食品安全情報blog過去記事

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動物飼料中の望ましくない物質としてのピロリジジンアルカロイドに関するCONTAMパネルの意見

Opinion of the Scientific Panel CONTAM related to pyrrolizidine alkaloids as undesirable substances in animal feed
25 May 2007
http://www.efsa.europa.eu/en/science/contam/contam_opinions/ej447_pyrrolizidine.html
ピロリジジンアルカロイド(PAs)という単語は4つのネシンnecine塩基、プラチネシンplatynecine, レトロネシンretronecine、ヘリオトリジンheliotridine又はオトネシンotonecineのうちのどれか一つを基本構造に持つ350以上の化合物群を指す。PAsはムラサキ科Boraginaceae、キク科Compositae (Asteraceae)及びマメ科 Leguminosae (Fabaceae)の6000種以上の植物が二次代謝物として生産し、世界中に存在する。植物中のPAsの存在パターンは多様で品種や気候条件や採取の時期や部位により異なる。塩基性アルカロイドは種子に蓄積する傾向があり、そのN-オキシド類は植物の緑の部分に多い。PAsは野生動物や家畜に影響する最も広く分布している天然毒素であると考えられている。しかしながら家畜は、他の食べ物があるときはPAを含む植物は食べないので急性中毒は希である。ただし貯蔵牧草や干し草のような保存飼料については、この認識は間違っている。
PAsによる急性毒性は肝毒性と出血性肝壊死が特徴である。長期暴露では肝細胞の肥大、肝静脈閉塞まれに肺静脈閉塞、胆管上皮の増殖、脂肪肝、肝硬変が誘発される。
臨床症状は遅れて現れることがあり、肝臓がかなり傷害されてから暴露に気がつく。進行性の肝毒性は親アルカロイドの、毒性の高い高反応性アルキル化剤であるデヒドロピロールアルカロイドへの代謝活性化に関連する。一方N-オキシドへの変換は解毒である。エステル化の程度やそのエステルの性質などの構造的特徴が毒性の高いピロールへの生物活性化の程度を決める。また生体変換に関与する酵素の発現の違いが種による感受性後害を説明できそうだ。現時点では、家畜について入手できるデータからは飼料中の個々のPAsについて許容量を設定することはできない。
ヒトにおいてはPAsは主に肝静脈閉塞性疾患(VOD)を誘発する。VODは過去に南アメリカの一部地域で風土病とされたが、発ガン性についての疫学的証拠はない。PAsのヒトへの毒性影響についての懸念は、齧歯類でのこのクラスの化合物による発ガン性を示す広範囲な研究結果と、PAsのデヒドロピロール代謝体がDNA付加体・DNA架橋・DNA-蛋白架橋を形成する、齧歯類モデルで行われた各種バイオアッセイでの遺伝毒性及び変異原性の結果による。
飼料中のPAsが家畜の可食部にどれだけ移行するかについての研究によれば、PAsは乳牛(及び乳羊)の乳に極僅かではあるが摂取量に応じて0.04-0.08%分泌される。卵への移行率データはないが、オーストラリアにおける市場調査では卵中にある種のPAsが検出されている。他の動物組織からは検出されていない。動物由来組織に残留する分のヒト暴露への寄与率は低い。しかしながら常にPAが検出されている蜂蜜については特に注意が必要である。


参考:農水がこんな表を出している
シンフィツム(いわゆるコンフリー)、アカネ色素等の飼料における取扱いについて
平成16年7月6日
http://kashikyo.lin.go.jp/network/pdf/16-7-6.pdf