食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

長官のコラム

Chief Executive’s column
11 November 2008
http://www.nzfsa.govt.nz/publications/ce-column/ce-column.htm
前回のFood Focusで、私はNZFSAの政策決定の背景や意図について説明するウェブコラムを書くという意向を表明した。このコラムは人々が我々の政策決定の背景にある科学や何故そのような結論に到達したのか、どのようなリスクがあるのかなどを理解する一助となるように書かれる。
この仕事を始める前に不運にも中国産食品のメラミン事件が起こり大変だった。だから最初のトピックとしてメラミンについて取り上げるのがいいと思う。
最近の事件がおこるまで、メラミンのヒトへの影響についてはあまり知られていなかった。しかしこの物質は加工や包装において容器から微量溶出し我々の日常生活の一部となっている。そしてヨーロッパでは食品中に30ppmまで許容しているし他の多数の国で同様の規則だった。
国際的食品安全機関はこのような量で悪影響はないと信じていた。これは最大1800 ppmがミルクに検出されていて大きな子どもや成人ではほとんど有害影響がなかった中国の事件でも確認されたように見える。悪影響があったのは主にミルクが唯一の、又は主な栄養源であった乳幼児であった。
世界中に懸念が広がった時、決定を行うための基礎となる科学はまだ不完全であった。この物質は食品に高濃度に検出されるものではないが、米国の昨年のメラミン入り飼料の問題の研究から、メラミンとシアヌル酸が同時に存在すると腎臓障害がおこる可能性があるようだ。しかしこれは推測であって決定的ではなかった。
我々の食品からメラミンを完全に排除するのは現実的でないことは明確で、低濃度では有害ではないことから「検出されてはならない」ことを要求する必要はない。しかしながらNZFSAは、他の世界中の食品安全担当機関同様、調査や対応を行うための引き金となる濃度を決める必要があった。食品への意図的添加には厳しく迅速に対応する必要はあるが、容器やプラスチックの道具からの溶出には悪意はなく無害である。
NZFSAは対応すべき濃度を決めるのに、オーストラリアやカナダ、ヨーロッパ、米国、WHOなどと協力した。
EFSAはTDIを0.5 mg/kg/日とし、これは体重20 kgの子どもなら毎日一生涯にわたって10 mgのメラミンを食べ続けても何の悪影響もないということである。 70kgの成人なら1日35mgとなる。TDIには非常に大きな安全性マージンも含まれる。
これをもとにNZFSAはメラミンのリスク管理戦略を決定した。乳児用ミルクについては1 ppm、他のほとんどの食品については2.5 ppm閾値に設定し、これ以上の濃度が検出された場合にはリスク評価を行って、もしTDIを超えることが予想されれば、あるいは意図的混入の疑いがあれば、必要な対応を行う。
知識が不完全なままの政策決定は食品安全機関としてはあまりないことであり、保守的アプローチが採用される。しかしゼロトレランスの採用は科学的に支持できないし巨額の費用と食べても安全な食品の無駄を生じることが明白である。今回採用した戦略は賢明な妥協である。
Andrew McKenzie
FDAの長官もFSAの科学主任も自分のコーナーを持っているのはAndrew。)