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ドイツの大学がGM作物に対する圧力に屈する

Natureニュース
German universities bow to public pressure over GM crops
Published online 14 May 2008 | Nature |
http://www.nature.com/news/2008/080514/full/453263a.html
ドイツの二つの大学が遺伝子組換え作物の野外試験を断念したことを、科学者の研究の自由への恥ずべき干渉であると非難している。
先月ギーセンの Justus Liebig大学が、Gross-Gerau近郊での昆虫耐性GMトウモロコシの栽培計画を、活動家たちが1500平方メートルの耕作地を占拠したため中止すると発表した。またRauischholzhausenでの野外試験の計画も市民や地元の政治家たちからの強い反対により中止された。いずれもBVLが承認し、ドイツ農業種子機関が委託していたものである。
4月初めにはN rtingen-Geislingen大学の外部助言委員会がGMトウモロコシの野外試験中止を「緊急助言」している。これらの試験もBVLが認めており1996年から行われている。大学総長の経済学者Werner Zieglerによれば「電子メールによる抗議や破壊行為や脅迫が止まず、もはや制御できない。人々はこの大学を「モンサント大学」と呼び始めている。そして野外試験の場所を占拠している活動家たちに地元の住民が食糧や毛布を提供し地元メディアがこうした違法行為を英雄的活動として賞賛していることが決定的となった。」
この実験はトウモロコシのカビ毒を研究しているAndreas Schierが行っていたものである。法的には大学は彼に実験の中止を命令することはできないが、彼はあまりにも大きな圧力に耐えられなくなった。「科学的にはこの実験を中止する理由はない。しかし科学的議論は大衆ヒステリーに対抗できない。」
Max Planck植物交配研究所長であるHeinz Saedlerは、「大学が一般からの圧力や不法行為に対して抵抗できないことは残念なことである。ドイツでのGM作物の学術研究にはあまり将来はないというしかない」と述べている。
ドイツやヨーロッパではGM作物への破壊行為は20年前に野外試験が始まったときからよく見られる。その結果としてこの分野の研究は貧困になった。ヨーロッパのGM作物の栽培研究は米国やブラジルやカナダに比べてほとんど無いに等しい。King's College Londonのバイオテクノロジー客員教授Vivian Mosesはこう述べている。少なくとも短期的には経済的に見合わないため野外試験は行われないだろうが我々は迫り来る世界食糧危機の現実を直視しなければならない。それともヨーロッパは近代農業技術を無視して現実から目を背け続けるのだろうか?

(最先端の農業技術を研究したかったら中国の方がいいかも。感情にまかせて地産地消とか自給率アップとか言っているだけの日本も先は見えないし・・・)