食品安全情報blog過去記事

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理不尽な嫌疑

Natureのコラム (昨日のACSHと同じ話題)
Unreasonable doubt
Apoorva Mandavilli
15 June 2007
http://www.nature.com/news/2007/070611/full/070611-13.html
自閉症の「ワクチン裁判」は、もし人々が陪審員の評決と科学を混乱させると壊滅的結果をもたらす可能性がある。
何故30年前より自閉症が増えたのか?この疑問には明確な答えがないが、米国におけるこの問題を科学ではなく感情で解決しようという事態を懸念している。
数千人の自閉症児の両親が、MMRワクチンや水銀を含む保存料チメロサールを使用したワクチンが、彼らの子どもたちの脳を傷害して自閉症にしたのだと考え、政府を訴えている。月曜日に連邦請求裁判所の「特別審判員」3人が約5000件の訴訟のうちの最初のヒヤリングを始めた。
私は子どもたちの病気の原因が知りたいという親の気持ちはわかるし同情もしている。しかし私は科学を信頼しているので、多くの研究でMMRワクチンもチメロサール自閉症徒は関係がないと評価されている事実を無視することはできない。一部の人は陰謀で証拠が隠されているのだと信じているのだろう。それに同情はするが、世界中の独立した科学者が導き出した信頼できる結果である。
一般からの圧力により米国は根拠はないにも関わらず2001年にワクチンからチメロサールを排除し始めたが、それでも自閉症は増加し続けている。理由はわからない。
恐ろしいのはこうれらは法廷で対応できる問題ではないということだ。

もし判決が家族の勝訴であれば、自閉症児の両親は自閉症の原因はワクチンであることが確実になったと考えるであろう。他の保護者もワクチン接種を拒否するようになるであろう。訴訟を嫌う会社はワクチン製造を止めるであろう。そしてワクチンで予防で着る病気が再び流行するであろう。
私の考えは大げさであろうか?
1998年に英国のAndrew Wakefieldらがわずか12人の子どもの事例を根拠にLancetにMMRワクチンと自閉症の関係を示唆すると報告した。その後大々的なメディア報道があり、WakefieldはMMRを三回のワクチンに分けることを主張した。ほとんどの科学団体がこれに激怒し、2004年3月には論文の著者の13人のうち10人が解釈の取り下げを発表した。
しかし英国におけるMMRワクチン摂取率は80%-62%に低下し、麻疹が再び流行し始めた。

法定外では科学者たちは自閉症の原因究明や対処法を研究している。公衆衛生としては、自閉症児の親でも、そうした活動に協力する方がより良いと思う。