- 21世紀のインチキ
CBS
21st Century Snake Oil
April 18, 2010
http://www.cbsnews.com/stories/2010/04/16/60minutes/main6402854.shtml
CBSの番組"60 Minutes"のカメラが末期患者を食い物にする医療詐欺師を追う
かつて詐欺師はインチキ薬を持って町から町へ売り歩いたものだ。今やインチキ医療はかつてないほど巨大になっている。そしてかつて売られていた「中国産の蛇の脂」は「幹細胞」になっている。幹細胞はいつの日か治療に使えるかもしれないが、詐欺師はインターネットで自閉症や多発性硬化症や各種がんを治せると謳っている。
わらにもすがる思いの人々は彼らの命をだまし取られている。
(隠しカメラで詐欺師Lawrence R. Stoweを追跡した番組らしい。カメラは彼が根っからの嘘つきでサイコパスであることを明らかにしていく、らしい)
- ドクターズデータが多数の裁判に直面
Quackwatch
Doctor's Data Facing Multiple Lawsuits
April 20, 2010
http://www.quackwatch.org/01QuackeryRelatedTopics/Tests/doctors_data.html
毛髪や尿の検査を行っているDoctor's Data, Inc. (DDI)が一緒に訴えられた裁判が1年間で少なくとも3件はある。
毛髪や尿の検査をしてインチキな病名をつけて必要のないサプリメントやキレート療法を薦めたりするという商売。
- チェルノブイリの健康影響に関する議論再燃
Debate over health effects of Chernobyl re-ignited
Ed Holt
The Lancet, Volume 375, Issue 9724, Pages 1424 - 1425, 24 April 2010
新しい研究の発表により、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故の放射性降下物による真の疾患負荷についての議論が再燃している。
Southern Alabama大学のWladimir Wertelecki らがPediatricsに発表した研究では、2005年のWHOなどの研究とは全く違ってウクライナのある地方で出生時欠損の平均出現率が増加していることを見いだしている。
2000-2006年のRivneでの出産96 438児を調べ、神経管欠損が1万人あたり22でヨーロッパ平均の9より高い。放射線が原因だとは断定しておらず高い飲酒率と平均的食生活の貧しさによる葉酸欠損も関与する可能性はある。
Werteleckiらはこの地方の出生時欠損の原因同定と予防のために、広範な研究が必要だと述べている。
- プラスチックがDNA分析を邪魔する
Natureニュース
Plastics hamper DNA assays
Published online 23 April 2010 | Nature | doi:10.1038/news.2010.200
http://www.nature.com/news/2010/100423/full/news.2010.200.html
DNAやタンパク質の濃度を標準プラスチック試験管で測定しているとプラスチックから溶出する物質により値が不正確かもしれない。分子生物学でよく使われる方法で、220-260 nmに吸収をもつ化合物が溶出して最大300%の誤差が生じるという論文が発表された。
(温度と溶液とメーカーによるらしい)
- がんゲノムプロジェクトに懐疑的問い
ScienceInsider
A Skeptic Questions Cancer Genome Projects
by Jocelyn Kaiser on April 23, 2010
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2010/04/a-skeptic-questions-cancer-genom.html?etoc
数百万ドルの研究費をつぎ込んでバイオメディカル研究者たちは数千のがん検体のゲノム配列を決定し始めている。しかしがん遺伝学の先導者Bert Vogelsteinがこのやりかたに意味があるのかどうか疑義を呈している。
AACR年次会合でVogelsteinは2007年以降発表されたがんに関係する21000の遺伝子配列を決定した論文を精査した。さらに自身の研究チームによる未発表データも加えた。
がんゲノムについては100検体の腫瘍のデータで多くの疑問に答えることができる。例えば普通のがんは白血病のような発症が早いもの(約10変異)を除けば30-80の単一塩基突然変異をもち、肺がんや悪性黒色腫のような多数の変異を誘発する環境発がん物質により生じたがんは100-200の変異を持ちこれらが最高レベルである。これが基本パターンである。
さらに過去20年間に固形がんで発見された全ての突然変異データベースを検索した。これには353種類のがんから3142の遺伝子について130072の突然変異が含まれる。しかしこの全てががんに寄与するわけではない。問題はどれががんの誘発に関わるか、識別することである。Vogelsteinはがん抑制遺伝子の場合はタンパク質の切断につながるもの、がん原遺伝子の場合は少なくとも複数のがんで見つかっているものをがんの誘発に関与する遺伝子とみなし、抑制遺伝子で286、がん原遺伝子で33の合計319をがん誘発遺伝子の可能性がある遺伝子として抽出した。
これらほぼ全ての遺伝子は12のコア信号伝達経路に関するもので、たとえこれから数千検体のがんゲノムを調べてもあまり変わらないだろうとVogelsteinは主張する。むしろこれら12の経路に絞って抗がん剤開発を進めた方が意味があるだろう。320のがん誘発遺伝子のうち90%ががん抑制遺伝子で、これはあまりよい薬物の標的ではないことも理由のひとつである。
がんは「完全なるブラックボックス」ではなくなった。残念ながら今後たくさんの新しい遺伝子が発見されたり遺伝学的な大発見があることは期待できそうにない。遺伝学の希望は治療可能な段階での早期診断により死亡を予防することにある。
(とても冷静で現実的な議論。学会でちゃんとこういう意見が言えるということにレベルの差を感じる。自分も研究費をもらっている巨大プロジェクトの批判をきちんとできる?)