食品安全情報blog過去記事

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その他論文等

  • DDTやその他のマラリア対策用公衆衛生殺虫剤に反対する国際活動

International advocacy against DDT and other public health insecticides for malaria control
20 Jan 2011
http://www.fightingmalaria.org/article.aspx?id=1565
Research and Reports in Tropical Medicineに発表された Donald Roberts & Richard Trenによるレビュー。
地球環境ファシリティー(GEF)、国連環境計画(UNEP)およびストックホルム会議事務局により宣伝された「マラリアDDTやその他の殺虫剤を使用しなくてもコントロール可能である」という主張の科学的根拠を吟味した。この主張の根拠となった2003-2008年に行われたメキシコ及び中央アメリカ7か国でのGEFのプロジェクトのデータはそのような主張を支持しない。

  • Killing smoking

The Lancet, Volume 377, Issue 9762, Page290, 22 January 2011
Jeff AronsonによるRichard Dollの伝記の書評
Smoking Kills: The Revolutionary Life of Richard Doll
Conrad Keating
Signal Books, 2010 Pp. 495 £17•99. ISBN-9781904955634
臨床科学としての疫学に、92才の生涯のうちの50年以上を捧げたDollにとって、最大の功績はやはりタバコなので本のタイトルがSmoking Killsになっている。
Dollは政治的にはラジカルでありながら科学的には極めて保守的であった。科学者が政府やその他の機関に助言したり一般の人々に注意換気したりすることがとても重要だと信じていたが、他の人達がやるような感情に訴えたり強調したりすることはなかった。感情は実験バイアスや妥当な解釈をする能力を妨げる。

  • サイエンスメディアセンターが世界に

Science Media Centres go global
Tony Kirby
The Lancet, Volume 377, Issue 9762, Page 285, 22 January 2011
科学者がメディアとよりよくつきあうために英国サイエンスメディアセンターが約10年前に作られてから、いくつかの国に姉妹センターが設立されてきた。
英国上院の委員会が、英国の科学者がメディアに効果的に関与していないと結論したことを受けて設立されたサイエンスメディアセンター(SMC)は、不正確な報道やセンセーショナルな見出しに文句を言うよりむしろ科学者がメディアの科学報道に関与することを確保することを仕事にしてきた。その後2011年までにオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、日本、デンマークで姉妹機関が設立される。
設立以降UK SMCは専門家の意見を欲しがる科学や健康関連のジャーナリストから数千の問い合わせを受け取ってきた。SMCはジャーナリストに応える意志のある英国中の科学者の膨大なデータベースを作り上げた。また科学者向けにはメディア対応訓練も行っている。
以下各国の機関の紹介など
日本の
http://smc-japan.org/

  • 母乳で肥満が抑制できるか−あるいはメディアが研究結果を間違って読んでいるのか?

STATS
Can breastfeeding halt obesity - or is the media misreading the research?
Rebecca Goldin Ph.D, January 21, 2011
http://stats.org/stories/2011/breastfeeding_halt_obesity_jan21_11.html
公衆衛生局長官が母乳を与えるための行動を要請した。この要請は支持できるが、多くの善意による公衆衛生介入にありがちな科学的データを超えたことまで言ってしまう誘惑は大きい。良い政策に虚偽のベネフィットを付け加えても効果が大きくなることはない。母乳を与えることが子どもの肥満対策になるという説が広がっている。
American Journal of Health Promotionに最近発表された論文によればわずか9ヶ月で赤ちゃんの32%が肥満だという。しかしこの研究を報道したメディアはミルクの代わりに母乳を与えよと結論している。この研究は母乳については全く調査していない。ミルクが肥満の原因だという根拠は乏しい。いくつかの論文で相関は報告されているが一致してはいない。ある研究ではミルクの影響は約4才で消失することが示されている。しかしながらいずれの研究も食事についてはコントロールしていない。ミルクを与えることがその後の肥満につながるのか、あるいはミルクを与える親は子どもに豆よりフライドポテトを与えがちなのかについてはわからない。それにもかかわらずミルクが肥満の原因だとする信念が固まりつつある。どのようなものであれ、乳児に関する研究については結論は注意深く反映すべきである。またこの年齢で子どもに肥満のラベルを貼るのも疑問である。この場合の定義はCDCの成長曲線の上位5%以内ということであるが、CDCの成長曲線は1960年代の集団を反映したものである。子どもたちは40年前より間違いなく大きくなっている。これらの子どもたちに「肥満」のラベルを貼るのが正しいのかどうかわからない。