食品安全情報blog過去記事

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合成ゼアキサンチンの食品サプリメント成分としての安全性 NDAパネルの意見

Safety of ‘synthetic Zeaxanthin as an ingredient in food supplements’
[1] - Scientific Opinion of the Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies
25/06/2008
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1178717463740.htm
欧州委員会から、合成ゼアキサンチンの食品サプリメント成分(最大1日20 mg)としての安全性について諮問された。特に加盟国から寄せられた反対意見について検討するよう依頼された。
ゼアキサンチンはルテイン((3R,3’R,6’R)-β, ε-カロテン-3,3´-ジオール)に次いで最もよくあるヒト食品中キサントフィルである。ゼアキサンチンの主な摂取源は黄色/オレンジ/赤の果物や緑黄色野菜、卵黄などである。食品からのキサントフィルの摂取量推定は分析上の理由から通常ルテインとゼアキサンチンを区別していない。
ゼアキサンチンは化学合成により合成され、製品の主なゼアキサンチン異性体はオールトランスゼアキサンチンである(少なくとも96%)。分析データからは鉛やその他重金属などの不純物は許容値以内である。合成ゼアキサンチンは結晶としてそのまま販売されることはなく、5%及び20%のゼアキサンチンにアルファトコフェロールなどを添加した3つの異な調整品として販売される。成分の安定性は示されている。
合成ゼアキサンチンは必須栄養素ではなく実質的プロビタミンA活性もない。ゼアキサンチンのヒトにおける生物学的利用度は一緒に食べる食品などにより異なるだろう。申請者の提出したデータによれば食品からのゼアキサンチンの生物学的利用度は一般的に極めて低いようだ。健康な成人が1及び10 mgの錠剤にしたゼアキサンチンを食べると血漿中ゼアキサンチン濃度がわずかに増加する(約50 nmol/Lからそれぞれ200及び920 nmol/Lに)。高用量での吸収率は低用量より約40%低い。最大20 mg/日までの摂取では健康な人の血漿カロテノイド濃度に影響を与えない。30 mg/日ではゼアキサンチンは眼の黄斑に蓄積する。 ゼアキサンチンはラットでは脂肪組織や肝臓などに蓄積し、サルでは脂肪組織と肝臓と眼に蓄積する。
ヨーロッパにおける食品からのゼアキサンチンの平均摂取量は0.2-0.9 mg/日と推定され、ゼアキサンチンの多い野菜や果物を多く食べるヒトで1.8 mg/日(95パーセンタイル)になると推定される。申請者は食品サプリメントとして最大1日20 mgの合成ゼアキサンチンの使用を提案している。従って申請された使用方法では平均的摂取量の最大100倍量を摂ることになる。
齧歯類やイヌやサルでの毒性試験では、血漿や肝のゼアキサンチン濃度増加の他、糞や脂肪組織の変色以外の影響は見られていない。これらは毒性学的に意味があるとはみなされない。遺伝毒性や母胎毒性や催奇形性はない。慢性毒性や発がん性試験は行われていない。
ヒトボランティアで毎日10-30 mgのゼアキサンチンを4-6ヶ月毎日摂った場合に有害影響は報告されていない。
アルファカロテンのサプリメント使用により喫煙者の肺がんリスクが増加することから、ゼアキサンチンとアルファカロテンの構造類似性を検討した。データからは食品中のゼアキサンチンが同じような作用があるとは考えられないが、サプリメントとして摂ったゼアキサンチンについてはデータがない。ゼアキサンチンとアルファカロテンには化学構造・安定性・吸収・代謝・機能に違いがある。しかしゼアキサンチンの異物代謝酵素への影響や煙草の煙に曝した動物モデルでの試験は行われていない。入手できるデータからはゼアキサンチンの提案されている使用による喫煙者の肺がんリスク増加について評価することはできない。
提案されている最大1日20 mgの合成ゼアキサンチンは通常の成人の摂取量の最大100倍になりうる。これらの摂取量はJECFAが設定したルテインとゼアキサンチンのグループADI 0-2 mg/kgの範囲内である。しかし合成ゼアキサンチンについて提出されたデータはADIを設定するには十分ではない。
既存のデータからは合成ゼアキサンチンの食品サプリメント成分としての安全性は確認できない。