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ウマノスズクサ、パン汚染、バルカン腎症 バルカン半島諸国

Birthwort, bread contamination, Balkan nephropathy Balkans
15-JUL-2007
http://www.promedmail.org/pls/promed/f?p=2400:1001:5339119479663632857::NO::F2400_P1001_BACK_PAGE,F2400_P1001_PUB_MAIL_ID:1000,38371
New Scientistの7月9日号より
クロアチアセルビアなどのバルカン半島諸国の農家に流行していた腎不全と尿路ガンが、小麦に混在していたウマノスズクサによるものであることが示唆された。
この病気は1956年に正式に認識され、バルカン腎症と呼ばれている。多くの腎障害と違ってこの病気では患者の血圧は正常であるが、腎機能が低下し透析を必要とし、その約半分が尿路上部に希なガンを発症する。
ここ数年この地域を調査していたArthur Grollmanはこの腎症がハーブ治療薬(漢方薬)によるものではないかと疑っていたが予期せずしてウマノスズクサを発見した。畑や製粉場で小麦に_Aristolochia clematis_が混入していること
を発見したのである。
PNASに発表
Arthur P. Grollman et al.
Aristolochic acid and the etiology of endemic (Balkan) nephropathy
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 10.1073/pnas.0701248104
http://www.pnas.org/cgi/content/abstract/0701248104v1
オープンアクセス


ProMEDからの注
穀物に各種雑草やマイコトキシン汚染があるのは珍しいことではない。トウモロコシのアフラトキシンライ麦の麦角などがある。ウマノスズクサウマノスズクサ科Aristolochiaceaeに属し、アリストロキア酸を含む。
アリストロキアとは「素晴らしい生」を意味し、伝統的使用法として出産を促進するために絞り汁を使った。飲むと有害なので外用だった。
テオフラトス(372-286 BCE)によればこの植物は子宮や蛇の咬傷、頭痛などに使われた。ウマノスズクサ科には350種ほどがあり、いくつかにはアメリカ先住民が蛇の咬傷の治療に使ったためスネークルート(蛇根)の名前がつけられている。腹痛や歯痛、発熱にも使われた。他たくさんの伝統的使用例がある。
ウマノスズクサ_Aristolochia clematitis_の茎や根は有毒でアリストロキア酸を含む。アリストロキア酸は白血球を活性化し創傷治癒速度を上げるとの報告があるが発ガン性があり腎傷害性がある。抗ガン活性もあるが臨床に使うには毒性が強すぎる。
ウマノスズクサには医療用としての長い使用暦があるが科学的研究はほとんど無く、現在のハーバリストはほとんど使わない。