食品安全情報blog過去記事

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読売新聞の記事について
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080906-OYT1T00503.htm
BPAのTDIは当然のことながら経口摂取を想定している。
このグループはプレスリリースでも論文のアブストラクトでも投与経路に意図的に言及していないように見える。
同様の実験をラットでやっているのがオープンアクセスで読めるので参照。
Bisphenol A Prevents the Synaptogenic Response to Testosterone in the Brain of Adult Male Rats
http://endo.endojournals.org/cgi/content/short/en.2007-1053v1
The Environmental Estrogen Bisphenol A Inhibits Estradiol-Induced Hippocampal Synaptogenesis
http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?artid=1257590
いずれも去勢または卵巣摘出して通常のホルモン分泌をできなくした動物に、外からホルモンを投与したときの、脳における神経細胞樹状突起スパイン棘突起 )部分でのシナプスの数を電子顕微鏡写真で数えたもの。
ラットの実験でも規制値より低い濃度で影響があったという趣旨の記述をしている。

ビスフェノールAは初回通過効果(腸管から吸収されて血中に入って最初に肝臓を経由してから全身に分布する。この時の肝臓での代謝のこと。)が極めて大きく、ヒトの場合口から摂っても血中にはほとんど遊離のBPAが検出できない。 だからEFSAが問題なしとしている。
http://www.efsa.eu.int/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902017492.htm
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20080724#p5
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20080724#p6


先日最終報告が発表されたNTPの報告書でも、このグループによる一連の皮下投与実験は経口投与でないので評価対象になっていない。なので例え霊長類の実験であったとしても経口ではないならBPA評価にほとんど影響しないだろう。
読売も「科学」の記事のつもりなら、経口による毒性は経口投与でしか評価しないことをいい加減に覚えてくれないだろうか。食べるものを「注射したら悪影響があったから危険だ」などとと言っていたら食べるものが無くなってしまう。