食品安全情報blog過去記事

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モーツァルトで賢くはならない

Mozart doesn't make you clever
13 April 2007
http://www.nature.com/news/2007/070409/full/070409-13.html
ドイツ政府は「モーツァルト効果」神話に取り組むことを決定。
ただモーツァルトの音楽を聞くだけで−他のどんな音楽でも−賢くなることはない。しかし音楽の訓練が子どものIQに長期に渡ってどのような影響を及ぼすかについてはさらなる研究が必要である。先週ドイツ研究省が発表した音楽と知能に関する科学文献解析報告書でそう結論している。
この報告書は、ドイツの音楽の専門家である神経科学者、心理学者、教育専門家、哲学者のグループが音楽の知能に与える影響に関する文献を初めて系統的に評価したものである。研究省は評価方法のわからない音楽と知能に関する研究への資金要請が氾濫しているためにこの問題に取り組む必要があると感じていた。
この分野への関心は1993年にNatureに掲載された、心理学者のFrances Rauscherらがモーツァルトを10分聞いた後にパターン認識や折り紙などの特定の作業能力が向上したとする報告がきっかけである。
この「モーツァルト効果」は、この知見が疑わしいとするたくさんの追加試験が行われた後でも、音楽業界や一部の私立学校のマーケティングツールとして残った。データを拡大解釈した熱狂的宣伝の中で音楽を聴くことと演奏することもしばしばごちゃ混ぜにされた。
この報告書の主著者でピアノを演奏する哲学者であるRalph Schumacherは、 「我々はどの問題が残されているのかを見つけるために全ての文献を精査した。」と述べている。この報告書はRauscherらの「モーツァルト効果」は死んだと宣言している。
音楽を聴くことによる知能への影響に関するほとんどの研究は再現性がないか聴いたあと20分以内の一時的効果であった。この一時的効果はモーツァルトに限ったことではなくどんな音楽でも、本の読み聞かせでも認められた。
一方小さい子どもの音楽の訓練のIQ発達への影響についてはそれほど強く否定していない。ほとんどの研究は規模が小さく解釈が困難でIQには長期的には何の影響もないという報告もある。しかし極僅かだが有意な影響を示す研究がある。
しかし仮に将来の研究で音楽の訓練がIQに良い影響があると確認されとしても、あなたの子どもをテンサイにすることはできない。もし音楽の訓練に効果があるなら、脳の中でどうやってそのような効果が発揮されるのかを見つけることが最も興味深い点であろう。