食品安全情報blog過去記事

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EFSAは飼料中のラクトパミンの安全性を評価

EFSA evaluates safety of Ractopamine in feed
7 April 2009
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902437175.htm
EFSAのFEEDAPパネルはEU以外の一部の国で成長促進剤として使用されているラクトパミンの安全性についての意見を発表した。
ラクトパミンはβアゴニストのカテゴリーに属する薬物で、EUでは一部治療目的での使用を除き、食用動物への使用は禁止されている。EU以外の国では体重増加速度を速め飼料効率を高め赤身を増やす目的でブタやウシに定期的に使用されているところがある。
JECFAのリスク評価に基づきコーデックス委員会ラクトパミンの最大残留量を提案している。欧州委員会はEFSAにJECFAのリスク評価のレビューを依頼した。
EFSAのFEEDAPパネルはJECFAの評価のもとになったデータの弱点を発見した。ヒトの心血管系への影響に関する研究はADI設定の根拠とはできないとFEEDAPパネルは考える。EFSAはβアゴニストに関するCommunity Reference LaboratoryとEMEAに相談しその結果を意見に反映させた。

  • ラクトパミンの安全性評価

Safety evaluation of ractopamine
7 April 2009
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902436747.htm
塩酸ラクトパミンは、フェネタノールアミンβアドレナリン受容体作動薬に分類される。ブタやウシの肥育促進用飼料添加物として米国・カナダ・日本・メキシコなどで認可されている。EUではこれまで評価されたことはない。
欧州委員会がJECFAの塩酸ラクトパミン評価についての意見をEFSAに求めた。
塩酸ラクトパミン代謝はブタやウシや実験動物やヒトで同様である。
FEEDAPパネルはイヌで見られた急性影響試験での頻脈や末梢血管拡張作用は期待される薬理作用に合致したものであると考える。他のイヌでの急性試験から、薬理学的NOAELは2 microg/kg体重となる。イヌとサルのデータを比べるとイヌの方が感受性が高いと考えられるがデータは十分ではない。
肺のβアドレナリン受容体でダウンレギュレーションが観察されているため、 少なくともβアドレナリン受容体の用量や時間による変動が明確にならない限り、薬理学的反復試験でのNOAELはADIの意味のある根拠とはみなせない。消費者に仮定されるリスクを評価する場合には、急性の薬理試験のほうが残留ラクトパミンを含む肉を食べた後の消費者の状況をより良く反映するであろう。
毒性学的エンドポイントから導いたNOAELは薬理学的エンドポイントから導いた値よりかなり高い。毒性試験で観察された影響のほとんどは薬理作用に関連する。
真核生物や原核生物での一連の変異原性試験の結果は陰性であるがいくつかのin vitro試験で陽性である。FEEDAPパネルはいくつかのin vitroでの遺伝毒性試験陽性の結果は懸念材料となりうると考えるが、発がん性試験とあわせて検討しなければならない。
マウスやラットでの長期試験で観察された処置に関連する影響は全てラクトパミンのβアドレナリン作動作用による。JECFAとFDAは平滑筋腫の誘発は閾値のある非遺伝毒性影響でラクトパミンは直接的発がん物質ではないと考えている。全ての研究を検討し、FEEDAPパネルはラクトパミンが変異原性はなく消費者への発がんリスクとはならないと結論した。
実験動物でのデータからは多様なNOAELが得られているが、JECFAもFEEDAPパネルも消費者への安全性を評価するにはヒトデータが重要だと考えている。
JECFAは6人の健康なボランティアでの研究から、NOAEL 67 microg/kgと安全係数50を用いてADIを0-1 microg/kg体重とした。このヒト試験は二重盲検での大規模試験による用量反応相関を見る際の用量設定のための非盲検予備的試験で、無影響量を見るための試験ではない。二重盲検ではないためプラセボ効果によるバイアスが否定できない。
安全係数推定のためにはβアドレナリン刺激による有害影響リスクの高い亜集団での検討が必要である。JECFAがADI設定のために用いた安全係数はハイリスク集団について考慮していない。
さらにFEEDAPパネルはヒトデータは集団の平均値ではなく個別の反応に基づくべきであるとし最小投与量5 mgを無影響量とは考えられない。5mg以下の投与量でのデータがないため、NOEL決定のためにベンチマーク法を使ってみたが、ベンチマーク用量の下方信頼限界が0mgになるためNOELは設定できない。
さらにもしADIを薬理学試験から導出するのであれば、NOELは臨床的に意味のある影響だけではなく、たとえ短時間しかおこらないとしても消費者の不快感も問題にすべきである。NOELの不確実性についてはより大きな安全係数でバランスを取るべきである。
FEEDAPパネルはそのヒト試験はJECFAの提案したADIの根拠とはできず、従ってラクトパミンのMRLは設定できないと結論した。