食品安全情報blog過去記事

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論文など

  • 心血管系疾患とBMIと腹部脂肪の別々のおよび複合関連:58の前向き研究の共同解析

Separate and combined associations of body-mass index and abdominal adiposity with cardiovascular disease: collaborative analysis of 58 prospective studies
The Lancet, Early Online Publication, 11 March 2011
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(11)60105-0/abstract
心血管系疾患リスク予想のための肥満度測定方法ガイドラインがいろいろあるため、BMIとウエスト周囲とウエスト−ヒップ比の、初発心血管系疾患リスクとの関連をそれぞれ別々または組み合わせて検討した。58のコホート17か国221,934人のデータを解析した。
結論として、先進国で血圧や糖尿病歴や血中脂質などの追加情報が入手できる場合、BMIとウエスト周囲とウエスト−ヒップ比は単独でも組み合わせでもリスク予想を改善しなかった。
(測定するなら1つでいいということ。体型や脂肪のついている場所は関係ないと)

Study finds usage of, recommendations for supplements common within various physician specialties
10-Mar-2011
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2011-03/cfrn-sfu031011.php
Nutrition Journalに発表された論文によれば、医師のサプリメント使用と患者への推奨はよく見られる。2008 "Life…supplemented" Healthcare Professionals (HCP) Impact Studyによれば、個人的にサプリメントを使用している皮膚科医は75%、患者にも勧めているのは66%、心臓病専門医では自分が使うのは57%で患者に勧めるのは72%、整形外科医は73%が自分で使い91%が患者に勧めている。最も多く使用されているのはマルチビタミンで、25%以上はオメガ3サプリメントを使ったことがある。20%以上は1年以内に植物成分サプリメントを摂ったことがありそのなかで最も多く名前が上がったのは緑茶だった。また医師の多くが長期使用者で、4年から10年が約半分、10年以上が1/3だった。
Dickinson A. et al.,
Use of dietary supplements by cardiologists, dermatologists and orthopedists: report of a survey.
Nutrition Journal 2011, 10:20 doi:10.1186/1475-2891-10-20

Isaac Wirgin et al.
Science 11 March 2011: Vol. 331 no. 6022 pp. 1322-1325
Mechanistic Basis of Resistance to PCBs in Atlantic Tomcod from the Hudson River
1947年から1976年にかけて、ハドソン川河口から315km上流のGeneral Electricの2つの工場が590,000kgのPCBを川に放出した。ハドソン川の底に住むタラの仲間のトムコッド(Microgadus tomcod)の肝臓には自然界で見られる最大濃度のPCBやPCDD/Fが検出されている。ハロゲン化芳香族炭化水素(HAH)の毒性のほとんどはアリール炭化水素受容体(AHR)により仲介されるシトクロムP4501A(CYP1A)などの生体異物代謝酵素の誘導による。この経路の活性化は細胞質に存在するAHRにリガンドが結合し、AHR-リガンド複合体が核に移行し、CYP1Aなどの遺伝子のプロモーター領域にあるダイオキシン応答要素に結合して転写を活性化することでおこる。魚には2種類のAHRが存在し、そのうちAHR2が機能的活性が高い。ハドソン川のトムコッドは他のきれいな地域のトムコッドに比べるとPCBやダイオキシンによるCYP1Aの発現誘導活性が100分の1で、この性質は少なくともF2世代まで遺伝する。
トムコッドの全長AHR2 cDNAの配列を決定したところ、ハドソン川のトムコッドは他の地域にはみられないAHR2を持ち、この変異遺伝子のコードする受容体はダイオキシンやPCBとの結合能力がなくダイオキシン応答要素を介した遺伝子誘導活性がない。これはAHR2の6塩基欠失による。単一遺伝子座への選択圧による急速な進化と考えられる。