食品安全情報blog過去記事

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亜鉛の話

(某所で話題になっていたので)
週刊医学界新聞詳細
高齢者の食欲不振,褥瘡には亜鉛欠乏の疑いが
第2回日本臨床内科医学会ランチョンセミナーの話題から
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2006dir/n2709dir/n2709_03.htm
長野県北御牧村村民1431人の血清亜鉛濃度を測定し、高齢者に亜鉛欠乏が多いことを示している。亜鉛補充で症状が改善する・・・というのはいいのだけど。
しかしこれは・・・

亜鉛不足の原因としては,偏食,極端なダイエット,食品添加物,医薬品など考えられるが,倉澤氏は大胆な仮説として,食べ物に含まれる亜鉛が,全体として少しずつ少なくなっているのではないかと述べた。日常的な食物はほとんど大地から獲れるが,その大地が痩せて亜鉛が少なくなっているのではないかという。科学的には明らかとなっていない,生物にとって大切な物質の含有量が減少してきているのではないかと指摘した。


亜鉛の摂取源といえば牡蠣、それから肉類、次いで木の実や豆なので、野菜はあまり寄与していないはず・・。
と思って牡蠣の亜鉛含量を検索してみたら
オーストラリア
http://www.foodstandards.gov.au/monitoringandsurveillance/nuttab2006/onlineversionintroduction/onlineversion.cfm?&action=nutrientFoods&nutrientID=ZN
Oyster, Raw 47.9 mg/100g


米国USDA
http://www.nal.usda.gov/fnic/foodcomp/Data/SR18/nutrlist/sr18w309.pdf
Oyster, eastern, wild , raw 76.28 mg/84g


食品成分データベース
http://food.tokyo.jst.go.jp/index.html
[食品番号]食品群名/食品名:[10292] 魚介類/かき/養殖、生
亜鉛 13.2 mg/100g


と、こんなに違うことがわかってしまいました。
もともと栄養成分の数値が数十パーセント違うということは良くあるので目安にすぎないのですが、こんなに違うのも珍しい。養殖だと少ないのかな?食品成分表ってそれだけ見ていても面白いですが、国際比較をするとさらに面白いです(栄養計算を仕事でしている栄養士さんは頭が痛くなるかもしれませんが)。
いずれにしても牡蠣がダントツで亜鉛の多い食品であることには間違いないです。
肉類は牡蠣より一桁少なく、葉菜はそれよりさらに一桁少ない(100gあたり)というのが事実ですから大地が痩せて云々というのは言わない方がいいと思います。食品添加物も全く関係ないでしょう。長野の高齢者は生牡蠣を食べる習慣はあまりないでしょうから、単純に肉を食べる量が少ないのかもしれません。野菜中心では不足しがちな栄養素もありますから。


追記
日本人にとって主食のごはんについては
日本
[食品番号]食品群名/食品名:[01088] 穀類/こめ/[水稲めし]/精白米
0.6 mg/100g

米国
Rice, white, short-grain, cooked
0.4 mg/100g

オーストラリア
Rice, White, Boiled, Without Added Salt
0.5 mg/100g

という数値になっています。
日本の数値は高めに出ています。品種の違いもあるのでだからどうこうということは言えませんが、特に日本に問題があるということでもないでしょう。