食品安全情報blog過去記事

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調理器具の安全使用

The Safe Use of Cookware
http://www.hc-sc.gc.ca/iyh-vsv/prod/cook-cuisinier_e.html
ポットや鍋やその他の調理器具は多様な物質からできている。これらの物質は調理の際に食品に入ることもある。ほとんどの場合無害であるが、注意が必要な物質もある。
カナダで販売されているほとんどの調理器具は良く手入れして目的に沿った使用をしていれば日々の調理には安全に使用できる。しかしながら一部の物質にはリスクの可能性もある。


調理器具素材の利益とリスク


アルミニウム
アルミは軽く、熱を伝えやすく比較的安価であるためよく使われる。
カナダ人は通常主に食品から1日 10 mgのアルミを摂取している。アルミのポットや鍋はそのうち1-2 mgを占めるに過ぎない。アルミニウムとアルツハイマー病の関係が言われているが関係が証明されたわけではない。WHOは成人の場合毎日50mgのアルミニウムを摂取しても無害であると推定している。
調理の際アルミは最も調理器具から溶出しやすい。食品を長くアルミの器具で調理又は保管すればするほど食品中アルミは増える。葉物野菜やトマトや柑橘類などの酸性食品が最も多くアルミを吸収する。


陽極酸化アルミ(アルマイト)調理器具
アルミを酸性溶液に浸けて電流を流すとアルミの表面に酸化アルミの被膜ができる。 これを陽極酸化という。陽極酸化アルミは通常のアルミ同様の熱伝導性を示すが表面がより硬くくっつきにくく長持ちする。また陽極酸化によりトマトやルバーブなどの酸性食品へのアルミの溶出を削減することができる。



銅は熱を良く伝え、調理温度を調節しやすい。銅と亜鉛でできた真鍮は調理器具としてはあまり使われない。
微量の銅は健康によいが一度に大量に摂ると有害である。そのためカナダで販売されている銅や真鍮の調理器具は銅と食品が直接接触しないように他の金属でコートしてある。長期間調理又は貯蔵するとコートから微量食品、特に酸性食品、に溶出することがある。コートされた銅の調理器具は、磨くと保護膜がなくなる。過去には銅の調理器具のコートにはスズやニッケルが使用されていた。このような調理器具は装飾用のみに使用されるべきである。ニッケルアレルギーのある人は特にニッケルコートされた調理器具は避けるべきである。


ステンレススチールと鉄の調理器具
ステンレススチールは鉄と他の金属から作られ、丈夫で摩擦や断裂に強い。高価であるが長持ちし、北米では最もポピュラーな調理器具である。ステンレススチールや鉄の調理器具に使用されていて健康に影響がある可能性があるのは鉄・ニッケル・クロムである。
鉄は赤血球を作るのに必須で、大量摂取は有害であるが北米では摂りすぎより不足の場合が多い。鉄の調理器具は毎日の鉄総摂取の20%未満を供給し、安全域内である。
ニッケルは少量では毒性はないがニッケルアレルギーの人には反応を誘発する。平均的成人は1日あたり150-250 microgのニッケルを摂取している。腐食耐性ニッケル含有ステンレススチール調理器具を使用しても、例えルバーブアプリコットやトマトのような酸性食品でも、食品のニッケル量増加はほとんど無い。
微量のクロムは鉄同様健康によいが高用量では有害である。安全な摂取量は1日あたり50-200 microgで、ほとんどのカナダ人はこの範囲にある。ステンレススチール器具で調理した一食分の食事は約45microgのクロムを含むが問題はない。


