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動物飼料中の望ましくない物質としてのグルコシノレート CONTAMパネルの意見

Glucosinolates as undesirable substance in animal feed - Scientific Opinion of the Panel on Contaminants in the Food Chain
15/01/2008
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1178678427782.htm
グルコシノレート類 (β-D-チオグルコピラノシド基を持つアルキルアルドキシム-O-硫酸エステル類)は、キャノーラなどの重要な農業用作物を含むアブラナ科の植物に含まれる。グルコシノレート類はこれら植物の全ての部位に含まれ、特に種子に多い。これらアブラナ科の植物のうちいくつかは重要な飼料用作物で、カリフラワーやキャベツ、ブロッコリー芽キャベツなど一部はヒト食用である。グルコシノレート類とその分解産物はこれらの野菜に特徴的な風味や味を決める。
個々のグルコシノレート類は側鎖の立体配置や構造が異なる。親水性で、加工や脱脂を経た油用種子の圧搾ケーキ中に安定に存在する。しかしグルコシノレート産生植物や一部の微生物はベータチオグルコシダーゼ(ミロシナーゼ)を含む。無傷の植物では酵素とグルコシノレートは分かれて存在しているが、植物が傷つくと(噛むことを含む)ミロシナーゼが放出されて水の存在下で、イソチオシアネートやオキサゾリジンチオン(5-ビニル-2-オキサゾリジンチオン及び5-ビニルl-1,3オキサゾリジン-2-チオン)、チオシアン酸、ニトリル類、エピチオニトリル類及びその他のインドール-3-イルメチル誘導体類などの各種分解産物に変換される。植物グルコシノレート類のほ乳類に与える生物影響は主にこれらの化合物による。これらはヨウ素の取り込みを阻害し(チオシアン酸イオン)、甲状腺ホルモントリヨードチロニン(T3)及び血漿チロキシン(T4)の合成を阻害して最終的には甲状腺機能低下と甲状腺の肥大(甲状腺腫)を誘発する。これらの甲状腺機能変化に伴って、家畜での有害作用としては成長抑制、ミルクや卵の生産量低下、生殖機能不全、 肝や腎機能不全などの症状が出る。個々のグルコシノレートの食用動物での毒性に関するデータは限られており、ほとんどの場合加水分解グルコース定量により間接的に測定した飼料中グルコシノレート類の総量がわかっているだけである。菜種ミール又は圧搾ケーキの家畜での給餌試験のみが行われており、単胃動物では総グルコシノレート量を動物用飼料中1 1.5 mmol /kg以下に制限するよう推奨されている。若い動物ではもっと少ない。
グルコシノレートの高濃度により有害影響が出ることから、グルコシノレート量の少ない(さらに油中エルカ酸含量も低い)品種の選択が30年以上前から始まっており、特に菜種でグルコシノレート含量の少ない品種が使われている。
家畜での中毒や生産性低下を防ぐ方法としてグルコシノレート含量の少ない品種を選ぶことと高いものは前処理することと飼料に使う量を制限することは有効であった。しかしながら、より正確に動物への暴露を制限するため、進歩した分析方法を用いて主要グルコシノレートを定量する方法を取り入れるべきである。
グルコシノレートを含む餌を与えた動物の可食部にグルコシノレートやその分解物が残存することは極めて希である。ミルクへの移行は与えた量の約0.1%で、筋肉や組織ではもっと低い。一部の鶏ではグルコシノレート分解物の卵への移行が望ましくない魚臭さを与える。しかしながらいずれもヒトが野菜から摂る量より少なく、消費者の健康上の懸念はない。