食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

2011講演

Sense about science
Annual Lecture 2011
May 10 2011
http://www.senseaboutscience.org.uk/index.php/site/project/616/
5月9日に開催された第6回講演会の講師はケンブリッジ大学の歴史家Richard Evans教授。講演のタイトルは「流行と拒否者:公衆衛生の歴史的課題」で、著書Death in Hamburgに関連するテーマを話した。この本は19世紀におこったコレラの流行を扱ったもので、ワクチンと公衆衛生対個人、科学が採用されるか拒否されるかと政治的状況といった現在のテーマとも関連する。

  • Evans教授の記事

Epidemics breed public disorder and the breakdown of trust
http://www.guardian.co.uk/science/2011/may/09/epidemics-cholera-aids-trust-scientists
ハイチでは2010年の地震とハリケーンの後のコレラの流行がまだ続いている。衛生状態の悪さや教育水準の低さ、政治機能不全は既に悲惨な事態を悪くしているが、さらにショッキングだったのは国連の安定化のための努力に反対する暴動がおこったことだ。コレラの原因は国連の職員だと非難された。このような事態は新しいものではない。1830年代に英国でコレラが流行ったとき、医師が解剖するための死体を求めて人々に毒を盛ったという主張で医師への暴行が行われた。南アフリカでは大統領が西洋医学を拒否してAIDSが拡大した。
このような事例から何が言えるか?新しい病気が流行すると最初は科学的意見は不確実でしばしば意見が分かれる。マスメディアやインターネットは反体制派の科学者を持ち上げる。政府は自分たちにとって都合の良い科学を選ぶ。
人々に科学を信頼しろというのは単純すぎる。科学者が事態を悪化させる可能性があるときにどうして信頼しなければならないのか?人々が選択できるようにするには、できるだけ正確で客観的でバランスのとれた情報は不可欠である。将来どんな新しい流行がおきるのかは予想できず、歴史は予防策を教えない。しかしもしおきたら、その影響を最小限にするにはどうすればいいかは歴史から学べる。それが達成されるには政府と医学者と一般の人々の間にそれなりの相互信頼と尊敬が必要である。

  • Evans教授の講義を聴いた記者の記事

Public ‘caught between the aims of scientists and politicians’
10 May 2011
By Matthew Reisz
http://www.timeshighereducation.co.uk/story.asp?sectioncode=26&storycode=416084&c=1
政治的イデオロギー、科学的傲慢、メディアの特ダネ主義、が科学的知見を説明しようとする試みを阻害する、と教授は主張する。
政治家は自分たちにとって都合の良い科学を選び、科学者は人々に盲目的に信用すべきだと主張し、人々はその二つの間で板挟みになる。