食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

バイオテクノロジーに関するメディアの誤報に腹が立つ

Maddening Media Misinformation on Biotech
August 13, 2007
By Thomas R. DeGregori
http://www.acsh.org/factsfears/newsID.1021/news_detail.asp
現代のメディアの構造に組み込まれたバイアスについて議論する。毎日アップして全部で5回。

Maddening Media Misinformation on Biotech (Part 2 of 5)
August 14, 2007
http://www.acsh.org/factsfears/newsID.1024/news_detail.asp

Maddening Media Misinformation on Biotech (Part 3 of 5)
August 16, 2007
http://www.acsh.org/factsfears/newsID.1027/news_detail.asp

Maddening Media Misinformation on Biotech and Industrial Agriculture
(Part 4 of 5)
August 16, 2007
http://www.acsh.org/factsfears/newsID.1028/news_detail.asp

Maddening Media Misinformation on Biotech and Industrial Agriculture
(Part 5 of 5)
August 17, 2007
http://www.acsh.org/factsfears/newsID.1030/news_detail.asp

一部内容紹介
反技術(アンチテック)と反訂正(アンチコレクション)
構造的メディアバイスの二つのカテゴリーは反技術と反訂正である。アンチテックは我々の文化に巧妙に育まれてきた一般的反科学、反技術バイアスのことで、二つめの反訂正はほとんどの新聞で先の記事を直接否定する意見は許されていない(矛盾する意見が新しいものとして出されることはあっても)ことである。

科学バッシングの傾向
現代生活への批判が大きくなり、「化学物質」というのは工業生産された物質の隠語として危険と見なされ、一方天然物は良いものと見なされる。近代の農業がもたらした豊饒な農作物が多くの人の手にはいることは悪いこととされ、本来炭素を含むと言うだけの意味しかない「オーガニック」が崇拝される。

記録を修正する試み
地元紙の有機農業に関する記事で間違いが多く見られたので筆者にメールを送った。彼は間違いだったことは認めたが、新聞がそれを修正することはないだろうと述べた。
GMトウモロコシについても間違った情報しか掲載されていない。

GM勢力が組み込まれている
記事の執筆者は反GMONGOにしか取材していない。もしこれが逆にモンサント社のみだったらどうだろう?きっとスキャンダル扱いされるだろう。我々科学者はChronicle紙に記事の内容は間違いであり誰にとっても不幸なものだと文書を送ったが、将来訂正されるであろうという回答を得た後数年も放置されている。

修辞の見事さと科学的不合理
食品安全問題に関しては一般人の科学リテラシーが重要であることには議論の余地はほとんどない。例えば、遺伝子組換え食品が将来にわたって害はないことが確認されなければならないという主張は一見もっともであるが、実際には食糧生産であろうと他のことであろうと、人類の活動の中にゼロリスクのものはない。本当に問わなければならないのはリスクの比較である。

一般人にとって科学リテラシーがないことは嘆かわしいことである;メディアにとっては嘆かわしいだけでなく無責任である。

恐怖は数字より実感がある
統計の数値より「肝臓や腎臓に障害」といった有害影響の方が一般時にとってはリアルに感じられる。活動家は統計を悪用して有りもしない恐怖を煽ってきた。例えばある地方である種のガンが多発しているという情報を直ちにある種の化学物質のせいだと結論する。

次に構造的メディアバイアスの確実な例として、鳥インフルエンザの例を挙げよう。
新聞は社説で工業化した養鶏が鳥インフルエンザの原因であるかのように述べた。Wendy Orentが主張している。
Orentは人類は文明の夜明けから庭でニワトリを放し飼いにしていっしょに暮らしていたとロマンチックに語る。そのころからトリは病気になっていたが、ロマンチストはそれを否定する。インフルエンザはヒトとブタやニワトリがいっしょに暮らしているアジアの小規模農家から生まれて世界中に広まったことも否定する。

英国での反響
英国でも同様の新聞報道があった。英国の市販のチキンの多くに細菌汚染があると報道されたが、実は放し飼いチキンの方が細菌汚染率が高かったのである。さらにダイオキシンなどの汚染物質も放し飼いチキンの方が多く、屋外でニワトリを飼うことによる(ラットや渡り鳥との接触による)各種感染症のリスクも大きい。

次にホウレンソウの大腸菌O157汚染についての例を挙げる。
オーガニックを標榜する農場で、「牧草で育てたウシはO157感染し難い」との主張がなされていた。そこでO157の発生源は産業的飼育をしていた(穀物を与えられていた)農場のせいだと主張された。実際にはどちらもO157に感染する。