食品安全情報blog過去記事

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その他

  • ホレート

Phorate
JMPR 2004
http://www.fao.org/ag/AGP/AGPP/Pesticid/JMPR/DOWNLOAD/2004_rep/report2004jmpr.pdf
150ページから
ARfD:0.003 mg/kg bw
 ラットの単回投与試験での縮瞳のNOAEL 0.25 mg/kg bw、安全係数100。
LOAELは0.5 mg/kg bwで、ラットに強制経口投与した場合、オスは20匹中2匹で、メスも20匹中2匹で縮瞳が観察された。1 mg/kgではオスの20匹中2匹、メスの20匹中5匹に縮瞳、メスの20匹中2匹に振戦、メスの1匹に痙攣・後ろ肢を引きずるなどの影響が見られている。この時のメスの脳や赤血球のコリンエステラーゼ活性の抑制は65%、オスでは有意な活性低下は見られなかった(14-21%低下)。

  • パラチオン

PARATHION
1995
http://www.inchem.org/documents/jmpr/jmpmono/v95pr13.htm
ADI 0-0.004 mg/kg bw
ARfD 0.01 mg/kg bw
ヒトにおける赤血球アセチルコリンエステラーゼ活性阻害作用のない最高濃度である7.5 mg/日(0.1 mg/kgに相当)に安全係数10を採用して導き出したもの。
この実験では男性5人に5日間7.5 mg/日のパラチオンを投与した。血漿コリンエステラーゼ活性のほうが赤血球コリンエステラーゼ活性より感受性が高く、投与後16日の平均活性減少は28%であった。(1958年の実験・・今ならできないだろうなぁ)
パラチオンメチルやメタミドホスとは相加的に作用し相乗効果はない。
遺伝毒性はない。発がん性は分類できない(あるというデータはない)

  • パラチオンメチル

PARATHION-METHYL
1995
http://www.inchem.org/documents/jmpr/jmpmono/v95pr14.htm
ADI 0.003 mg/kg bw
ARfD 0.03 mg/kg bw
ヒトで赤血球アセチルコリンエステラーゼ活性を抑制しない最大経口投与量(総量)19 mg/kg体重(0.3 mg/kg /日に相当)に安全係数10を採用したもの。

http://biotech.nikkeibp.co.jp/fsn/kiji.jsp?kiji=1945
(有料サイト内コンテンツだが1週間経てば無料で読める)

どれもNOAELやLOAELは0.1-0.8mg/kgの間で、体重50kgのヒトだと5-40 mg、1-2 ppmの検出量だと数キロは食べないといけない


さらに毎日新聞の記事に一言

農水省農薬対策室によると、一日に摂取して健康を損なう量はパラチオンが体重1キロ当たり0.01ミリグラム、パラチオンメチルが同0.03ミリグラム
http://mainichi.jp/select/today/news/20080221k0000m040131000c.html

0.01と0.03mgというのはARfDのことだと思うけれどこれは直ちに「健康を損なう量」ではない。むしろ「念のため対策をとった方が良い量」。
安全係数が大きければ大きいほど良い、という思考法だと限りなく不安に苛まれることになる。例えば貯金が大体100万円必要だとして、その10倍ないと不安、いやもっとなくちゃ、などと言っていたらいつまでも不安。
食品の化学物質関係リスクは、実質的にゼロリスクであることに慣れすぎていて、できるだけ定量的に正確に評価しようという姿勢に欠ける部分がある。許容できるリスクレベルと実際のリスクとを限界まで突き詰めて考える、ということを普段やらないので、危機の際の適切な判断が非常に難しい。
過大評価も過小評価も望ましいことではない。