食品安全情報blog過去記事

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GM大豆を巡る議論

Nature Biotechnology
December 2007, Volume 25 No 12 PP1351-1358
http://www.nature.com/nbt/journal/v25/n12/index.html
Opinion and Comment
GM soybeans―revisiting a controversial format
細かく紹介するのは難しいので概要のみ。
Nature Biotechnologyの9月の25, 981 - 987 (2007)特集記事でErmakova博士の実験の概要と専門家の批判が掲載された。
GM soybeans and health safety―a controversy reexamined
http://www.nature.com/nbt/journal/v25/n9/full/nbt0907-981.html
それに対して、いくつか不適切であるとの指摘と、本人が反論している記事。
例えば、ADM社は「100%遺伝子組換え大豆」や「100%遺伝子組換えでない大豆」を売っていないしこれまで売ったこともないという批判に対して、PCRの図を出していたりしている(でも売ってない以上この図の意味は何なんだろう?)。
それから批判は全てGM賛成派からのものだから受け入れられないとか(彼女の定義によればほぼ全ての科学者がGM賛成派になってしまう)。何故論文発表しないでメディアや市民団体主体に発表しているのかという疑問に対しては、論文をピアレビューのある雑誌に投稿したがバイオテック企業の陰謀により出版されないと主張している。
ちなみに「現在GM大豆がラットの行動に悪影響があるというデータを得ていて別の論文に発表する」そう。標準実験プロトコールに従わないのはそれが「不自然」だからで、自分の実験条件が「ナチュラル」だから。実際Ermakova博士の実験では実験動物では普通見られない赤ちゃんの自然死がたくさん出ていて「自然に近い」とか。
(実験用動物の「自然状態」なんてあり得ないと思うけど。アルビノのドブネズミがたくさん住んでいる「自然」なんて・・読んでいて頭が痛くなるような低次元の話が続く。Nature Biotechnologyはいつから三流ゴシップ雑誌になったのか、と。言い分を全て掲載しろという要求に従ったのだろうけれど・・)


編集者からは記事の編集の仕方に対する疑問への回答と、9月の記事でErmakova博士を批判していた研究者らによる再批判。
Ermakova博士は自分の「データ」を、ピアレビューを経た専門誌に発表することなく、自らの手で記者発表したりインターネットに掲載したりして吹聴して回っていた。こうした行為は通常の科学雑誌では論文投稿の手順としては認められない。従ってErmakova博士が公開したデータを元にNature Biotechnologyはその批判を掲載した。Ermakova博士の「論文」をNature Biotechnoligyに掲載してから批判すべきだという批判はこの事例では適切ではない。さらに編集者はErmakova博士に自分のデータを自分の言葉で説明するよう依頼する手紙を書いて本人からの返事ももらっており、そのやりとりを公開もしている。
http://www.nature.com/nbt/journal/v25/n12/extref/nbt1207-1359-S1.pdf
(結局Ermakova博士はまともな回答をひとつもしていない)
今回のような普通でない事態について、いくつか手続き上の瑕疵は認めているが、Nature BiotechnologyはErmakova博士からのさらなる回答を待っている。


なおこの件についてACNFPは2007年9月20日の会合で、Ermakova博士がピアレビューのある雑誌に論文を出すと言っているので情報収集を続けると短く言及している。
http://www.acnfp.gov.uk/meetings/acnfpmeet2007/acnfpmeet20sep07/acnfpmin20sep07
(Ermakova博士は上述のNature Biotechnologyの記事の中でACNFPについても文句を言っている。ただACNFPからの質問にまともな回答をしているわけではない。結局そういう人だということ。)