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乳糖不耐とガラクトース血症の乳糖閾値についての科学的意見

Scientific Opinion on lactose thresholds in lactose intolerance and galactosaemia
24 September 2010
http://www.efsa.europa.eu/en/scdocs/scdoc/1777.htm
乳糖はほ乳類の乳の主要糖類で、グルコースガラクトースからなる二糖である。乳糖は食べると腸細胞の微絨毛膜にあるラクターゼにより加水分解されてグルコースガラクトースになり、吸収される。ラクターゼ活性がないまたは少ないと、消化されない乳糖が乳糖不耐の症状を誘発する可能性がある。
ガラクトース代謝に先天的欠損のあるガラクトース血症の患者もまた乳糖に「不耐」であるが、症状は乳糖不耐の場合より重症で大きく異なる。
ラクターゼ欠損と乳糖不耐
主なラクターゼ欠損はラクターゼ不持続(LNP)とも呼ばれ遺伝的なもので、多くの民族で離乳後まもなくラクターゼ活性が低下する正常な発達現象である。LNPの頻度や出現年齢は民族により大きく異なる。
LNPの成人では、食べた乳糖は大腸に到達し、そこで腸内細菌により乳酸、酢酸、水素、二酸化炭素に分解される。乳糖の消化不良は腹痛や腹部膨満、下痢などの乳糖不耐の症状を誘発することがある。しかしながら乳糖の消化不良が全てのLNPのヒトに乳糖不耐の症状を誘発するわけではない。
乳糖の消化を測定する最もよく使われる検査は息の水素検査と乳糖耐性試験である。ラクターゼ遺伝子の多型解析も有用な情報になりうる。LNPの確定診断は小腸生検のラクターゼ活性による。しかしながら乳糖不耐の診断は自己申告の症状により、必ずしも客観的に評価できないため、難しい。
乳糖不耐の治療法は乳糖含量の少ない食事をすることである。
最近の系統的レビューによれば、乳糖不耐または乳糖消化不良と診断された多くの人達は一回の投与量(特に食事と一緒の場合)では12gの乳糖にほぼ症状がないまたは極弱い症状で耐えられる。1回24gだと症状が出る。1日何回かの場合は多くの乳糖不耐患者は20-24gの乳糖に耐えられる。1日50gの乳糖を食べるとほとんどの患者に症状が出る。少数の患者で12g以下の乳糖で自己申告症状が出るという研究がある。結果の解釈の際には乳糖の投与方法やマスキングについて考慮する必要がある。
北ヨーロッパでは一般的に乳糖不耐の子どもは極めて少なく成人初期でも少ないままである。子どもの乳糖不耐閾値については十分なデータがないが成人同様の閾値があるようだ。
個人差が大きいため全ての乳糖不耐患者向けの単一の閾値を設定することはできない。一部のヒトは6g以下で症状が出ると報告されているが多くのヒトにとっては12gまでは耐えられる。1日何度かに分けるならもっとたくさんでも耐えられる。
ガラクトース血症
ガラクトース血症はガラクトース代謝に関わる3津の酵素の遺伝的欠損により誘発される。重症のガラクトース血症を治療しないでおくと肝機能や腎機能に致死的傷害が生じる。食事からガラクトースを排除することで治療する。食事管理をしても成長や発育の遅れ、女性患者の卵巣機能不全などがみられる。ガラクトース血症は多くの国で新生児スクリーニングが行われている。基本的管理は母乳を含む全てのガラクトース源を可能な限り排除することである。乳糖フリーミルクは100 kcalあたり10mg以下の乳糖を含む。大きくなってからも25mg/100kcal以下の乳糖摂取量に留めるよう管理する。
食品中乳糖削減技術
製品の乳糖を除去する技術についての情報は限られている。カルシウム吸収に果たす乳糖の役割については結論は出せない。乳糖加水分解乳製品の摂取による栄養への悪影響はないと予想される。サプリメントやその他の対応なしに通常の乳製品を避けることはカルシウム、ビタミンDリボフラビンの摂取量不足につながるかもしれない。