ScienceNOWより
The Problem with Prozac
Martin Enserink
27 February 2008
http://sciencenow.sciencemag.org/cgi/content/full/2008/227/2?etoc
「プロザック世代」の抗うつ剤はミラクルドラッグともてはやされ、製薬業界に何十億ドルもの利益をもたらした。しかし新しく発表された研究では使用患者の一部にしか効果はないと主張している。いわゆるセロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)がプラセボより高い効果を示すのは重症のうつ患者だけだと英国の心理学者Irving Kirschは主張している。
情報公開法によりKirschはFDAから1987年から1999年に認可されたSSRIの臨床試験データを入手した。2002年に大きな議論を引き起こした論文でKirschは欝のハミルトンスケール(52ポイントからなる)で薬物がたった1.8ポイントしか改善しない(統計学的には有意であるが意味がない差)ことを示した。しかしこの論文は、全体として評価しているため患者亜集団での改善が隠されてしまうとの批判を受けた。そこでKirschは同じデータを再び解析してPLoS Medicineに発表した。プラセボ群に比べて薬物群(製品名Prozac、Effexor、Serzone及び Paxil)は非常に重い欝の患者でのみ利益があった。
しかしKirschの主張に同意しない人もいる。Kirschの解析した試験ではプラセボ群の反応率が非常に高い。臨床試験のデザインそのものが参加者のプラセボ効果を高めて薬物の影響を隠してしまう可能性がある(治験コーディネーターなどから通常の治療以上に構ってもらえるので欝からの回復が促進されてしまう。さらにこの手の薬物がミラクルドラッグともてはやされていたため期待値が高かったことも関係する)。臨床上抗うつ剤は効果がある。
オープンアクセス
Irving Kirsch et al.
Initial Severity and Antidepressant Benefits: A Meta-Analysis of Data Submitted to the Food and Drug Administration
http://medicine.plosjournals.org/perlserv/?request=get-document&doi=10.1371%2Fjournal.pmed.0050045
(抗うつ剤はプラセボ効果がやたら大きい。食べ物の味などもそうなのだけれどこの手の心理的影響が大きいものを客観的に評価するのは難しい。)