食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

米のヒ素:栄養素消失のレシピ

ES & T
Arsenic in rice: a recipe for nutrient loss
October 7, 2009
http://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/es902922b
ES&Tに発表された新しい研究(2009, DOI 10.1021/es901825t)によれば、イネがヒ素を取り込むとセレンなどの微量栄養素が米から減ってしまう。この知見はアジアの人々にとっては悪いニュースである。しかしもう一つの論文(2009, DOI 10.1021/es901844q)ではヒ素を排除できるイネの品種改良の可能性を示している。
ヒ素は安全量が設定できない発がん物質で世界中で数百万人が影響を受けている。ほとんどの研究は井戸水のヒ素についてのものであるが、食品もまたヒ素の摂取源である。
米のヒ素含量は通常100-500 microg/kgであるが、アジアでの米の消費量が少なくとも200g/日なので、米からのヒ素暴露はWHOの水の基準値10 microg/kgの水を1日2kg飲む場合と同等又はそれ以上になる。
田んぼの酸素の乏しい還元条件は、土壌中のヒ素を動員し植物に吸収されやすくする。一つの解決策としてヒ素耐性イネの開発がある。バングラデシュ、インド、中国で栽培されているイネ13品種の米中ヒ素濃度は最大14倍の違いがあり、ヒ素の少ない品種が出来る可能性はある。
中国では米の無機ヒ素濃度基準を150ppbに設定し、英国では4.5才未満の子どものライスミルク摂取を禁止した。EFSAは現在米のヒ素についてレビューしている。
(日本では食品安全委員会がヒジキのヒ素をレビュー中)