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予防のための栄養:ネガティブな試験結果は研究者に最初からやり直すことを求める

Nutrients for Prevention: Negative Trials Send Researchers Back to Drawing Board
Brian Vastag
Journal of the National Cancer Institute 2009 101(7):446-451;
doi:10.1093/jnci/djp073
http://jnci.oxfordjournals.org/cgi/content/full/101/7/446
ビタミン錠剤でがんを予防しようという夢は急速に萎みつつある。ここ数ヶ月、臨床試験や観察研究の結果からはビタミンCやDやEやセレン、カルシウム、葉酸などの微量栄養素の添加には何の利益もない−そして時に有害影響がある−ことが報告されている。
こうした知見は化学予防分野の研究者たちを酔いから醒めさせ、ビタミンやミネラルが役に立つ可能性を評価するために用いた方法の全体的再評価を促している。
栄養とがんを研究しているイリノイ大学の医師で疫学研究者のPeter Gann博士は「失望だらけだ。これらの費用のかかる研究を計画していたときにはたくさんの希望があった。これらの介入試験には大きな掛け金がかけられていた。」と言っている。
これらの結果を受けて、研究者たちはビタミンやミネラルががんの形成や増殖にどう影響するのかについてもっと基礎的研究やヒトでの小規模の探索的研究をしなければならないだろう。一般人のがん予防についての展望はこれまでより暗い。ほとんど信じられないほどに、どの研究でもメリットはなく、有害影響すら示唆された。こうした結果を見れば、栄養が十分な西洋人に微量栄養素についての試験を行うことを薦めるのは難しい。
一つだけ明るいのは今回報告された中国での胃がん抑制報告である。ただし中国のLinxianでは食生活が貧しく多くの人が微量栄養素不足である。
(ビタミンとミネラルの最近の試験の結果の表がある)
中略
食事とがんについての疫学研究で観察された関連は、単一の成分によるのではなく食物全体や食生活パターンの影響であるのだろう。野菜はあらゆる化合物の複雑な混合物である。抗酸化物質でも一つだけ取り出して大量に摂ろうとするのは無理がある。酸化的ストレスは感染と闘うなどの身体にとって良い機能もあるのだ。


中国での試験
You-Lin Qiao et al.
Total and Cancer Mortality After Supplementation With Vitamins and Minerals: Follow-up of the Linxian General Population Nutrition Intervention Trial
J. Natl. Cancer Inst. 2009 101: 507-518; doi:10.1093/jnci/djp037