWistar系統がSD系統より感受性が低いと述べているが、発ガン試験にはWistarが適切であるというのが常識である。
○この試験はGLPの見かけを取り入れた試験計画になっているが、外部評価は行われておらず、従ってGLP準拠とは見なせない
○使用したアスパルテームの安全性や純度のデータがない
○非発ガン影響の頻度が高い。特に脳に膿瘍があるということは、実験に使用した動物のコロニーにマイコプラズマ感染があるということで、これが観察された呼吸器系や全身での疾患の原因である可能性がある。感染症検査を行っていたかどうか不明である。
○20年前の実験結果との比較は無意味である。比較できるのは最大5年までである。
○結果の解析に全ての腫瘍の合計やリンパ腫と白血病の合計を使うのは適切ではない。
○使用した濃度が非常に広い割には用量反応は異常に小さい。
○使用した統計学的検定方法(ポリkテスト)は自然死を待つ場合ではなく計画的に屠殺した場合に使うものである。
○高用量群のラットは低用量より餌を食べる量が少ないのに体重に違いがない。これは群間に飼料効率の違いがあることを示唆する。
主文については
1.リンパ腫頻度にはマイコプラズマ感染が修飾因子となる。マイコプラズマ症はリンパ球の分裂促進因子であり、これが肺のリンパ腫の主要因であろう。
2.腎盂移行上皮の異形成やガンは観察されている石灰化に関連する。さらに腎盂での知見は尿路感染による可能性もある。
3.嗅上皮の過形成はアスパルテームの吸入による刺激によるものであろう。粉末飼料ではよく報告される。
4.ラットの発がん性試験で神経鞘腫が報告されるのは珍しく、この知見の用量反応性は極めて平坦である。さらに使用された系統で神経鞘腫と診断されているのは最近のもので、歴史的データとの比較はできない。
全体として、研究デザインの問題やコロニーの微生物感染状態への懸念のため、この結果からアスパルテームの発がん性について結論を出すことはできないと結論した。
委員会はいくつかの問題点を明確にするため、被検物質の分析データや病理学的知見を含む個別動物のデータ、固定方法、外部病理組織学レビュー情報を求めた。
他、オブザーバーからの意見。

・職業ガン頻度を下げるためのHSE計画について
・精巣ガンについて
精巣ガンは世界中で比較的希なガンであるが45才以下の男性では最も良くあるガンである。
精巣ガンの頻度は国により多様であるが1960年代以降一般的に増加している。生存率は上昇している。
精巣ガンのリスク因子指標は停留精巣と上皮内ガン以外は良くわかっていない。ホルモンや食事などの子宮内リスク因子仮説がある。
精巣ガンと内分泌かく乱物質暴露との関連を調査した疫学研究は無い。ヒト脂肪組織中p,p-DDE濃度を使用した回帰解析ではDDEと精巣ガンの関連は見られていない。
一部の職業に就いている男性で精巣ガンリスクが高いかもしれないという報告がある。
・毒性学における変動性と不確実性に関するワーキンググループの報告書案について