セラミック・琺瑯・ガラス
陶器やほうろうやガラスの調理器具は洗いやすく高温に強い。陶器の調理器具には釉薬が使われており、同様の釉薬が金属に使用されて琺瑯が作られる。釉薬はガラス状になって水や腐食耐性になる。
ガラスや琺瑯の調理器具の使用による健康への影響は、製造や釉薬処理又は装飾に使用される色素や鉛やカドミウムなどの微量成分によるものである。これらの物質は有害であるため、食品への移行リスクは製造工程で制御される。カナダでは琺瑯やガラスの食器や調理器具は、鉛やカドミウムが溶出する場合は販売や輸入が禁止されている。許容量を超える鉛やカドミウムを含む製品は食品に使用しないよう表示されている。国によってはカナダのような厳しい規制がない。もし海外からこうした調理器具を持ち込むときはそれがカナダの鉛とカドミウム規制に合致しない可能性があることに留意すること。


プラスチックとくっつかないコーティング
食品の調理や貯蔵には、プラスチックは軽くて壊れない。金属調理器具が使えない電子レンジに使える容器も多数ある。本来の目的以外にプラスチック容器とラップを使うのは健康上問題がある。ラップについては食品が可塑剤を吸収することが懸念される。これは電子レンジで高温に加熱した場合やチーズや肉などの油脂の多い食品に使用した場合におこる可能性がある。
くっつかない加工は金属器具に食品がくっつくのを阻止するためになされる。米国の独立した科学レビュー委員会はパーフルオロオクタン酸とその塩(PFOA)を実験室におけるラットの研究結果から「発ガン物質であろう」とみなすことを薦めている。EPAも同様にPFOAをラットの発ガン物質らしい(likely)としている。しかしながらこれはかならずしもPFOAがヒトでガンを誘発することを意味しない。PFOAはくっつかない被膜の製造に広く使用されているが、製品の調理器具には含まれず、環境中に拡散している。2006年に化学工業界は環境中へのPFOA排出を最終的に停止すること、製品中のPFOA含量を削減することに合意した。くっつかない調理器具を使用してPFOAに暴露されるリスクはない。
くっつかない加工は350℃以上に加熱した場合リスクとなる。これは空だきした場合におこり、この時刺激性の有害な蒸気が生じる。


シリコーン調理器具
シリコーンはケイ素と酸素の化合物を含む合成ゴムである。食品用シリコーンで作られた調理器具は、色彩豊かでくっつかず、変色せず、摩擦に強く、冷えやすく高温耐性があるので最近広まりつつある。シリコーン調理器具による健康影響は知られていない。シリコーンゴムは食品や飲料と反応せず、有害物質を生じない。


リスクを最小化するために
・アルミの調理器具で食品を長時間調理又は貯蔵しない。
・傷のあるまたはコートされていない銅の調理器具を使用しない。もし古いスズやニッケルコートのある調理器具を持っている場合は装飾目的にのみ使用する。コートれた銅の調理器具は磨かないこと。
・ニッケルアレルギーがある場合にはニッケルを使用した調理器具は使用しない
・もしニッケル感受性が高くアレルギーの対処に困っている場合には医師と相談する。ニッケル含量の高い食品としてはオーツやオーツ製品、豆、エンドウ豆、レンズ豆、チョコレートなどのココア製品などがある。
ルバーブシチューやトマトシチューなどの酸性度の高い食品をステンレススチール容器に保存しない
・海外からセラミック食器を持ち込んだ場合にはカナダの鉛とカドミウムの規制に合致しない可能性があることに留意する。食品には使用せず装飾品としてのみ使用する。
・電子レンジに使用できると表示されていないプラスチックの容器やラップを電子レンジで使用しない。保存用に乳製品容器などのプラスチックを再使用する場合には、保存前に食品を冷やして直ちに冷蔵すること。見た目に傷があったり着色していたり臭いがある容器は使用しない。食品用ではないプラスチック容器に食品を入れたり加熱したりしないこと。
・くっつかない調理器具を常に使い続けない
シリコーン調理器具を220℃以上のオーブンやストーブの上で使用しない。また熱い食品をシリコーン調理器具から取り出すときは滑りやすいので注意すること。



PRC  英国 残留農薬委員会