ニュージーランドから再掲
食品中天然毒素
Natural Toxins in Food
http://www.nzfsa.govt.nz/consumers/food-safety-topics/chemicals-in-food/natural-toxins/index.htm
多くの豆にはレクチンと呼ばれる毒素が含まれる。最も高濃度なのはインゲン豆で、特に赤インゲンは高い。わずか4-5個の生の豆を食べただけで重い腹痛・嘔吐・下痢が誘発される。
毒素を破壊するにはマメを少なくとも5時間水に浸けて少なくとも10分は沸騰したお湯で茹でること。電気鍋などで低温で調理してはいけない。低温では毒素が分解できないばかりか生のものよりさらに毒性が高くなる可能性がある。豆の缶詰はそのまま使用できる。
論文いくつか
赤インゲン豆 食うべきか食わざるべきか
Red kidney beans--to eat or not to eat?
Venter FS, Thiel PG.
S Afr Med J. 1995 Apr;85(4):250-2.
南アフリカではヒトへの毒性のため、栽培や食用に乾燥赤インゲン豆を輸入することが禁止されている。インゲン豆の毒性は赤血球凝集性レクチン(フィトヘマグルチニン、PHA)による。南アフリカ市場で販売されている各種乾燥豆と輸入乾燥赤インゲン及び缶詰赤インゲンのPHA活性と熱の影響を調べた。その結果は赤インゲンの健康リスクは他の豆と同様であるというものだった。
生及び調理済みインゲン豆を与えたラットの脾臓と胸腺組織と脾細胞の増殖応答
Spleen and thymus histology and proliferative response of splenic cells in rats fed raw and cooked Phaseolus vulgaris beans.
Toro F
Arch Latinoam Nutr. 1992 Dec;42(4):395-402.
生のマメを与えるとリンパ系組織の萎縮がみられた。脾細胞の増殖能は高いため主因は栄養不良によると考えられる。
インゲン豆レクチンのラット十二指腸毒性
Duodenal toxicity of dietary Phaseolus vulgaris lectins in the rat: anintegrative assay
Lafont J
Digestion. 1988;41(2):83-93.
ラットに0.0025-0.25%のPHAを含む餌を9日間与えた。0.04%以上では摂餌量の低下があった。用量に依存した小腸傷害が認められ、微絨毛のブレビングblebbing(膜が水泡状に変化)やアルカリホスファターゼの消失は最小用量でも見られ、高用量では細胞の消失がおこった。用量に依存した小腸傷害が認められた。反応性の肥大も見られた。
金時豆レクチンの経口毒性
Oral toxicity of Kintoki bean (Phaseolus vulgaris) lectin
Hara T et al
J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 1983 Oct;29(5):589-99.
マウスに生の金時豆を単一蛋白源として与えると体重が減少し8日目に死亡した。加熱した金時豆の場合は正常に発育した。金時豆レクチンを1日20、40、80mg強制経口投与したマウスは5日後の体重がそれぞれ84、74、71%になり何匹かは最終日を待たずに死亡した。レクチン投与マウスの小腸上皮が傷害されていた。
英国で一般に販売されているマメの栄養及びヘマグルチニン調査
A survey of the nutritional and haemagglutination properties of legume seeds generally available in the UK.
Grant G,
Br J Nutr. 1983 Sep;50(2):207-14.
英国で一般に販売されているマメ85検体について、ラットで食べられるかどうかと各種動物の赤血球を使った凝集試験を行った。この結果からマメを大きく4つのグループに分類した。
- 全ての細胞で好反応性で非常に毒性が高い:ほとんど全ての品種のインゲン豆(kidney bean) Phaseolus vulgaris、サヤインゲンPhaseolus coccineus、テパリー・ビーン Phaseolus acutifolius
- ヒトとプロナーゼ処理したラット赤血球で凝集活性がありラットの成長を抑制する: ライマメ(リマ豆)Phaseolus lunatus、シカクマメ Psophocarpus tetragonolobus
- 反応性が低く毒性は低い:レンズ豆Lens culinaris、エンドウ豆Pisum sativum、ヒヨコ豆 Cicer arietinum、blackeyed peas(ササゲ) Vigna sinensis 、キマメPhaseolus angularis
- 反応性は低いが特定条件では成長抑制がある:大豆Glycine max、インゲンマメ(pinto beans) Phaseolus vulgaris
金時豆由来致死性蛋白質はレクチンである
The lethal protein from Kintoki beans (Phaseolus vulgaris) identified as a lectin.
Miyoshi M
J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 1982;28(3):255-64.
レクチン活性は60℃ 1時間加熱では失われず、70-80℃で僅かに減少、90-100℃で著しく減少した。