食品安全情報blog過去記事

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農薬への周産期暴露と注意欠陥

Science Media Center
Prenatal exposure to pesticides linked to attention disorders
August 20th, 2010.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2010/08/20/prenatal-exposure-to-pesticides-linked-to-attention-disorders/
胎児期の農薬暴露により注意欠陥障害になりやすいという米国の研究が発表された。この研究は米国の農業地域Salinas Valleyに住むメキシコ系アメリカ人の子どもたちを対象に行われたもので、出生前の有機リン代謝物の濃度と5才の時の注意欠陥とが関連することを発見した。この研究について毒性学の専門家の意見を聞いた。
論文は
小さなメキシコ系アメリカ人の有機リン農薬暴露と注意力
Organophosphate Pesticide Exposure and Attention in Young Mexican-American Children
Amy R. Marks et al.
http://ehp03.niehs.nih.gov/article/fetchArticle.action?articleURI=info:doi/10.1289/ehp.1002056
プレプリントの段階でオープンアクセス。母親たちが移民の労働者集団で、高校以上の学歴があるのは21%と少なく鬱が43.8%。米国に来て5年未満が約半分。子どもが5才の時点で幼稚園に行っているのは29.2%のみ。注意欠陥の診断は母親のチェックリストによる申告や1回約2時間の精神測定学者psychometricianによる評価。)
カンタベリー大学毒性学教授Ian Shaw博士
結果は驚くべきことではないが、問題は妊娠中女性の暴露量がどのくらいなら影響があるかということだ。食事由来の濃度でも問題があるのか、妊娠中に農場で働くことに問題があるのか?
ニューサウスウェールズ大学の毒性学教授Chris Winder教授
鉛や喫煙などの暴露と子どもの多動の関係は長く知られている。この論文では生まれる前が重要であることと性差や遺伝的背景についてもヒントを与えている。
クイーンズランド大学環境毒性研究センター前長官Michael Moore名誉教授
性差以外はほぼ予想通りの結果である。約50%の母親が鬱であるということに驚いた。
Macquarie大学生物科学準教授Irina Pollard
この研究は素晴らしいが知見は驚くようなものではない。生まれる前の影響がある暴露量を同定するのは難しい。